委託ダブの頼み方って気になりますか? | Hibikillaオフィシャルブログ「ソコが丸見えの底なし沼」Powered by Ameba

委託ダブの頼み方って気になりますか?

最近あるサウンドから委託でダブの依頼が来たんですよ。

で、その内容について先方とやり取りをしていたんだけど、ちょっと面白かったのがそのサウンドの方に「委託だと適当にやられるって聞いてたんですけど、ちゃんと対応してくれて感謝です」的なことをお礼として言われたということ。…自分では今まで適当にやったり手を抜いたことはなかったのでちょっとショックを受けつつ(笑)、せっかくなんで今日は委託でダブを録るときのコツを公開しようと思ったのであります。

まず前提としてダブ録りの際に俺は手を抜いたことはないし、他のアーティストもお金をもらって、プロ=公の人として活動している以上手を抜くなんてことはまずないと思います。よしんばそれで楽に金儲けが出来たとしても、今回のように(苦笑)変な噂が立ってしまうリスクの方が高いからね。

ただし、委託の場合は特に以下のような様々な事情によって満足できないダブが届く可能性は否定できません。もし俺が関わったサウンドの方で以下の理由で満足できなかった方がいらっしゃったらごめんなさい。そして今度録音するときはそこら辺を踏まえてリクエストしてくださればキッチリ仕事しますんで改めて宜しくです。ではイッテミヨー!

1、発表済みの録音作品とはボーカル本数が違うケース。

合唱団のコーラスを思い出して貰えば解ると思うけど、一般的にボーカルを録音するときのチャンネル数(声を重ねる回数)が多くなればなるほど、広がり感(サラウンド感)、ステレオ感(定位感)が出て、ピッチ(音程)が綺麗に聞こえます。

その代わり、メインボーカル一本で録ればボイスはより太くなり、一本録り特有の迫力や味(それを音痴といわれると厳しいが…)が出てきます。さらに、リリックも断然聞き取りやすいです。そして最終的にはコンプレッサーという音響機器に通すのでチャンネル数の違いによって音量の違いは出ないのが普通です。

俺は発表済みの録音作品で何本もボイスを入れてコーラスしていたとしても、ダブではそうしないことが多いです。それはダブプレートは普通のCD以上に爆音でプレイされることが前提となり、しかもサウンドシステムではモノラル再生されることも多い(スピーカーボックスの山を左右に2セットとかあんまりない)ので、音の綺麗さやステレオ感よりも声の迫力を前面に押し出したほうが良いと考えているからです。また、普段とは違うリリックスを歌うことが多いので、リスナーがより聞き取りやすいように一本ないし二本くらいの本数が適切だと考えているためです。これは決して手抜きではありません。

2、特殊な用途のダブを依頼したケース

サウンドクラッシュ用とか結婚式でのプレゼントとか、特殊な用途のダブを依頼されることもあるけど、このような場合は立会いで細かいニュアンスを伝えてくれた方がやりやすいことは確かです。

どういうテンションで歌うかは時には何を歌うかよりも大事だし、サウンドマンの腕の見せ所だと思うので仮に立ち会えない場合も細かく伝えてもらいたいですね。例えばラブソングを切るチューンに替え歌するとして、じゃあテンションはいつもと同じなのか、それともキルチューンだけにいつもより強めにいくのか、はたまたその逆に哀しげなレクイエム調にすることによって殺傷能力を高めるのか、そこの意図がずれてしまったことがいままであったかもしれません。そこの意思が(特にテンションを下方修正する方向で)ずれると手抜きと感じる場合があるのかもしれないけど…これもアーティストなりの意図があってのことで手抜きではないことが多いと思います。

3、ミックス段階で調子が悪くなるケース

みんな大好き、キング・タビーにデジタルB…ってなわけで、レゲエはレコーディングエンジニアの個性が前面に出てくる音楽でもあります。

同じレコーディングスタジオでも複数のエンジニアが所属している場合もあるし、それぞれの実力、個性、癖によって当然音は大きく変わってきます。同じスタジオ同じアーティストにダブを依頼した場合でもエンジニアが違えばよく聞こえたり、逆にいまいちに聞こえたりすることもあるでしょう。

だからエンジニアリングによる音質変化が気になるのであれば、「エンジニアは誰々で」とか「スタジオはどこどこで」等と指定してもいいかもしれません。この依頼方法は面倒くさがられることもあるかも知れませんが、熱いサウンド魂と誠意が伝わればやってくれる人も多いのではないでしょうか。少なくとも俺はやります。

実はミックスだけでも自分でやるっていうのが最も良い解決法になります。最近はどのスタジオでもdigidesign Pro tools(たまーにCubase)というソフトが使われているので、バージョンと互換性を確認して、自分でミックスにトライするっていうのも一つの手ではあります。また、ダブはマスタリングという音圧を一定化する作業を行っていません。それでしょぼく聞こえることも多いのでマスタリングも覚えるとなお良いです。(そうしてまた一人、善良な若者が機材地獄の扉を開けるのであった…)

4、頼み方が曖昧なケース

委託でダブを依頼するときに「OOミックスのイントロみたいな感じで」とか「OOサウンドのダブみたいな感じで」と雰囲気や歌詞を説明するのはやめたほうがいいと思います。忙しいアーティストほど毎日のようにスタジオワークをしているし、どんどん新曲を書き続けているわけで、過去のダブ録りの内容は忘れていることが多いと思います。だからこそそこを「後はバイブスで」とかじゃなく、丁寧に伝えるのが満足度の高いダブをゲットする第一歩です。

そこが要領を得ないとアーティストとしてはアベレージの仕事をするしかなくなります。アベレージを超えるものにはなりえません。

また、アーティストによっては歌詞のここだけは変えられない!というこだわりがある人もいます。変えて欲しかった歌詞が変わってなかったとしても忘れたり手抜きだったり…するわけではない場合もしばしばあるんではないかと、思います。


ってな訳で委託でもなんでもダブはダブ、サウンドのお宝なんで、どうせ録るならこだわって究極の一品を作って下さい。そして出来れば私めにお仕事を!モーリコ!