2014 Best (Reggae) Albums 前篇 | Hibikillaオフィシャルブログ「ソコが丸見えの底なし沼」Powered by Ameba

2014 Best (Reggae) Albums 前篇

ヤーマンです。

年の瀬も押し迫った本日は、2014 Best (Reggae) Albumsと題して今年出たアルバムの中から個人的に良かったものを10枚+a紹介していこうと思います。

Reggaeではなく(Reggae)という表記しましたが、これは「レゲエを中心とした」という意味です。

こう表記した理由は
1. 所謂ベース・ミュージックなど、既存のジャンルで括れないものも多くなってきているから。
2. 正直アルバム単位でレゲエのいい作品が少なかったから。

…2.に関しては誤解なきよう説明したいと思います。「アルバム単位で」レゲエの好作品が少ない理由は音楽業界全体の構造変化により、シングル単位・(無料)配信先行という流れが更に強くなり、アーティストが腰を落ち着けてじっくりアルバム単位で制作に取り組むということが難しくなってきているからです。ま、これは「CDが売れない」問題にもがっつりリンクしている構造問題なわけですけど。
ちなみに2014年に一番売れたCDはテイラー・スウィフトさんの「1989」で全米200万枚超ですが、これは曲の良さもさるものながらプロモーションとディストリビューションの勝利だったのですね。つまり、1.iTunesでの配信版よりもCD盤の方を安く価格設定し 2. 全米各地のスターバックスのレジに置いた。のですよ。
なお日本で一番売れたCDの話は…一般のミュージシャンには参考にならないから割愛します。
ま、何を言いたいかというと、そうした流通の構造を含めた抜本的なチャレンジがないと近年の(レゲエに限らず)いいアルバムが減っていく傾向は止まらないと思いますね。
逆にその仕組みを作ったもん勝ちなのかなと。
昔のジャマイカにはその仕組みがあったんですけどね。ソニック・サウンズとダイナミック・サウンズという2大ディストリビューターによる膨大なタイトルの7インチ・シングルを世界中に売りさばくというものが。

2002年のWorld Clashで当時「CD Sound」と(揶揄も含んで)称されたRebel Toneが優勝した頃ぐらいから顕著にレコードの売り上げと流通量が落ちていった記憶があります。(という私もレコードを買わなくなっていったクチなので申し訳ない気持ちになりますが…最近また買うようにしてます)
それでも去年から東洋化成のレーベルT-Annexが国内外の良質なレゲエ作品を7インチ化するといった動き、またHMVが渋谷にレコード専門店を新規開業するなどの動きもあり、レコードの復権というムーブメントはレゲエ復活へ向けた一つの鍵になるかもしれません。はい脱線しましたね。

…それから、アルバムがないならシングルをレビューすればいいのではないかという意見も当然出るかと思いますが、シングル10は少なすぎます。それこそジャマイカのラジオのヒットチャートでも見たほうが良いでしょう。
…それから、ミックスCD / ミックス・アルバムは除外します。なぜならミックスCDは0から1を生み出す行為ではないからです。全曲ダブプレートだったとしても同じです。やはり同じアートとはいえ、0から1の創造と、再利用を一緒にしてはいけないと思いますので。

では前振りが長くなりましたが、行ってみましょう!2014 Best (Reggae) Albumsはこちらの作品です!

No.1 Kalbata & Mixmonster『Congo Beat The Drum』

Jet Set Recordsさんのレビューが素晴らしかったのでこれを引用させていただきますと、この作品は、
「テクノ~2-step系プロデューサーKalbataと、ファンク・バンドThe ApplesのメンバーでもあるMixmonsterとのタッグでのコラボ・アルバム。7"で先行シングルとしてリリースされ、大きな話題を呼んだ、Little Johnが歌う極上のメロウ・チューン"Prisoner In Love"も収録。King Tubbyを意識し、100%アナログ機材で録音された究極の一枚!!」であります。

Major Lazerを主導するDiploは言うまでもなく、今年最大のサウンド・クラッシュRedbull Culture ClashにDavid Rodiganと共にRebel Soundとして出場し見事優勝したChase & Statusも同様ですけど、海外のダンスミュージックのプロデューサーは本当によくレゲエのことを知ってます。マジで好きなんでしょうね。あるいはジャマイカ人よりも好きかもしれないかも…。この作品からもそんな外国人だからこその異常な愛情を感じますね。我々日本人も見習わなくてはいけない部分だと思います。どんなにあこがれてもジャマイカ人にはなれないわけですからね。

さて、恥ずかしながら私、この作品を聴くまでKalbataさんのことを知らなかったのですけど、そちらの世界では有名な方だそうです。また私の「Fire pon dem」や「朝五時の太陽」をprod.したPiloniさんと同様にイスラエルはテル・アビブ出身。イスラエルは実はレゲエ人気が高い国の一つでもあります。作品はと言うととにかく全編にわたって音の良さが素晴らしいです。相当丁寧にミックス、マスタリングをやった感じが横溢しにじみ出ています。また、フィーチャリング・アーティストも素晴らしい人選。タイトル曲を歌っている鯖将軍ことMajor Mackerel, さらにいぶし銀Puddy Roots, なつかしのジャミーズ軍団Tullo-T, 伝説の大ベテランPrinse Jazzbo, ジャマイカを代表する吟遊詩人にして長寿番組「カッティング・エッジ」の名MC Mutabaruka and moreですよ!完全に俺のツボでした。ちなみにミクスチャーではなく<ド・レゲエ>なのでご安心ください

一言リコメンド「今爆音で再生すべき音はこれ!」

試聴リンクはこちら。




No.2 Chronixx - 「Dread & Terrible」


クロニックス。本名Jamar Rolando McNaughton Jr。父は同じくシンガーとして知られるChronicle。92年生まれの若干22歳の若者は、Protoje, Jah 9, Kabaka Pyramid, Jesse Royalらと共にジャマイカの音楽シーンに久しぶりに新しいムーブメントを興し注目を集めている。
Buju Bantonがコカイン密輸容疑で逮捕収監され(残念すぎる)、またVybz Kartelが殺人容疑で逮捕収監(殺人だからなあ…もっと残念としか)されて以来、ジャマイカのレゲエ・シーンもどうも方向性が失われつつあったと思う。その中で、ルーツ&カルチャー、ラスタを前面に押し出した彼らが躍進する様はまるでGarnett SilkやLucianoやSizzlaが出てきた1994年あたりのシーン(=黄金時代)を彷彿とさせます。
ヒット曲「Here Comes The Trouble」を収録したこのアルバムも新世代のレゲエに希望を感じさせる素晴らしい出来。No1作品同様にDub Wiseを入れ込んだ後半も水増しではなくファンを育てていこうとする心意気を感じて良し。期待値込みでNo2としました。
ちなみに「Here Comes The Trouble」のリディムはIni Kamoze「Wings With Me」のリメイクなんだけど、これに気が付いているセレクターは殆どいないのが俺はちょっと残念だぞ!と老害発言しておきます(笑)。

一言リコメンド「おすすめのレゲエ?クロニックスかな…と言えたら玄人っぽい!」

試聴リンクはこちら




No.3 Tarrus Riley - 「LOVE SITUATION」
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Tarrus Riley 本名Omar Riley。彼もクロニックスと同じく二世アーティスト。父はシンガーのJimmy Rileyであります。

というか私は彼とは個人的な思い出があるのです。2006年に渡ジャマした際当時お世話になっていたSolomon I&I ProductionのYujiさん、Jah Mikeyにまだ駆け出しだった彼を紹介され、彼の演奏するピアノに合わせて一緒にラバダブするという一生の宝のような体験があるのですよ。その翌年また渡ジャマした際に今度はお父さんのJimmy Rileyさんに会い、「Mi Tarrus Riley's father」(ニッコリ)と声を掛けられたときには「いやいやあなたも有名ですから!」とJapanese Tsukkomiを入れてしまいました。
そんな個人的な思い入れもあり彼は好きなシンガーなのですが、近作も安定感ある良作です。ヒットシングル「One Drop」と「To The Limit」はシングルと違うリミックス・バージョンが収録されており、そんな意味でもお買い得感も高い作品ですね。

一言リコメンド「ファミリーでもカップルでも安心して聴ける良作です!」
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No.4 Wayne Marshall - 「Tru Colors」
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Chronixxが新生ならこちらはベテランの会心の復活作。Wayne Marshallは元々はBounty Killer一家のアーティストとして2003年くらいに「When The Smoke Clears」、「Overcome」、「Purple Skunk」、「Whole World」などのヒットを飛ばしていたのですが、その後親分の庇護を離れ雌伏の時を過ごします。2009年に同じくアーティストのタミ・チンと結婚して以来は音楽性も変化。イケイケダンスホール以外にもルーツ調やR&B調のええ曲が歌えるようになっていきました。そして今年リリースしたこの作品はそうした彼のアーティストとしての成長が感じられて好感度大。当時の彼しか知らない人にこそ聴いていただきたいアルバムとなっております。

一言リコメンド「敗れざる者ここにあり~男の真価・進化は30を超えてから!」

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No.5 Popcaan - 「Where We Come From」


Popcaan。本名Andrae Jay Sutherland。2007年にデビューした彼も何年も前からアルバムが待望されていたアーティストだと思います。去年は人気ゲーム「GTA」のサウンドトラックにVybz Kartelとの曲が収録されるなど活躍を広げていた。彼のフローや歌いまわしは、Dre Skull, Double Dutchらによるリディムの傾向もあってヒップホップの影響を強く感じますが、歌が上手いわけでもないのに聴きいってしまうこの感じ、さらにギャル賛歌、銭と政治、毎日の暮らしの風景…など歌詞のトピック選びがジャマイカの伝統芸能Deejayの延長線上にあり、なおかつ最新系といえると思います。また、このチャートの中では最もストリート感強い作品です。

一言リコメンド「踊れるリリシズム…それ一番かっこいいやつだ!」
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というわけで長くなったので続きはまた来週!後半へ続く…