インタビューその二。『HIBIKILLA解放の音』の巻 | Hibikillaオフィシャルブログ「ソコが丸見えの底なし沼」Powered by Ameba

インタビューその二。『HIBIKILLA解放の音』の巻

FREEDOM_BLUES発売に合わせて行われた岡部徳枝さんによるインタビュー第二段です。第一弾と合わせてどうぞ!





ランチ時に始めたインタビュー。「社長HIBIKILLA誕生」の話が続き、1時間くらい経ったころだろうか。取材場所のカフェがディナータイムまで一旦閉店するというので場所を変えることにした。はっきり言って、話はまだ小指の先ほども聞けていない。近くにHIBIKILLAゆかりの店があると言うので、私たちはまた渋谷の街をてくてくと歩いた。「いい天気ですなあ」とか、なんともない世間話をしながら、てくてくてく。店に着き、席に座ると、HIBIKILLAは「生ビール!」と元気よく注文した。時計を見るとまだ昼の3時台である。とはいえ、“生ビール付き”でラガな話をするラガなDeeJayを前に、一人呑気に茶などすすっていられない。かくして、めでたくキリリと冷えた生ビールが2杯運ばれ、取材は第2章の幕を開けた。 
 
  
 

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――今回のアルバム『FREEDOM_BLUES』を聞いて、すごく解放された印象を受けたんです。好き勝手やるために独立して作ったアルバムなんだから、当たり前だよと言われそうですが(笑)



「まあ、そのとおりです(笑)。自分がやりたかったことですからね」
 


――偉そうな言い方ですが、ついにHIBIKILLAを代表する作品が完成したなと思いました。



「うん。これをやれずに死ねないくらいの思いでやっていたので、そう感じてくれたら嬉しい」  
 


――やっと本音を見たというか。今までは、なんとなく誰かの意見を取り入れているのか、どこかで遠慮しているように見えたので。 



「なるほど。ま、人の意見を取り入れる姿勢は常に持っています。誰かの意見を取り入れて曲を作ることで、化学反応が生まれることは多いから、それもマイナスばかりじゃないです。でも、今回はトラックメーカーとかの人選にしても、音の方向性にしても、アウトラインをすべて自分一人で決めている分、それが解放感につながっているかもしれないですね、はい」  
 


――前作『LIFE』を作り終えてすぐ、このアルバムのインスピレーションが沸いていたということでしたが、当時思い描いたイメージを具体的に教えてもらえますか?



「一番に思いついたのは、攻撃的ルーツ。I&IProduction(『NO PROBLEM』、『濃厚民族』発表時の所属事務所)にいた頃にやっていたような路線ですね。それから、近年盛り上がっているベース・ミュージックの流れを取り入れたもの。あとは、ドクプロ時代にもやっていた王道ダンスホールは残しつつ……という感じかな」 
 


――トラックメーカーの人選でこだわったことは?



「自分と年齢が近い人や若手を中心にお願いしました。単純に気兼ねしなくていいっていう理由もあるけど、同世代で自分のチームを作っていきたいっていう思いもあって。上の世代の輪にはどこか入りにくいところがあるし、自分は自分で近い年の人たちと新しいものを発信していく必要があると思ったので。ミックスエンジニアのアパッチ田中さんだけは大御所です」  
 


――じゃあ、一人ひとりトラックメーカーごとに曲を追っていきましょうか。まず、『Now or Never』と『何もやってない』を作ったAkAchAkA(アカチャカ)。



「彼は『Now or Never』のようなアッパーなダンス・トラックはもちろん、『何もやってない』みたいなアブストラクトな雰囲気のオケ作りに非常に長けているんですね。ダブ・ステップも得意。ミックスも上手いので、耳触りとか感覚的な話も理解してくれるのがいい。彼は以前はドクプロのエンジニアをしていて、前作の『LIFE』も彼のエンジニアリングなんですよ。今は秋田在住なんですけど、去年タランチュラ・レコードという自身のレーベルを始めまして、秋田からおもしろい音を発信してくれると注目してます。これから絶対くるトラックメーカーのひとり」
 


――表題曲『FREEDOM_BLUES』は、ALPS BAND。



「この“BEST FRIEND”リディムは、PUSHIMさんやRUDEBWOY FACE、AKANE、親指ヘッド、NOB-SANといろんな歌い手が同じリディムで歌っていて、アルバム発表前から配信されていたもの。ワンドロップに泣きのギターが入って、今のジャマイカを感じさせる音ですよね。I-OCTANEが歌っていてもおかしくないような感じで好きなリディムです。今回、バンドの人が作ったリディムが多いんですよね。『風営法』と『最悪ノ事態』、『REAL』は、CHANNEL LINKS
BANDのP@PIくん。ギタリストなんだけど打ち込みもできる人」 
 


――それぞれアプローチの違う3曲を同じ人が作ったっていうのがおもしろいですね。『風営法』のベタなダンスホールと、ドラマチックなミディアム『最悪ノ事態』、そしてシンプルなルーツロック『REAL』。この曲のギター・ソロは印象的。ギタリストが作ったオケだと納得(笑)。



「そうそう、お前のソロ、おいしすぎるだろっていう(笑)。いやでも、やっぱりバンドをやってるミュージシャンが作るオケはコードで表情が出るからいいですよね。STONED ROCKERSのYOTAが作った『We Nuh Batray』もまさにそう。YOTAもギタリストだから、そういう色が出てる。『Inna Height』を作ってくれたNagae
Atsushiさんも、バンドの人なんですよ。金骨ブラザーズっていうロックバンド」 
 


――え! こんなルーツ・レゲエのオケをロックの人が作ったんですか?



「そうなんですよ。今作ではリディムトラックを募集するという試みをしまして、その中で唯一採用された曲です。もともと募集のときに作ってきてくれたのは別のオケだったんだけど、その音の質感がすごくよかったんで、新たにスタワン(STUDIO ONE)のジョニー・オズボーン『Truth
and Rights』をリメイクしてもらいました。ロックの人が考えるレゲエっていうのはおもしろい」
 


――ルーツだけどちょっと違う質感を感じるのは、そういうことなんですかね。



「レゲエだけ聞いていると、スタワンをリメイクしていても、そこにデジビー(DIGITAL-B)的なセンスが入ってきちゃったり、もしくはイギリスのニュー・ルーツが入ってくるとか。今は逆に“ワンドロップのドラムと裏でスカンクするギター”というベタな音作りのレゲエ作品が少ないと思うんだけど、そのベタをどうアレンジするかは今回特に力を入れた部分。マックス・タノンっていうNYのヒップホップDJが、モス・デフのラップをルーツ・レゲエとマッシュアップした『MOS DUB』という作品がおもしろかったのでそれを意識した。それはただルーツ・レゲエのバージョンにラップを乗せるだけじゃなくて、スクラッチしたり、ドラムの打ち方だけブレイクビーツに変えたりとか。あと、彼はタリブ・クウェリとの『DUB KWELI』も出してる。そういうヒップホップ的解釈のレゲエがそうであるように、ロックの人が作るレゲエも面白いです」 
 


――ほかにそういう視点で作ったものはありますか?



「『仁』もそうかな。これはもともとSeko-BitchさんとRaggyさんの企画で、Senoo Takayoshiさんが作ったオケなんですけど、最終的にe-muraさん(RUB-DUB
MARKET)にも打ち込みを加えてもらってるんです。異ジャンルの音色を入れるっていうe-muraさんが得意な技を。それでいてリズム・パターンはコテコテの二拍三連っていう。これは、メジャー・レイザー(Diplo)やブラカ・ソン・システマのようなアメリカやヨーロッパの人たちが再発見・再構築したダンスホールを参考にしました」 
 


――『の、ようなもの』もおもしろい。オケを作った松井泉さんは、それこそRUB-DUB MARKETのバンド編成のときにドラム叩いているのを見たことありますけど、そこはやっぱり通じるものがあるんでしょうね。  



「うん。松井くんは、KAM(アイコSUN、朝本浩文、CARDZによるバンド)のサポートもやってますしね。最新ベース・ミュージックの流れを汲んだおもしろい音を作ってもらうなら彼でしょう、と。アフロなダブ・ステップというのかな、パーカッシブで、いかにもパーカッショニストが作ったオケという感じがしていいですよね」
 


――『Guide I&I』は、冒頭で話していた“攻撃的なルーツ”にあたるチューン。この曲のインパクトはすごい。 



「超攻撃的なヘヴィー・ルーツですよ。JAHSHAKAがかけていてもおかしくない感じじゃないですか。こだま和文さんが吹いているトランペットのパートは、もともと打ち込みのブラス系の音で弾かれていたんですが、このファンファーレ感素敵だなと思って。こだまさんは、“ヒビキ~! いつか一緒にやるぞ~!”と、あの感じでいつも言ってくださっていたので(笑)。ぜひお願いします!と」
 


――これを作った774(ナナシ)さんというのは?



「兵庫の加古川在住で、25歳くらい。俺の作品だと、『Be Free』でTAK-Zとやった『CROSS ROAD』も作ってくれてます。ヒップホップのオケも作れちゃう。キーボードとギターも弾ける器用な天才。彼は今回『仁 Remix feat. Arcanjo Ras』を僅か一日で作ってくれました」 
 


――『Legal  Rights』は、たけしビート氏作のファウンデーションなダンスホール。
 


「たけしビートさんは、ナチュラルウェポンや446さんを手がける大阪の岸和田で活動するエンジニア、トラックメーカー。こういう80年代、90年代の黄金ダンスホールを得意とする人です。それで今回はオリジナルはデイブ・ケリーの“PEPPER SEED"リディムをリメイクしていただきました。逆回転のシュリンッって音とか、たまらないですね」 
 


――そういうファウンデーションなものへのリスペクトっていうのは、やっぱり欠かせない?
 


「そうですね。自分がハマった時代、それから深みにはまってディグっていった頃のレゲエは大切にしたい。『FREEDOM_BLUES』というタイトルも、ロイ・リチャーズ『FREEDOM BLUES』やブリガディア・ジェリー『FREEDOM
STREET』にインスパイアされたもの。そうやって自分に影響を与えたジャマイカのレゲエを大切にしていくってことは、レーベル名のI-NOTE RECORDS含め意識してる。ただ、それもそのまま表現するんじゃなくて、あくまでアップデートした形で届けたい。音にしても、ジャケットにしても、リリックにしても、2011年をパッケージすること。今回はそこを目指して作りましたね」
 
 


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音の話題に終始した第2弾。クリエーションの話はまだまだ続きます。次回いよいよリリックの背景に迫る。
 


(Interview & Text/ Norie Okabe)



HIBIKILLA『FREEDOM_BLUES』



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