『ねえ母さん』

ねえ母さん覚えてますか
僕が学生の頃 毎日作ってくれた弁当の話
たこ焼きしか入ってなくて 恥ずかしいと怒ったら 次の日は明石焼だった
二段弁当で上も下もチャーハンだったり
ざるそばだけの日もあった
カチカチのざるそば

ねえ母さん覚えてますか
よくわからないブランドのジャージのズボンの話
前と後ろを逆に履いていたあなたを見て 指摘したらこう言ったね
リバーシブルだから大丈夫なのよ
リバーシブルはそんな意味じゃない
そんな意味じゃない

ねえ母さん いつまで こうして話せるのかな
いつまでも あなたのそばで 笑い合っていたいけど

ねえ母さん覚えてますか
家の会社が倒産して 大変だったあの頃の話
学校から帰ってきたら あなたは電気もつけず 真っ暗な中で料理をしてた
これからはとことん節約よと言った
あなたが作ってたのはすき焼
まさかのすき焼き

ねえ母さん覚えてますか
貧乏だった我が家が ついに車を買った日の話
誰よりもお前を先に 助手席に乗せてやりたい 父さんはあなたにそう言った
家の周りを10分だけドライブ
だけどあなたはすごく嬉しそうに笑った
決して貧乏が偉い訳じゃないが
中古の軽自動車で幸せになれる
僕らは誰が見ても幸せな家族だろう

ねえ母さん あなたと あなたの愛する人の
あいだに生まれたことが僕の誇りです

ねえ母さん ねえ母さん 少し変わってるけど
ぬけてる所もあるけど こどもっぽいけれど 純粋な人

いつまでも いつまでも
あなたが元気でいてくれる訳じゃないから
こうして何度でもあなたを歌うよ

大好きなあなたの歌を何度でも歌うよ