「どうしたってさ俺もお前も何か食わなきゃ死んじまう。何か食ったら食った分出さなきゃ腹が破裂して死んじまう。お前がどんだけ格好の良い事を言っても、哲学やら真理やらを語っても、お前の大嫌いな、お前が言う所の、「人間の動物としての卑しさ」に帰ってくるんだよ」


「だから何」


「いいか、お前が大好きな村上春樹はデビュー作で「放って置いても人は死ぬし、女と寝る」と書いたんだ。そういうもんなんだよ人って。まさか自分が他の生き物より一段上の存在だなんて自惚れちゃいないだろうなお前は。」


「春樹は語るに値しない事の一例として書いたんだ。そして俺はそんな自惚れなんかしちゃいない。人間としての卑しさに留まる事が酷く苦痛なだけなんだ。自分が生物だということを忘れた訳じゃないが、生物のままでいいとも思っちゃいない」


「生物としても真っ当に生きれていないお前がいう事じゃないし、有名人や作家をファーストネームで呼ぶ人間はただ気持ちが悪い。コメディアンをさん付けで呼ぶよりもずっと」


「考えも無しにそうなっている人間と、考えた上でそうなっている人間を同じ棚に並べないで欲しいな」


「考えがどうのこうのは分からないが、見かけ上一緒なんだからしょうがないだろ。俺から見れば、今のお前は子供の無知な理想に大人の屁理屈を塗って乾燥させた像みたいなものだ」


「俺から見れば、お前は後は死ぬだけの動物だ。そこまで考えがしっかり固まったらあとは作業しかの凝ってないんじゃないのか」


「まさか、人生はクリエイティブな物だと思っていたのか」


「そうか、どうしたってさ、無理だな」