さて皆様、前回は道長が内覧になった処までで御座いました。
今回はその後の話で御座います。
伊周は確かにこの出世競争には敗北した。しかし・・・。
ならもう彼は出世の見込みは無いのであろうか?
否!まだ彼には逆転本塁打の道があったのだ。それは彼の妹、定子が皇子を産むこと。
その皇子を天皇にすれば彼は一気に形勢を逆転出来る。
しかもこれはかなり可能性がある。ホームランどころかヒット、いやスクイズと言ってもいいかもしれぬ。何しろ帝、定子にぞっこんなのだ。男と女が愛し合えば子が授かるのは道理。
しかし彼は、伊周は大変な失態を犯す。
事は去る日。
伊周は恋人の三の君と言う姫に逢いに行っていた。
だが彼はそこである光景を目にする。
それは花山法皇が三の君の邸宅へ忍んで入っていく姿であった。
え?誰花山法皇って?というお方も多いことで御座いましょう。
私のブログ44回にて出てきた、あの藤原氏の陰謀で出家させられた天皇で御座います。(詳しくはコチラで)
うわーん。寝取られたー!とショックの伊周。これを弟の藤原隆家に相談した。
この隆家。女々しい兄と違って脳みそが筋肉で出来ている様な豪胆な男なのである。
で、この男はキレた。激怒した。おのれー!いかに法皇とは言え人の恋人に手を出すたァふてえ野郎だ!兄貴!俺に任せておけー!
止めろ伊周!
そしてそれから数日後。
月の明るい夜、花山院は馬に乗ってまたもお忍び。
その時!闇を裂いて飛んできた矢が院の衣の袖を貫いたのであります。
うわっ!曲者だっ!
忽ち斬り合いになる中、伊周と隆家は花山院によくも三の君に手を出したな!と院に吐き捨てるが院が返してきた返事はお前達は何を言っているのか。私は四の君の所に逢いに行こうとしているのだ。
えー!?
実は三の君の邸宅には他にまだ姫君が住んでいた。それが四の君で御座います。
彼女の所に院がお忍びになられるのにはワケが御座います。
44回にて花山天皇は大好きな妻に先立たれそれが元で出家したと書きましたが、四の君はその妻の妹なので御座います。
成程成程。姉妹ならば姿貌も似ている事は間違いなし。花山院は最愛の妻に瓜二つの女性を見てメロメロ・・・と、まあそういうお話で御座いましょうか。
なーんだ。そんなことだったのですか。いや私はてっきり三の君に逢っているのかと・・・。
いやいや伊周こそ三の君に執着とは中々やりますねー。
あっはっはっはー!
となると思っているなら大間違いですぞ伊周!
何しろ退位したとは言え前の帝、法皇に矢を射掛けるとはこれを弑逆の心有りと捉えない者が何処にいようか。
しかし花山院はこれに激怒はしたが女絡みでこの様な争いが起きたとしれたら・・・と体裁を気にしなさってこの事を表沙汰にしようとはしなかった。
・・・しなかったがこれを道長の耳が捉えた。
道長は当時独自の情報網を持っていたらしく、検非違使長官が伝えるべき話が道長から検非違使長官に伝えられていたとの話もある。多分忍者でも雇っていたのであろう。
さて、今回はこれまで。
次回、道長がこの政敵の大失策をどのように料理するのか。
どうか宜しく・・・お願い致します。
話者 大宅世学