昨日、大牟田文化会館開館30周年記念事業として開催された「土井善晴講演会」に行ってきました。演題は『料理が楽になる考え方~命をつくる家庭料理~』。
ノンストップで90分間、とても楽しいわかりやすい料理のお話を聴くことができました。料理を作る人の気持ちがすごく楽になる、嬉しくなる講演でありました。
(梅田蔦屋書店HPより)
最近ではTVプレバトの料理盛り付け部門で、柔らかい関西弁での毒舌査定が人気の土井さんですが、「家庭料理の大切さ」、「食育」、「食文化」などをテーマに“食べ物の本当”を伝える講演会を行われています。
私のメモから講演内容の一部をご紹介します。
・母親はどんな状況にあっても家族に何を食べさせようかと考えています。男どもは無理なことばかり要求してきます。食べることが大切だとわかっていても、おろそかになってしまいがちな毎日の料理。そういう中で、晩ごはんは何作ろうと悩まなくていい、台所に立つ人を楽にしたいというのが『一汁一菜でよいという提案』です。ご飯とみそ汁と漬物さえあればいいと考えましょう。
・戦後の食文化は日本の伝統的食文化を置き去りにしてきました。昭和35年の一人あたりの米消費量は115kg、それが平成20年では60㎏です。味噌は20㎏だったのが5㎏になっています。味噌は1300年の歴史をもつ素晴らしい発酵食品なんです。味噌自体での食中毒は過去1回もありません。逆に殺菌効果が大きくO157でさえ死滅させます。自分たちの伝統の食べ物を信じましょう。毎日、みそ汁を飲む習慣があれば元気になります。
・家でも外食の料理人が作るようなごちそうを食べたい、おかずを何皿も作るのは毎日がカーニバル状態、飽食の世界です。細胞ひとつ一つが喜ぶようなおいしさ、普通のおいしいもの、毎日食べてもあきないもの、それが『一汁一菜』です。
・レシピという情報が料理のハードルをどんどん高くしています。家庭の素朴ですばらしい料理がプロの外食料理人のレシピ通り作ろうとして、難しくなり、画一化されていきます。昔ながらの個性ある料理が料理人レシピ情報通りに作ろうして、消えつつあります。
・切る大きさや長さが変われる自由があるのは家庭料理だけです。均一でないのがいいのです。サラダも均一でないのがおいしいのです。ユネスコ無形文化遺産となった『和食』(注)は“家庭料理”なのです。決して会席料理を指しているのではありません。
「おかあさん、おばあさんの料理が認定されたんですよ!おめでとう!」という話なのです。
(注)農林水産省ホームページから
「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
『和食』の4つの特徴
(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
(2)健康的な食生活を支える栄養バランス
(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
(4)正月などの年中行事との密接な関わり
・昔の庶民の暮らしではおかずはつかないことも多かったから、実際には「みそ汁、ごはん、漬物」だけで一汁一菜の型を担ってきました。だから、今だって、おかずをわざわざ考えなくても、ごはんとみそ汁を作り、みそ汁を具だくさんにすれば、それで十分「一汁一菜」なんです。考えることはいりません。日常の食事を一汁一菜と決めてしまえば、食事作りのストレスはなくなります。
・一汁三菜は戦後の話です。一汁一菜が基本です。みそ汁の具だくさんでOKです。みそ汁はすべてのものを受け入れます。悲しみも苦しみも隠してくれます。みそは偉いです。ごはんだけのおむすびに、みそをちょいと乗せるだけで、とてつもなく美味しくなります。
この後、一汁一菜のさまざまな調理、組合せ、盛り合わせ例の写真をたくさん見せていただきました。土井先生のユーモアたっぷりの楽しい、嬉しい、料理のストレス解消のお話でした。
お読みいただき、ありがとうございます。
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