キス | 瑠璃も玻璃も磨けば ヒカル☆

瑠璃も玻璃も磨けば ヒカル☆

こんな日もあった
あんな日もあった
主人を膵臓ガンで亡くし
彼を胃ガンで亡くし…と、2度の死別を経験
グリーフケアの中、時間に取り残されながら
死ぬまで生きる自分の孤独を書き連ねていきます

彼の腸は癌に取り囲まれ
穿孔してしまった

救急車で、家に来るまで入院していた病院に搬送され
CTを撮った後、運よくいてくれた主治医に呼ばれ、私は彼の命の限界を告げられた。

そして彼の側に近付いて行くと
彼が、痛みに歪めた顔で
「ごめんね」と言った
私は駆け寄って キスをした。
カラカラに渇いた唇にキスをした。

彼の表情はちょっと驚いたような
切ないような
愛しむような
そんな顔

何も言葉が出なかった。

どうにも変えられない現実がそこに立ちはだかり
彼をジリジリ苦しめる。

この苦しみを楽にしたら
終わってしまう。

壮絶であろう痛みと彼は闘った。

夜が明けて朝を迎えると
もう、痛みは彼の限界の限界を貫き
言葉は絶叫と懇願にかわり
薬が待てなくなっていった。

なんでこんなに痛いの?

腸に穴が空いたんだって

もっと強い痛み止にして

そうするとね、意識がなくなっちゃうんだって
お母さん、熊本からこっちに向かってるんだよ

(意識がなくなったら)
もどらないの??

返事が出来なかった…


それから、彼は再び痛みに絶えた
そして再び私に ごめんね と言った。

なにが?ぜんぜん(*^^*) と
私は笑った

そしてもう堪えきれず
点滴で落とされる薬を見ては

それは効かない!もっと強いのにして
いつ?いつ痛みを止めてくれるの?
もう勘弁して下さい
お願いします
お願いします!

もう、これ以上は見ていられなかった。

回ってきた先生が
もう少し薬を増やしましょうと言って
少しずつ薬が増えた

お薬増やしますね 看護婦さんの言葉に

増量大好き♪ なんて言って

意識が遠退いて行く

名前を呼ぶとハッとして
両目を見開き

なに?なにかあったの?

なんて言っていたのも

徐々に静かになる

呼吸はしてるけど
呼んでも呼んでも目を開けなくなって
からだが冷たくなっていく

顔に手をあてる
冷たい

私の温かい両手で頬を覆ったら
彼がニコーっと笑った。
目を閉じたまま、にこーっと笑った

やだ、まだそんな顔出来るんじゃん!

そう言って顔を近づけたけど
もうそこから彼が笑う事はなかった。

耳元で色んな言葉を囁いた。
まだ痛い?
痛くない?
ここにいるからね
大丈夫だよ
ずっと大好きだからね

静かに静かにゆーっくりと
彼は旅立って行った。

もう止める事なんて出来ない

ヤダ!と叫んでも
置いていかないでと言っても
ダメだよ!戻って来て!と言っても

彼はいってしまった。
静かに静かに空に昇っていってしまった。

窓からの暖かい日差しの元で
熊本から御母様と妹さんと叔父様が来るのを二人で待っていた。

寝顔とは全く違う
目を閉じた顔

キスをしても
表情は変わらない

あぁ私、彼を見送ったんだ
そうだ 彼を見送ったんだ

取り残されて
気が遠くなっていく

彼の体の温かい場所を
慌てて探して
温もりを確かめて
泣いた。


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