インタビューその一。『社長HIBIKILLA誕生』の巻。 | Hibikillaオフィシャルブログ「ソコが丸見えの底なし沼」Powered by Ameba

インタビューその一。『社長HIBIKILLA誕生』の巻。

毎度ヤーマンです。

さて、今回から新企画として、音楽ライター岡部徳枝さんによる私ヒビキラーへのインタビューを連載していきます。

本来であれば、こういったものは第三者的な雑誌などで行うべき科もしれません。しかし、音楽業界に負けず劣らず出版業界も景気が悪く、なかなか調度いい雑誌がありませんでした。そこで、インターネットの時代だし、どうせなら自分のブログでインタビューをやってしまおうと思い立った次第であります。

そんなわけでお時間に余裕がある方はぜひご覧下さい。では本文スタート!



『社長HIBIKILLA誕生』の巻。


今日は渋谷で2時。HIBIKILLAと待ち合わせ、である。遅れること数分、「やあやあ、どうも」と、まるで偶然出くわしたかのような調子で、主役が訪れた。HIBIKILLAの取材は、これまでに何度かしている。けれど、本人と直に連絡を取り合って取材するのは初めてだった。2010年春、彼は独立した。だから、間を仲介する人はもういない。事務所、レーベル、既存のどこにも所属せず、一人でなんでもやってみようじゃないか。そう心に決め、I-Note Recordsを設立してから約1年半。渾身のアルバム「FREEDOM_BLUES」が完成した。ふだんから饒舌な人だが、今のHIBIKILLAにはいつも以上に話したいことがたくさんあるはずだった。「やあやあ、どうも」から約5時間。予想どおり、彼は喋り倒した。ポカポカ陽気の穏やかな午後、まずはカフェでコーヒーを飲みながら――。

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――やっぱり一番に聞きたいのは、どうして独立したのかってところなんです。前作となるミニ・アルバム「LIFE」発表からの間に何があったのか。

「いろいろ要因はありましたが、まず『LIFE』を出した時点で、すでに次の作品のインスピレーションが沸いていたんですよね。じゃあそれを今までお世話になってきたドクプロ(Dr.Produciton)から出すのかと考えたときに、どうもレーベルのカラーに合わないんじゃないか、と。それぞれのレーベルにそれぞれの色、やり方があるのは当然で、そこには、自分に合う部分と合わない部分があるわけで。その中で、不満と言ったら大げさかもしれないけど、自分だったらこうするのになっていう部分が出てきてしまった。これはドクプロに限ったことではなく、その前にお世話になったポニー・キャニオンのときもあったわけで、そうやって自分がキャリアを重ねていく過程で、合う部分と合わない部分がいろいろ見えてきたというか。だからこれは一度思い切って自分の良いと思うとおりにやってみようじゃないか、と。次は好き勝手に作ってみたい、そういう制作意欲が独立した発端かもしれないですね」

――最近、インディペンデントに活動するアーティストがますます増えていますよね。たとえば、今作の流通も請け負っているBOUNDEE(スペースシャワーネットワーク)という会社は、そういったアーティストたちのリリースにすごく積極的だし、新しいやり方で活路を見出しているアーティストも多いように感じます。

「そう、自分の場合も、音楽業界におけるテクノロジーの進化と環境の変化っていうのはひしひしと感じていて、新しいやり方を模索するなら今だなと思ったわけでして。たとえば、雑誌は少なくなってきているけど、その代わりにYoutubeがあったりして、そういう環境の変化に合わせた動きをしなきゃいけないって思ってたんですよ。メジャーの利点はもちろんあるけど、逆にメジャーには環境の変化に追いつけてない部分もある。そういう意味では、自分は小回りの利く動きをしていたいというか」

――だからといって、今まで経験のない裏方作業にまで手を出すことに抵抗がなかった?

「まったくなかった。実際やってみて、もちろん苦労はしたし、疲れは溜まったけど」

――I-Note Recordsは会社ということ?

「いや、登記していないんで、街の八百屋さんと同じスタイルですよ。個人事業主。従業員を雇うことになったら登記しようと思ってるけど、今は一人だから」

――社長であり、プロデューサーであり、ディレクターであり。作品制作から宣伝まで、一連の作業を全部一人で管理しているんですよね。

「もちろんそれぞれの段階でお手伝いしてくれる人はいました。だけど、全工程の現場に立ち会っているのは確か。いざやってみたら、できるもんだなと思いました。そもそも作品のクオリティーをあげるには、時間をかけるか、お金をかけるか、超頑張るかの三択しかないと思うんですよ。超頑張るっていうのは当然にしても、お金はないから、その分今回は時間をかけてる。ミックスあがったものを今までにないくらい何度もチェックするとか、要は妥協しないってことなんですけど。そんなこんなで1年で完成すると思ってたものが、1年半以上かかってしまいました。ただ、困ったのは宣伝。これだけは時間をかけるわけにはいかない。リリースするタイミングに合わせてピンポイントで宣伝しないといけないでしょ。だからって広告を出したりして、お金を投入するのかって言うと、へたしたら制作費より高くついちゃう。どうにもこうにも難しいです。だから宣伝は、まだまだ修行が必要」

――アーティスト自身がダイレクトな窓口になるってことは、シビアな状況に対面することも多いのかなと思うんですけど。

「たとえば記事を掲載するには広告料がいくら必要とか、なるほどなっていう場面はありましたよ。流通でいうと、小売店のイニシャル(初回入荷)枚数の決め方とか、思った以上にどうにもならないルールが多いんだなとか。いざポスター作っても貼ってもらえないとか、こっちはなんとか売るためのアピールをしたいのに、なかなかうまくいかないこともあったりして。もちろん、応援してくれる人も大勢います。まあ、インディー音楽を売るっていう面では、厳しい環境にあるのは間違いないけど、一人でやってる分、誰かに給料を払う必要がないので。この枚数でも食っていけるっていう計算のもとにやっているから、大ヒット!みたいな状況でなくても、ギリギリではありますがなんとかなっている」

――ライブ会場の手売りも重要な販路ですよね。インディペンデントで活動するアーティストにとっては、そこが肝だったり。

「本当にそう思いますよ。“この状況だが、なぜか食えている”という新しいシステムを作ったもの勝ち。街のタバコ屋さんと一緒ですよ。今にも潰れそうなタバコ屋さんが実は自動販売機をいろんなお店に納入していて、何もしなくても自動的に稼いでくれていた的な。既存のシステムばかりに乗っていると、見落としてしまうこともある。僕らも知恵を働かせないとだめですね」

――周りのアーティストたちとは、いつもそういう話をするんですか?

「何人かは。ヒップホップ・アーティストのダースレーダーさんとは会うたびにするかな。ジャンルが違うので話しやすいのと、あと立ち位置が似ているので」

――レゲエ・シーンの若いマイク持ちとかとは? 「教えてください」とか言ってこない?

「あまりないです。だけど、音楽で飯を食うというレベルを目指すなら、ちゃんと考えないといけないと思います。残念ながら、アーティストとしていけてればいいっていう時代でないことは確か。でも、そこは向き不向きというか、裏方なんて自分にはできないっていう人もいるから、そういう人に対しては俺が手伝いますっていう。レベールと名乗っている以上、人のプロデュースもやりたいと思っているんで、どしどしデモを送ってくださいという感じですよ」

――ほう。そういう動きも視野に入れているんですね。

「もちろん。基本一人でできる人は一人でやったほうがいいけど、できないのであればサポートしたいという気持ちはあります。でも、人が一人増えるってことだから、そこには手数料的なお金が発生してしまう。だから、宝探しに行く船に一緒に乗ってる“船長”と“船乗り”という感じで。宝を見つければ山分けするような。そういう気持ちでやってくれる人がいるなら、一緒にやりたい。こういう音楽は基本的には儲からないものなので。そこを儲かるようにするには御互いの知恵を持ち寄ろうってことです」

――そうそう、I-Note Recordsの名前の由来は?

「3つあるんです。お世話になったほかのレーベルから独立するってことで、一人称の“I”。それで独力でやっていることを示すのがひとつ。それと、レゲエのファウンデーションをこれからも大事にしていきたいっていう気持ちで、ジャマイカのファウンデーション・レーベル“High Note”(1960年代にソニア・ポッティンジャーが設立)をもじった感じ。あとは、日本語として発音したときに聞こえる「アイノオト」。愛の音、つまりサウンド・オブ・ラブです。ちゃんと音楽に対する愛情を持っていこうというメッセージ」

――わ、気づかなかった。さすがですね(笑)。

「ここまでマーケティングの話が多くなってしまいましたけど、クリエーションの部分にはマーケティングを持ち込みたくないんですよ。音に関しては、インスピレーション重視。音楽の力を信じていきたい。そういう意味での“愛の音”です」

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はてさて、HIBIKILLAが奏でる“愛の音”とは? 次回、「FREEDOM_BLUES」クリエーションの源流に迫る。

(Interview & Text/ Norie Okabe)



HIBIKILLA『FREEDOM_BLUES』
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