初冬のある晩に同居する父の居室から出火。

 夕飯後ちょうど眠気がさして転寝していたところに耳障りな警報音が聞こえ階下に急ぐ。

酸を感じさせる 煙で呼吸が苦しくなり扉を開けると更に高温の煙が顔に吹きつけてきた。

炎はやがて天井に達するかの勢いで、父を居所から出すかたわらで台所に水を求めるも

 2リットル程度の両手鍋しか持てず数往復して水を撒くのが精一杯で、いよいよ窮まり

初めてスマートホンの緊急通報で消防に連絡をした。

 実はその間も近所に声をかけてみたが冬のことでどなたにも気付いてもらえなかった。

近所を慌てさせたのは消防のサイレンが街区の路上に停まった時からであった。


出火から鎮火まで2時間とかからず後日記すつもりの実況見分で明らかになった事実や父親

の脱出当時の状況などはまるで自らは傍観者であったかのような妙な感覚を今も覚えている。


写真は今も焼けずに残っているわが家の階段