3月16日,日本の新幹線に一つの路線が更に延長する形で開業した。



それは・・・



北陸新幹線の敦賀までの延長による開業だ。



2015年に金沢まで開業した北陸新幹線がついに福井県まで突入し敦賀まで延長した。

これまで北陸線経由の特急で移動するしかなかった小松,加賀方面と東海道新幹線回りが基本だった福井県方面までの区間に北陸新幹線が敦賀まで開業したのである。



敦賀までつながった北陸新幹線。


北陸新幹線は高崎から新大阪まで長野と金沢,福井,敦賀を経て日本海を沿う形で向かう。東海道新幹線の緊急時の迂回路としての役割も担い,リニア中央新幹線と共に東海道新幹線のバイパス路線としての役割も担う。


平成9年に開業した当初は高崎から長野までしかなく,この区間は長野新幹線と言われていた。
北陸なのに長野止まり,この区間は金沢まで開業するまでの間,北陸と言う路線に違和感があったが,先行開業した沿線区間では長野と言われるのが普通だった。
一方沿線の富山と金沢方面へは東京からは上越新幹線を使い,越後湯沢駅からは北越急行線経由の特急はくたかを使うのがメインで越後湯沢駅で乗り換えるのが基本だった。また金沢方面は東海道新幹線経由で名古屋もしくは米原から特急しらさぎを使う手もあり,金沢方面は2つの路線でカバーしていた。
一方敦賀,福井,加賀,小松方面,主に福井県方面へは東海道新幹線回りで行くのがメインだった。
先行開業した長野新幹線区間は長野オリンピックの開催を控え,会場へのアクセス輸送にも担う目的で一足早く開業したのである。
また軽井沢や北信方面への利便性と所要時間の短縮にもつながるなど首都圏から長野県までは長野新幹線区間と中央東線の2つの路線が今でもその役割を担う。


そして2015年。


北陸新幹線はついに北陸まで突入し,金沢まで延長する形で開業した。
富山と金沢まで一つの路線がつながり,首都圏から乗り換えなしで一直線で移動できるようになった。
東京から立山黒部アルペンルートや能登まで所要時間が短縮するなどますます近づいた形だ。
それだけでなく長野方面から北陸方面まで利便性が高まり,信州から北陸まで一直線でつながるなど移動時間が大幅に改善された。


富山と金沢までは開業で盛り上がっていたのに対し,冷遇されていたのは福井,加賀,小松方面,主に福井県の嶺北方面が中心だった。
特に福井県方面は東海道新幹線回りで行くのが普通で北陸新幹線は使う必要性はなかった。
いずれの区間は金沢か米原もしくは名古屋でそれぞれ乗り換えが必要だった。


福井までなかなか新幹線がつながらない状態が10年近く続いた。


そして・・・


ついに北陸新幹線は・・・


福井までつながったのである。


敦賀までの開業で福井,加賀,小松方面,主に福井県方面まで一つの路線が乗り換えなしで一直線でつながった。
これまで東海道新幹線回りでは米原か名古屋で乗り換えをしなければならなかったのが北陸新幹線の開業で首都圏からは乗り換えなしで行けれるなど利便性が高まった。また長野方面から福井県方面までの所要時間が大幅に短縮されるなど利便性が高まり,移動できる手段も改善された。
また首都圏から敦賀方面などの嶺南エリアでは北陸新幹線回り東海道新幹線回りのいずれかで行くか選択肢が与えられるが,これから先福井県方面は首都圏からの利便性が高まる事で盛り上がりを見せるに違いない。


その一方で首都圏からの利便性の盛り上がりとは裏腹に逆に冷遇されているのは大阪などの関西圏と名古屋などの中京圏だ。
これまで大阪と名古屋からはそれぞれ一つの特急が乗り換えなしで一直線でつながっていた。
大阪,京都方面からは湖西線経由の特急サンダーバード,名古屋,岐阜方面からは特急しらさぎが北陸方面へのアクセス路線としての役割を担った。
近畿,東海は北陸との交流も深く関わるなど2つの特急はまさに大阪,京都,名古屋,岐阜から福井と金沢までの主要路線である一方,関西圏と中京圏から北陸方面への出張や観光にも幅広く使われ快適に移動するなど利便性が確保されるなどメリットが大きかった。
北陸新幹線が金沢まで開業する前は富山まで行き,立山黒部アルペンルートまで足を運んだり,いずれの特急の一部は七尾線を経由し和倉温泉まで乗り入れるなど能登方面まで直接行く事ができるなどまさに能登方面への直通列車でもある一方,能登方面への連絡便としての役割を担った。


そして北陸新幹線が金沢まで開業すると2つの特急はいずれも金沢止まりとなり,富山まで行く場合は乗り換えが必要となってしまった。
ただサンダーバードだけは一日一往復のみ和倉温泉まで乗り入れるなど関西圏から能登方面への利便性は確保されていた。
名古屋方面の場合,富山まで行く場合は高山線経由のひだ号で行く事ができる為,富山方面への利便性は確保されている。
北陸新幹線が金沢まで開業する前は北陸線経由のしらさぎ号と高山線経由のひだ号のいずれかを選択する事が可能だったが金沢まで開業した後は乗り換えなしで直通で行けれるのはひだ号だけとなってしまったが,それでも富山までは一直線でつながるなど快適に移動する事ができる。ただ一日四往復しかなく本数も限られる。


富山までは高山線経由のひだ号がその役割を担う。


しかし敦賀まで開業すると2つの特急はいずれも敦賀止まりとなり,敦賀乗り換えを強いられるなど関西圏と中京圏からの利用者にとっては大きなデメリットだ。
関西圏や中京圏と北陸との連絡手段が寸断された形だ。
また2つの特急は関西圏や中京圏と北陸との地域間を支える連絡列車として機能するなど関西圏と中京圏から北陸の地域間との交流の架け橋にもなった。
敦賀止まりとなり,関西圏からは一回の乗り換え,中京圏からは一回から二回の乗り換えが生じる。
特に能登方面は関西圏からは二回,中京圏からは二回から三回の乗り換えが生じるなどどんどん利便性が低下するなど大きなデメリットで地域間との交流が断たれてしまった形は否めない。またサンダーバードしらさぎ号に代わる代替的な便が敦賀から富山までのシャトル便であるつるぎ号でこの便がリレーで接続する形だ。


今後関西圏と中京圏からの北陸離れは避けられないだろう。
特に関西圏からの北陸離れは深刻になるのは確実だ。
関西圏は高速バスの本数が少なく,富山と金沢までの高速バスはJRバスを含むと夜行便はそれぞれ2便,昼行便はそれぞれ3便出ているが福井に乗り入れるのはJRバスが運行する便の1便しかない。
競合する京福バスと阪急バス運行便は現在も運休が続いており,運転再開の見通しは立っていない。
そして福井鉄道が運行する高速バスも既に廃止されている。
サンダーバードの代替となる手段もなく完全に北陸との移動手段が寸断されたのもよく分かる。
その要因が乗務員不足で特に京福バス運行便は今乗務員不足が深刻で高速バスは運休の状態が続いている。また東京からの夜行便を含む高速バスも感染拡大の影響とやはり京福バスと福井鉄道においての乗務員不足の影響で廃止となるなど乗務員不足は深刻だ。
関西圏はサンダーバードが北陸への唯一の手段で福井と金沢まで一直線で移動できるなどとても重宝していた。敦賀止まりとなり代替手段がない関西圏は我慢して大人しく乗り換えるしかない。
これでは北陸離れが進んで行くのもよく分かる。


関西圏には北陸新幹線が新大阪まで行く計画が持ち上がっているが,現在も着工の見通しすら立っておらず,開業の目途は立っていない。
敦賀から西側の区間はそれぞれのコースが候補に上がったが最終的には小浜,京都回りと東海道新幹線を経由せず,京都から南側へ遠回りするコースで行く計画が決定しているが沿線の山間のトンネルと高架橋の建設と京都市内の地下区間,そして新大阪駅の地下区間には大きな問題に直面するなど建設計画が今も進まない状態だ。山間のトンネルには環境の変化などの問題や沿線住民からの反対が根強く,その理解が得られていない。そして京都市内では地下水の影響が山積みで京都から新大阪までの区間はどのように整備するのかはまだ具体的に決定には至っていない。


北陸新幹線が新大阪まで開業すれば大阪と京都から北陸方面はもちろん長野まで乗り換えなしで行けれるなど今よりも利便性が高まる。そして関西圏と北陸とのアクセスも改善され,敦賀まで開業する前のサンダーバードのように乗り換えなしで快適に移動でき,北陸まで一直線で行けれるようになる。
そして北陸新幹線の敦賀からの西側の区間はサンダーバードに代わる新たな手段となり,サンダーバードの代替的な役割も果たす事になる。
そして関西圏の北陸離れを食い止める事ができ,敦賀乗り換えで断たれていた関西圏の北陸との地域間の交流の架け橋が復活し,関西圏と北陸との連絡手段がまたつながって行くと見られる。
そして東京から新大阪までは東海道新幹線とリニア中央新幹線と共に3つの路線によって確保され,東海道新幹線が止まった時の迂回路としての役割を担うなど緊急時などに備え,防災面にも強化されるなどリニア中央新幹線と共に代替的な役割を果たすと見られる。
北陸新幹線が敦賀から西側の区間が開業しない限り関西圏と北陸とのつながりは断たれたままで一刻も早い着工と整備と開通が待たされる。
関西圏からの乗り換えの不便と大きなデメリットが解消される日はまだ程遠い。
関西圏からのアクセス改善は敦賀から西側の区間が開業するまでしばらくの辛抱だ。


大きなデメリットを抱える関西圏とは裏腹に中京圏も大きなデメリットを抱えるが関西圏とは対照的にこちらは代替手段が確保されている。


それは・・・


高速バスの存在だ。


中京圏では名古屋の名鉄バスセンターから北陸の主要都市まで高速バスが運行するなど北陸方面への路線が充実するなど北陸への移動の足を確保されている。
名古屋から福井,金沢,富山,そして富山の高岡と氷見までの路線が出るなどしらさぎ号の代替的な役割を果たしている。
福井と金沢へはJR名古屋駅からも出ていて,同じくJR名古屋駅から夜行便も出ていてこちらは金沢と富山まで行く。またミッドランドスクエアの前からは高岡と氷見までの高速バスが出るなど自由自在。
金沢方面のバスは北陸道経由と富山経由の夜行便,そして白川郷経由の便が出るなど利便性を確保。
また福井方面のバスは本数が多く,北陸新幹線が敦賀まで開業する前は一日8本だったのが今は一日10本と2本増発した。
代替手段が寸断された関西圏とは対照的に中京圏は代替手段を確保するなど利便性を維持。
高速バスは乗り換えなしで行けれる為,中京圏は敦賀乗り換えが生じる大きなデメリットがあっても高速バスの存在が福井への利便性を確保するなど大きな役割を果たす。
中京圏と北陸との地域間の交流の架け橋を維持し,中京圏の北陸離れを最小限に抑えられるなど北陸方面の高速バスは中京圏にはなくてはならない存在だ。
特に富山方面は1時間おきに出て,金沢方面は昼間は2時間おきに出ているが概ねほぼ1時間おきに出ている。そして福井方面は1時間から最大で2時間おきから2時間半程度出ている。
特に福井方面は京福バスと福井鉄道運行便が乗務員不足を理由に東京と大阪までの高速バスが廃止されたり,運休が続いている厳しい状況の中でも名古屋発着便はそれぞれ一日2本確保され,増発した後も一日2本据え置かれるなど路線を維持。新たに増発した便は名鉄バスJR東海バスがそれぞれ1本ずつ増やした形だ。
敦賀乗り換えが生じる大きなデメリットが出ても福井への高速バスはしらさぎ号北陸新幹線の代替的な役割を果たすなど存在は大きい。


福井以外でも金沢は名鉄バスと北陸鉄道とJRバス(東海,西日本)が運行し,こちらはすべて一日11本確保されている。
またJRバスは富山経由の夜行便も出ている。
その夜行便で運用した便は折り返し北陸道経由の便で運用するなど夜行からの間合い運用の形で確保されている。
富山は名鉄バスと富山地方鉄道が運行しているが,名鉄バス運行便には名鉄観光バスによる委託運行があり,こちらは実質的には名鉄観光バス運行となるが,今は感染拡大と乗務員不足を理由に一部の便に運休が発生している。特に富山地方鉄道は乗務員不足に悩まされている。
高岡の砺波経由の便は加越能バス,高岡を経由し氷見まで行く便はイルカ交通がそれぞれ単独で運行しているが,こちらも乗務員不足を理由に一部の便が今も運休が続いている。


しらさぎ号北陸新幹線の代替的な役割を担う名鉄バスとJRバスに恩恵があっても北陸のバス会社は深刻な乗務員不足に悩まされている。すべての便が確保されている北陸鉄道も例外ではない。
敦賀乗り換えで大きなデメリットが生じ,北陸への利便性を確保する為に乗務員不足でもしらさぎ号北陸新幹線の代替的な役割を果たす為,本数を確保するなど高速バスの存在の有り難みを感じる。



高岡までの高速バスを運行する加越能バス。
しらさぎ号北陸新幹線の代替的な役割を担う。


敦賀までの開業で首都圏では盛り上がりを見せる一方,関西圏と中京圏では乗り換えが生じるなど大きなデメリットを生み出してしまった北陸新幹線。


これからは北陸エリアの主役に進化を遂げて行く北陸新幹線。


東名阪に大きな格差を生み出したのも事実。北陸新幹線は敦賀までの開業が東名阪に明暗を分けた。
首都圏からのアクセスが一つにつながり,長野からのアクセス改善などのメリットが大きく,これから首都圏や長野と北陸との地域間の交流の架け橋になる事が期待される。
そして関西圏と中京圏の乗り換えによる大きなデメリットが生じ,これらの利用者をどう確保するか課題も残る。


そして敦賀より西側の区間の早い着工と整備を求められるが,どのような計画で行くのか課題も山積みになるなど期待と課題を抱える北陸新幹線。
今後の盛り上がりと課題や整備の進展に期待したい。