謝罪広告は、事実の真相を明らかにし、これに対し、陳謝の意思を表示する広告であり、誹謗中傷被害者の名誉回復措置(民法七二四条)として、もっとも一般的な方法である。
かつては、謝罪広告の合憲性が争われたが、最高裁判所は、合憲判断をしている。
既に述べたように、名謝罪広告の合憲性謝罪広告が、「意に反する苦役」(憲法第一八条)、「思想及び良心の自由」(同一九条)に反しないかどうかについては、既に最高裁判決(最判昭和三一年七月四日民集一〇巻七号七八五頁)によって実務的には合憲ということで解決しているが、謝罪広告の内容によっては、憲法違反もありうるとして一定の基準を提示している。
判決は、「時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を殿損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することにも」なることを認めたが、「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のもの」であれば、憲法に違反しないとした。
この判例の今日的意義は、謝罪広告の内容面における憲法的規制であると考えられ、右基準を超えるような請求については、違憲の疑いも生じることとなるので、陳謝の意の表現は過度な内容にならないよう注意すべきである。
いかなる要件が具備されれば、謝罪広告が認められるかについては、これを明言した判例はなく、理論面及び判例の分析によるほかない。
判例は、不法行為の一般原則である金銭賠償の原則の例外にあたることから、謝罪広告の認容については厳格である。
「名誉」の殿損であること既述(=七頁)のとおり、名誉回復措置を取りうるのは、名誉、すなわち、社会的な名誉の殿損の場合に限られ、名誉感情の殿損その他プライバシー侵害等の誹謗中傷の境界領域にある不法行為でも、名誉回復措置は取り得ないとするのが判例の趨勢であるが、肖像権について、一部積極判例がある。
プライバシー侵害と謝罪広告(「宴のあと」事件)モデル小説「宴のあと」において、私生活を覗き見するような描写をされたとして、謝罪広告と損害賠償を求めた事件で、裁判所は、「プライバシー権は私生活をみだりに公開されない権利」と定義付けた上で、謝罪広告の可否について、「私生活がみだりに公開された場合に、それが公開されなかった状態つまり原状に回復するのは不可能なことであり、名誉信用の低下を理由とするものではない以上、民法七二三条による謝罪広告等は請求し得ない」(東京地裁昭和三九年九月二八日判時三八五号一二頁、判タ一六五号一八四頁)と判示した。
肖像権侵害と謝罪広告消費者金融会社の社長が入院中に車椅子姿を無断で撮影して写真週刊誌に掲載したとして、肖像権侵害で損害賠償と謝罪広告を求めた事例で、裁判所は、「民法七二三条を類推適用して被告らに謝罪広告を命ずるのが、損害の現状回復の方法として、有効、適切、かつ、合理的であり、また公平の理念にも合致する」として、二〇〇万円の慰謝料と謝罪広告掲載を認めた(なお、誹謗中傷請求部分については棄却した。