父のもとにむかう。洗髪しても髪の毛のチリチリ感は改善されないので自ら毛先を切って
みたが上手くゆくわけもなく帽子を着用する。喉がいがらっぽくて咳き込むことが多く、
列車内でこれをやると新型感染症の流行が一服した頃で気になった。
 病院では主治医である医師に心不全による肺機能の低下も進む可能性が高く酸素量の増加
はこれからは避けられないこともあり、一定の決断を求められた。これからも麻酔による痛み
の緩和は引き続き行われるが、現状を踏まえれば治療というよりは延命措置であるので、
痛みに耐えながら治療を受けるという段階の前に酸素吸入から離脱できなくなる。
 もしそうなればそれは事実上の死であるので、他に肉親がいるのであればその時が一週間
から10日であろう可能性が非常に高い旨を事前に伝えるよう指示を得た。勿論治癒を目指す
ことに変わり果てるはないが、入院時の承諾書式では無為の延命措置はこれを選択しないと
して提出した。
 父の容態は焼けた皮膚から体液が包帯に滲み、意識は朦朧と言うよりもより深い譫妄状態
にありながら、肉親としては聞きたくないとある言葉を叫び続けている。最初は何を言って
いるのか判らなかった言葉である。
 
 午前中は家のことに午後は病院に時間を振りわけ明日もそうしようと思いながら、まずは
電気を通電させることからはじめようと電力会社に連絡をしたところ復旧がすぐできるかは
家屋の配電盤に異常がないことを確認して通電作業を行うため今すぐにというわけにいかない
とのことで本日再度の家屋内立ち入りを遠慮せざるを得なかった。
 冷蔵庫内がどうなっているかということに思いがけなく気がついて、多くの食材が廃棄の
憂き目に遭うのは確定されてしまった。家の中はジメジメしていながら木材と石油化学製品の
焼けた刺激臭にクラクラとする状態にこのあと一月以上甘んじることとなるのである。

⭕電気が停まれば冷蔵庫にも注意して…気温が高い時期なら早いうちに処分

写真は10カ月経ってもくすんだ状態の延焼をまぬがれた食堂部分の壁。