ひどくつまらないことで
何時間も笑いあっていた
それはそれはもうずっと昔の仲間に
子どもが生まれたということで
東京の郊外のほうまで行きました。


行きながらルージュの伝言を聴けば
たちまち魔女の宅急便の主人公の気持ちでした。
魔女の気持ちのわたしがが赤ん坊を見に行きました。
わたしが母になった時に魔女の気持ちのやつが
我が子を見にくるのはすごく嫌だなと思いました。
あとなんでわたし魔女の気持ちなんやろうと思いました。
生きていると時として抗いようのないことに直面することがあるものです。


知らない間に田舎を抜け出して東京で暮らし、
知らない間に大金持ちの男と結婚した彼女と会うのは
もう七年ぶりくらいで
会ってすぐに「話すことが無いな」と思いましたし、
会ってすぐに「話すことが無いね」と言うと、
彼女は「先輩、口調が柔らかくなりましたね」と、
とんちんかんなことを言っていたので、
子どもを生んだ女は宇宙人になるんだなと思いました。

そして赤ん坊はもっと宇宙人でした。

何か大きな手がかりになるかもしれないと思って
一生懸命ボイニック写本を見せつけていたら
母親に「気持ち悪いことしないでくださいよ(笑)」と言われたので
わたしは「(爆笑)(^_^)」と思いました。


真っ白い絹のような壁に包まれて
彼女はエプロンをつけ、カチューシャをしていました。
その醸し出される貞淑さに
わたしはアワアワとなりました。
スーパーアワアワでした。
スーパー嘘やんアワアワでした。
マジで?ふざけてない?のラインのアワアワでした。
あの時のわたしのアワアワっぷりは
東日本アワアワ選手権があれば三位入賞くらいなものです。
四位が、パートタイムの昼休み中に
女子高生のバイトに「それアイプチですよね?」と急に暴かれた瞬間のおばさんのアワアワでした。
それ以上のアワアワです。オホホ。
これはオホホです。オホホ。


ケーキを食べたり
ガーデニングの草花の芽を勝手に摘んだり
灰皿と思って使っていたのが茶碗だったりして
ずっと微妙にいらつかれていましたが
そこはわたしなので
気にせずルンルン気分でたのしいティータイムを過ごせました。エヘヘ



帰り際、
彼女が「とっといてください」と言って
いくらか包んでくれました。

惨めな気持ちになるわけでなく、
なにか心があたたかくなるような気持ちで、
わたしは笑いました。

そして、
「わたしはぼろは着てても心は錦よ、
錦に何か飾る必要はある?
ありがたいけどわたしには必要ないわ、グラッセ」
と微笑んで豪邸を後にしました。


帰り道、
彼女のツイッターには
「相変わらずかっこいい、シビれる先輩だった」
と書かれていました。

わたしはマカロンを食べながら
「グラッセ」と思いました。



一晩たって、
ベッドで跳ね回るほど、
のたうちまわるほど、
後悔しました。


彼女にメールをしました。

「やっぱり金もろていい?」

とメールをすると

「(笑)
いつでも来てください、お渡ししますよ(笑)」

と返ってきたので

「わたしはぼろは着てても心は錦よ、
錦に何か飾る必要はある?
ありがたいけどわたしには必要ないわ、グラッセ」

と返事をしました。

そしてわたしは
彼女のツイッターアカウントをスパム報告し、
コンビニの募金箱に10円募金しました。
こういうことの積み重ねが大事だなと思いました。