オモロリリックへの道その2~「ダブルミーニング」 | Hibikillaオフィシャルブログ「ソコが丸見えの底なし沼」Powered by Ameba

オモロリリックへの道その2~「ダブルミーニング」

俺はいつも面白い歌詞=リリックが書きたいと思っている。いつでもそれが出来る訳ではないので苦労が絶えないわけだが。

面白いリリックとは何かといえば、「普遍的でありながら記号的でないもの」ではないだろうか。換言するならば「当たり前のことを当たり前じゃなく表現すること」とか「誰もが思いつくことを誰も思いつかない方法で表現すること」だろう。

その試みが成功しさえすれば、それがいいリリックかどうかはさておき、面白いリリックにはなっているはずだ。

そのため、アーティストは頭を使い、様々な修辞法をつかう。…というかつかわなければいけない。というわけで、自分が日々考えている面白いリリックを書く具体的な方法を公開していくシリーズ第二段です。第一回に続いて、今日はこれ。

オモロリリックへの道その2――「ダブルミーニング」を使ってみよう。

そもそもダブルミーニングとは修辞技法の一種で、2通りに理解できる駄洒落に似たセンテンスのことであります。

前にツイッターでも書いた、Bob Marley & The Wailersの「No woman no cry」なんかが最もわかりやすい例だと思うんだけど、

パトワ(ジャマイカ・クレオール語)やエボニクス(米黒人英語)だと、二重否定は強い否定の意味にもなるから、その語法で「No woman no cry」というセンテンスを訳すと「女の人よ、泣かないでおくれ」となります。日本語盤のオフィシャルな訳詩もこの解釈で乗っていたと思います。

だが、このセンテンスを通常の英語的に訳すと、「女がいなければ、泣く事もない」という…全く違う意味にも読み取れてしまうのですよ。

タワーレコードのキャッチフレーズ「No Music No Life(音楽なくして人生なし = 生活は音楽とともに)」や英語のことわざ「No pain no gain(痛みなくして前進なし = まかぬ種は生えぬ)」と一緒の文法ですね。

このサビのおかげで、No woman no cryはゲットー暮らしの大変さを語っている歌ながら、ありがちなお涙頂戴物語にならず、ふとしたおかしみを醸しだす事に成功しているわけです。なんせ私生活では約10人の女性との間に子供を作ったボブですから、女に泣かされることが相当多かったであろうことは想像に難くないわけですわ。名曲ですが結婚式ではかけないほうが良いかも…。

そこへ来て、最後に「Everything is gonna be alright-(まあいいや全ては上手く行くさー)」でしょ。お、ついに開き直った!っていう。リスナーはもう否応なしにポジティブマインド!だからこの曲は広く愛されているのだと思います(多分)。ボブはこれを狙ってやったのか?それは本人がいない今となっては知る由もないのですが、自分は狙ってやったに一万円賭けたいと思います。

日本語の楽曲でもChehon「みどり」とか井上陽水「夢の中へ」とかメリー・ジェーン的な分野、またはツボイノリオ「キンタの大冒険」や笑連隊の一連などセクシャルバイオレット的分野にはダブルミーニングを使用した名曲も多いかと思うのですが、それ以外のトピックにもこんな素敵なダブルミーニングを使用することが出来るようになれば…ヒットするかは置いといてそれはきっと面白いリリックになっていると思います。Jah!

今日の一曲はthe fugees-no women,no cry