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たまらなくなる時もあるけど、
しなやかにその場を切り抜けられるように、
あなたがこねくりまわした思想で築いたその哲学を丁寧に窓辺に並べて眺めるだけにならないように、
あなたが固めあげたその美学があなたにとって一番の宝物であるかのように繊細に取り扱いすぎないように、
はさみを振り回した挙句、切り取り線に沿うようにして自分自身の退路まで絶ってしまわないで、
ほんの少しだけ彩度や明るさを調節し続ければあなたに染みていく映像は完成するような気がして、
そのチューナーに施錠がなされているわけなどないのに、まるでそこには厳つい錠が錆びきっているかのように、鍵なんて最初からなかったみたいにして、あなたは受け入れていくようにして諦めていく、
私たちはいつだって映像に纏わる全てを調節できるという事を忘れたくないです、
 
 
いつ、どこで、何に、どのようにして、なぜ、折り合いをつけていくのか、
研磨され尽くした大きな巌に空虚さを贈りつけられたとしても、
理屈で塗り固められた愛嬌に嗅覚を殺されたとしても、
まるでそうなることを何十年も自分が待ち望んでいたように振舞いましょう、
その喜びをタップダンスで表現しましょう、
「自分、感情とかをタップダンスで表現するタイプなんすよね~」と一言添えてから表現しよう、
マナーは守ろう、
煉瓦の街を飛びまわるあのリトルダンサーのように、
エンドロールで激しく躍動するあのインド人たちのように、
芝居がかった言動が鼻につくあの劇団員のように、
めいいっぱい表現しよう、
「めいいっぱいの意味をはき違えているよ」「タップシューズだけにね!」というやりとりのために時間を使ったりしよう、
そのタップシューズに火をつけられたら軽やかに、穏やかに、靴を脱いでみせよう、
もう何十年もその瞬間を待ち望んでいたみたいにして、それはもうしなやかに脱いでみせよう、
そして立ち去ろう、しなやかに、物音ひとつ立てぬしなやかさで、しなやかの残り香を纏って、余ったしなやかで炒め物でもしよう、予報で明日のしなやかを調べよう、まるで何もかも知っていたみたいに、しなやかに、それはもう、ただしなやかに、
 
 
本当は私たちは自分自身の色んなことを知っていて、あらゆることに気づいている、
三年前にあの妙なポストイットを胃の裏側に落としてしまっているだけで、
そんなものは取り戻さなくてもいいのよ、
少しつっかえている気分にさせられるかもしれないけれど、
ポストイットなんて隣のデスクからちょろまかせられることを知っていますか、
もう三年前のポストイットなんてどうだっていいから今夜の予定を立てましょう、
起こる全てのことはどうだっていいから今夜は高を括りましょう、
それはそれは奇天烈な高にしましょうね、
まるであの年老いた女芸術家の作品のようにうんと奇抜で奇天烈で奇想天外に仕上げた高を、
人の視線でできた縄で、ぎゅっと、しっかりと、めいいっぱい、括りましょうね、
 
 
 
たとえ少数派でも、少数派である事をひけらかさずとも怯まずにいてください、
自分の人生を歩むことは、多数決で決められた感性に身を委ねることではありません、
あなたは既に素晴らしいということ、いつだって素晴らしかったということ、
自信を失うに相応しい理由などありません、
誰かがあなたの自信を奪える瞬間などあり得ません、
もし今、手元になければ、隣のデスクからちょろまかせられるよ、
それくらいのものだよ、地中海の奥底に潜む宝石なんかじゃないよ、隣のデスクから、ちょろちょろっと、ちょろまかせられるよ、やったぜ、
響き渡る怒声は固いクッキーみたいで時々おいしそうで困ったな、
ちょろちょろっと、食べてみようかな、
もう真夜中に友達たちといけないことをするのは飽きたよ、
わたしは早朝にひとりで歌をうたういます、世界中の誰からも必要とされていない歌をうたいます、
こんなに贅沢な瞬間があるのかな、
ちょろちょろっと、途方に暮れきっている無様さが垣間見えたりして、
わたしのこれも、誰かにとって、おいしそうにうつることがあれば、わたしの場合は、分け与えてあげるのです、
まるで聖職者のように、しなやかに、高を括って、分け与えてあげるのです。
(4個まで)