岡野雄一 著 『 みつえばあちゃんとボク 』
西日本新聞社 定価:本体1200円+税
ペコロスおかのさんの最新刊です。裏表紙に「ペコロスの母みつえさんと孫の命の交差する かけがえのない時間を絵本のように描きました」と作者のことばがあります。
そして本の帯には「ちょいぼけのみつえさんは今日も、しあわせの記憶の中をうつらうつら。『ペコロスの母に会いに行く』の詩情豊かな世界がオールカラーに!」と記されています。
『ペコロスの母に会いに行く』は日本漫画家協会賞優秀賞を受賞したコミックエッセイで、感動しました。映画もよかった。最近ではNHKの番組『助けて!きわめびと』に著者が出演され、認知症の母親と心を通わせたいという家族の願いを助けられる姿を観ることができました。
その時に岡野さんが授けられた極意のその1は「思い出の力で温かな気持ちを呼び起こす」。ご家族に「今から考えるとクスッとするような母親のエピソードを思い出してほしい」と話されます。極意その2は「一歩引いたところから、親と自分を見つめる」。楽しかった気持ちやその人の人柄を思い出すことで、介護を前向きにさせる原動力となる、と教えられます。
岡野さんが大切にされている考えは「認知症になっても、玉手箱を持っている」。認知症を悲観的にみてしまうと記憶や思いやりなどがなくなったように思いがちですが、本当は思い出も感情もすべて入った“玉手箱”がありますよ、という考え方です。
映画『ペコロスの母に会いに行く』の森崎東監督が言われています。「記憶は愛である」。
この本はペコロス岡野さんと小学生のむすこまーくんが東京から、お父さんの故郷、長崎に帰って、みつえばあちゃん、さとるじーちゃんと、仲良く一緒に暮らす日常を描いた漫画です。長崎弁と、ゆるやかな時の流れ、なんとも言えない“間”…あたたかい気持ちになりました。
79-80ページのシーン。手をつないでいる老夫婦、
おじいさん「どこのどなたか…こげん親切にしてもろて」
おばあさん「なんの、お忘れでしょうが、私はあなたの妻ですけん。ホラ、手ば離したらまた迷子になりますよ」、「ところでどこに行きたかとですか?」
おじいさん「迷子になった妻ば探しよっとです」、…「どうしましたか?」
おばあさん「私は迷子ですから」、「迷子らしゅう、いっとき泣かせてください」
切ない気持ちになりましたが、互いを思いやる夫婦愛に胸が熱くなりました。
しかし、ほとんどはクスッと笑ってしまうような、まーくんとじいちゃん、ばあちゃんとの生活のひとこまです。まーくんを見守るみつえばあちゃんの人生と優しさを感じることができました。
認知症は予備軍も含めると65歳以上の4人に1人と言われており、認知症介護は他人事ではありません。私自身がそうなったときに、楽しい思い出がつまった玉手箱を持てるよう、これからの人生をよりよくしていかなければど思いました。
お読みいただき、ありがとうございます。
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