眉つばなるもの/大竹文雄他「解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡げる」のアヤシサ Ⅱ | 風のかたちⅡ

眉つばなるもの/大竹文雄他「解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡げる」のアヤシサ Ⅱ

大竹文雄氏は、正直なところ評価に迷う人だ。単なる勘違い「学者」(規制改革会議福井委員)とは違い、立派な経済学理論を身につけた当世まぎれもない学識者のひとりだ(という扱いを大手新聞・出版では勝ち取っている)。


しかし、大竹文雄・奥平寛子「解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる」(福井・大竹編著「脱格差社会と解雇規制」)は実にいただけない。


その最たる理由は直下に書いた通りだが、同論文でもうひとつ許し難いのは「労働裁判変数」のもとになった都道府県別の労働寄・使用者寄度の実データを示さずに、日本地図上の濃淡でごまかしたことだ。


50年間という長期間で、260例しかない解雇事件判例だ。単純に47都道府県で割っても、5.5件/都道府県、これだけでも変数の信頼性を疑いたくなる。しかも、解雇事件の6割は東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8地裁に集中していること(1984~2004最高裁データ、直下のブログ記事の今井他論文、労働政策研究・研修機構報告書)を考えると、260件という決して多いと言えないデータのうち156件は8地裁・都道府県のものという推測になる。


では、260-156=104が残る39道県のデータということだが、これは、1道県に平均したら2.7件にすぎない。しかも、大竹・奥平が拾った判例の期間は50年の長期。大竹先生は、にもかかわらず日本地図上の残る39道県にも、労働寄りか・使用者寄りかの濃淡の色分けをしたのだ。50年間で平均2.7件しか裁判例がない道県にも、むりやり労働寄・使用者寄の色分けをしたのは承認されるやり方なのだろうか。わたしは、承伏できない。


論文には、47都道府県別の判例数を明記し、そのうえで判例が労働寄・使用者寄のいずれだったのかの実点数を示すべきなのだ。それを日本地図の色分けとは・・・。私にはごまかしとみえる。