卵巣嚢腫から子宮まで全摘出することになる間に、

医師である友人Cに相談をさせてもらいました。

実は少し以前にCのお身内に婦人科系のがんが発見されました。

Cさんはそれまで医師として診てきた時と違い、

大事な身内ががんという、

医師としての初めての心理的な経験をしたと言います。

 

それを踏まえてのアドバイスをいただいたのですが、

その時口を酸っぱくして言われたのが、

結果はどうであれ「民間療法はやめとけ」でした。

 

お身内が簡易検査でがんの疑いが濃厚だとわかった時、

Cさん自身は同科専門医ではないため、

信頼する知人の専門医に診せて確定診断してもらい、

全摘出手術と抗がん剤治療という

一般的な標準治療をやっていきましょうということになったそうです。

もちろんCさんも医師として結果からその治療の妥当性を認識していました。

 

そしてお身内に告げたところ、

身内は手術と抗がん剤治療を拒否するといい出したのだそうです。

 

Cさんは、医師の、しかも身内の自分が説明しているのに、

なぜ拒否をするのか訳が分からなかったと言います。

お身内の進行状況は最悪というわけではありません。

標準治療で根治の可能性が十分ありうるのですから。

なのにCさんがなんど懇々と説得してもお身内は拒否し続ける。

 

理由を聞くと、何冊かのがん治療について書かれた本を見せ、

「手術をしなくても治った例はある、

 抗がん剤が必ずしも最善の効果を出すとは限らないとも書かれている、

 手術も抗がん剤も使わない方法で治療はできるはずだ」と。

 

その何冊かの本は抗がん剤治療を否定し、

民間療法についての可能性を示唆しているもので、

著者の中には医師や研究者といった

医学的知識がちゃんとある人たちが書いたものも含まれているとのことでした。

 

Cさんは言います。

「医療知識を交えながらそれっぽいデータを引用している本もあり、

 素人にはまともな論説に見えてしまうから困る」と。

 

民間療法は圧倒的に科学的な根拠やデータが不足していると言われています。

科学的根拠と偏りのないデータであることは当たり前の大前提ですよね。

偏りのない...数だけでなくデータとして扱える正当性があるかどうか、

被験者や対象が作為的に抽出されたものでは統計として使えません。

 

Cさんのお身内は、その後説得に応じて標準治療を受け入れたそうです。

手術をし、日常生活に戻りながら前向きに抗がん剤治療を続け、

結果は良好だったとのことでした。

 

私も最悪のことを想定して色々調べた時もありました。

標準治療を全てし尽くしてももうダメですねと言われたら、

藁にもすがる思いでキノコでもハーブでも祈祷でも試すかもしれません。

でもやはり最初は標準治療をしていこうと考えています。

そうしていくうちに、

最近よく言われますが生活の質、すなわち

自分がどう生きたいかによって選択肢を模索していくと思うし、

それはその時々の段階で考えていけばいいことだと思っています。

 

Cさんのお身内も、

がんと告知されてそれまでの日常が一変してしまい、

一時的に落ち着いた判断ができる心理状況ではなかったのかもしれません。

 

その人にとって何の治療法がいいかはわかりませんが、

正しい判断ができる状況でない時に決めたことは大抵間違っていたり、

何でそんな風に思っちゃったのかなあ〜と後で後悔することも多いものです。

混乱している時は急いで決断することを避けるべきで、

許される限り1日でも2日でも落ち着く時間を持つことをお勧めします。