加藤一二三 著 『 将棋名人血風録-奇人・変人・超人 』
(角川ONEテーマ21) 定価:(本体743円+税)
今日の西日本新聞のコラム「春秋」に加藤一二三 九段の話題が載っていました。
「…その加藤さんは75歳で現役棋士最年長。対局中の逸話は数知れないが、盤外でも、とぼけた味が交じる独特な語り口で楽しませてくれる。…近年はバラエティ番組に出演する機会が増え、「ひふみん」と呼ばれてファンを増やしている。新しいファンの中で加藤さんが昔「神武以来の天才」と呼ばれたことを知る人は少ないかもしれない。積み重ねた勝利数は歴代2位。…」
さて、この本、とても面白いです。
本の帯にはこうあります。「本書は実力制第6代の名人の著者が歴代棋士たちと繰り広げた時代を回想、奇抜な将棋棋士たちとの知らざれる姿を改めて綴る貴重な一冊である」
「はじめに」の中で、将棋の歴史、世襲制から実力制への名人戦の歴史が分かりやすく述べられています。そして、実力名人制のスタート以来、名人位についた者は12人であることを知る。「就任順に名前をあげると木村義雄、塚田正夫、大山康晴、升田幸三、中原誠、加藤一二三、谷川浩司、米長邦雄、羽生善治、佐藤康光、丸山忠久、森内俊之であり、このうち、木村、大山、中原、谷川、森内、羽生の6人は、通算五期で名乗ることができるる「永世名人」の資格を得ている」とあります。
加藤さんがすごいのは、
「じつは私は、木村さんをはじめとする11人の名人-私を除く-全員と実際に対局した経験を持っている。そんな経験をしているのは、おそらく現役棋士のなかでは私ひとりではなかろうかと思う。…」であって、そして「私が名人戦に出場したのは四回である。しかし、副立会も含めて立会人を何十回も務めたし、同時進行の大晩解説も担当していたことも多数ある。それ以外のときは実際に対局場に行って研究をしていた。従って、少なくとも昭和33(1958)年度以降の名人戦のすべてを、いわば当事者のひとりとして私はつぶさに見ていることになる。」という、名人戦の生き証人なのです。
本文は5章に分けられています。
第一章 永世名人三人、しのぎを削る
第二章 木村義雄名人とその時代
第三章 大山・升田、火を噴くライバル
第四章 中原誠に挑む
第五章 谷川浩司、羽生善治世代、そしてー。
将棋好きの方は本当に楽しめる内容ですが、将棋に興味のない方も、加藤さんの人柄がにじみ出た文章、数々の面白いエピソードと鋭い人間観察の内容を楽しめると思います。写真もたくさん入っています。
おすすめの本です。
お読みいただきありがとうございます。
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