今回は番外編という事で、前回お話した火縄銃のお話で御座います。
前回火縄銃についてお話致しましたが、その時に「火縄銃が騎馬突撃を無効化したとは思えない」という指摘が御座いました。
うん確かに。言われてみればそりゃそうじゃ。だって火縄銃が最強だったらなんで徳川家康公は武田の騎馬隊を雇ったのかとかそういう話になるもんね・・・。
じゃんけんで言えばグーはチョキより強いがならグーはチョキを完全に否定したかと言えばそんな訳はない。戦争に最強の一手なんてあるはずもなし、あると知れれば対策されるのが当然か。
と、言う訳で今回は火縄銃についてもう少しだけ詳しく調べましたので宜しくお願いします。(言い訳終わり)
[火縄銃の運用]
火縄銃は凄い人気のある武器である。凄い。今だに愛好家がいるぐらいだという。まあその理由もわかる。火縄銃の画像を見ればわかりますが中々に美しフォルム。美しい色。一丁壁に掛けておきたくなるような・・・。
しかも威力も高い。命中精度はアレだが威力は甲冑程度なら粉砕する。当たったら痛いじゃ済まないんだから恐ろしい。
そんな火縄銃、評価が分かれているのは火縄銃の性能とは関係ないそうな。
つまり火縄銃凄いんだよ派と火縄銃凄くなかったんだよ派が対立しているのだ。どういうこっちゃ。
戦国時代、火縄銃は時代を変えた兵器であった。
火縄銃の為に城は天然の要害に守られる必要が無くなり、政治の中心地としての役割の大きい平城が主になった。
この当時の城は要塞としての仕掛けも多かったそうな。
例えば本丸に辿り着くまでの道筋が迷路のようになっている。
これはとても困ったろうなあ。何しろ道が二つに分かれていたら片方に全員突撃なんてできない。必然戦力が割かれてしまう。
当たりの道を選んだ者は無事だがハズレを引いた場合悲惨な目に遭う。
道を走っていると辿り着くのは行き止まり。
そしてその壁から突如火縄銃の銃口が飛び出してきて一斉射撃を食らう。
うわっ。ホラー映画か。
こんな意地悪な仕掛けを作るまでもなく、城の最も攻められそうな箇所に鉄砲隊を配置すれば後は敵が撃ち殺されに来るのを待つばかりというわけで・・・。
有名なのが大阪城の真田丸だそうな。あの真田幸村(本名信繁)が作ったものだという。うーむ。
そんな火縄銃、なんで最強兵器になれなかったのか?
Fugen様によると騎馬突撃は第一次世界大戦まで行われていたそうな。
馬なんざ鉄砲玉の良い的ではないかー!
[火縄銃の面倒さ]
なんでかというと火縄銃、超デリケートな武器だかららしい。
まず火薬。湿気ると使えなくなるのは勿論、どれくらいの量で最高威力が出せるのかは素人にはわからん。
火薬が少ないと弾は飛ばないし火薬が多いと爆発音でこっちがぶっ倒れそうになる。
自分の持っている火薬がどのような成分なのか、その成分ならどれほどの量でどれほどの弾丸がどれくらい飛ぶのか。
これを頭に、そして体に覚えこませておかないと火縄銃は使えない。
ほら、なんかこう、プロじゃないと使えそうにないでしょう?
火薬の質を確かめる為の器具も存在し、これを使って火薬を調べて量を決めていたそうな。ゴルゴ13みたいな男によく似合う場面ではないか。
ついで弾丸。
実は火縄銃の弾丸は規格が統一されていない。ていうか銃口から出られるならどんな弾でも飛んでいくそうな。
とはいえだから弾丸なんてどうでもいいやとはいかないだろう。
この銃にはこの弾丸という相性のようなものがあったろうし、粗悪な弾丸を掴まされたらどうなるかわかんないし・・・。
と、なると当然物量が限られてしまう。しかも扱うのにそれなりの訓練が必要だ。
その点馬なら楽チンだろうなあ。何しろ馬に乗れればまず合格。後は槍でも構えて敵に突っ込むだけだし・・・。
というと騎馬隊のお方に説教されそうですが、費用対効果は騎馬の方が高いでしょうなあ・・・。
[火縄銃のカッコいい話]
となると火縄銃、価値がどんどん下がっていきそうですが非常に強力なのは間違い無い(たぶん)
火縄銃については様々な話がありますが、神君家康公にまつわるお話で締めくくりたいと思います。
家康公、かつて一揆を制圧した時に鎧を脱いだら潰れた鉛玉が二つ、鎧から落ちたことがあったそうな。げげげ。危ない危ない。
もう少し近距離から撃たれていたら今頃歴史は変わっていたかもしれない。
そしてもう一つは伝説の類ですが面白いので・・・。
その昔、家康公はかの武田信玄と戦ったことがあります。
場所は三方ヶ原。そして家康公は信玄に酷く打ち破られてしまう。
しかもこの戦の前、信玄は籠城する家康を無視してその領土を通り過ぎるという挙動に出ていた。家康をなめきっているという態度であるが、信玄得意の平地での戦いに持ち込みたかったのが大きな理由だとか。
失意に沈む家康軍。しかしこのまま通過させれば末代までの恥。
そこでさる作戦が実行された・・・。
夜。陣を敷いていた武田軍の元で風流な笛の音が流れてきた。
風流な音がどこからともなく聞こえてくる。
おお、どこぞの粋な男が戦場の憂いを晴らしているのかと、信玄が立ち上がり、笛の音について聞き出そうと本陣から出る。やいなや笛の音を掻き消す発砲音!暗闇を切り裂き飛んできた弾丸は信玄の体を貫いた。
そう、この笛は家康軍の手の者が吹いていた。
そして本陣から出てきた信玄を松明の明かりだけを頼りに狙撃手が狙撃。
風流人を気取る信玄ならば引っかかるだろうと踏んでの暗殺計画であった。
慌てふためく武田軍を尻目に暗殺者は闇夜に乗じて逃亡。
土地勘のある暗殺者を余所者が捕えられる訳もなくまんまと逃げられてしまったという。
しかし悲しいかな。火縄銃の命中精度は低い。
必殺の弾丸は致命傷を負わせられず、僅かに足を貫通したに留まった。
されど軍神武田信玄の運も遂に尽きたのか、はたまた徳川方の念が通じたか。
軽傷だったはずの信玄は途中、いきなり病気に罹ってしまう。
なんと足の傷に雑菌が入り込み、今でいう破傷風を患ってしまったのだ。
よもや武田軍は前進することすらままならなくなり、遂に信玄は病死してしまったという。
事の真偽はわかりませぬが、中々に面白い話で御座いました。
話者 大宅世学