平成元年から30年以上に渡り特急ひだ号と南紀号で運用に就き,7月に引退したキハ85系がついにすべて完全廃車となった。



11月に配置されていた名古屋の車両基地でツアー客向けの見学会で6両が展示され,完全廃車前最後の姿を一目見ようと申し込んだツアー客が訪れた。

展示されたのは南紀号とひだ号の富山系統で運用した二次型の展望グリーン車と自販機が備え付けられた方向幕が異なる中間車,車椅子が乗れる広さと車販準備室を備えた中間車,南紀号とひだ号の飛騨古川系統と高山系統の一部(末期は富山系統と連結する便を除くすべての便)の岐阜寄りの先頭車とひだ号と南紀号の増結車で運用していた貫通車,そしてひだ号や南紀号でも運用し,多客期には増結車でも運用していた初期型の普通車展望車とバリアフリー改造をした貫通車の6両で3両編成と2+1連結のそれぞれ3両が2編成揃うように展示された。



展望グリーン車連結の二次型の展望車。
バリアフリー改造の初期型の貫通車。
方向幕が異なる二次型の中間車。こちらは自販機が備え付けられていた。
二次型の貫通車。主に増結車として使われ,ひだ号の飛騨古川系統と高山系統でも使われた。
初期型の普通車展望車。


その見学会を終えた後,最後まで残っていたこの6両は西浜松の廃車置き場へ向け廃車回送され,キハ85系はついに・・・


完全廃車となったのです。



これまで80両で賄っていたキハ85系は美濃太田の車両基地に留置されている初期型の普通車展望車のトップナンバー車と京都丹後鉄道へ移籍したいずれも普通車展望車の4両の合わせて5両を残し,30年以上運用を賄った残りの75両が廃車となってしまった。



まずは普通車とグリーン車合造の初期型の中間の合造車がすべて廃車になり,その後初期型の自販機が備え付けられた中間車も廃車となり,最後まで残っていた二次型の車販準備室を備えた中間車と自販機が備え付けられた方向幕が異なる中間車,そして展望グリーン車が自慢だった二次型の展望車と増結車として使われ,ひだ号と南紀号の主体として使われたバリアフリー改造の初期型の貫通車や増結車として使われたり,ひだ号の飛騨古川系統と高山系統でも使われた二次型の貫通車や増結車として使われた二次型の貫通車のバリアフリー改造車はすべて廃車となってしまった形だ。

ただ初期型の普通車展望車だけは残り,美濃太田で保存したり,京都丹後鉄道で第二の人生を歩む事となった。



初期型のオレンジシート。
初期型のブルーシート。
初期型のグリーン車の座席。
二次型の普通車の座席。
二次型の展望グリーン車の一列シート。
二次型の展望グリーン車の二列シート。


平成元年にデビューした初期型は当初は主にひだ号で運用し,名古屋から高山,飛騨古川,富山まで足延ばしをするなど高山線の主力として支えた。
平成4年には二次型がデビューし,当初は南紀号で運用に就き,紀勢線の主力として支え,特に展望グリーン車が自慢だった。


その後南紀号はグリーン車での運用を一旦廃止し,多客期限定に格下げした後,二次型はひだ号でも運用に就き,初期型は南紀号でも運用に就くようになった。
そして二次型は観光に特化した編成へと変わったのです。


何と展望グリーン車連結の二次型はひだ号の富山系統の便に運用を就く事になったのです。
そこから20年以上晩年まで高山線の主力かつ,グリーン車を連結した自慢の展望車が飛騨路の観光を支えた。


ひだ号では飛騨路の観光と高山線沿線の生活を支え,南紀号では紀州路の観光と熊野古道の散策,そして紀勢線沿線の生活を支えた。


ひだ号と南紀号は臨時便も設定され,特に前者は早朝の宗教臨,名古屋駅には夜中近くに着く便があった高山祭りの臨時便,15号が越中八尾まで延長運転をし,折り返し高山へ戻る運用をしたおわら風の盆の臨時便,夕方の17号が飛騨古川まで延長運転をする古川祭りの臨時便,一時は東海道線の豊橋と浜松まで乗り入れ,高山線内を夜行で突っ走った臨時のひだスキー号,そして前者が乗り入れる高山線には臨時急行ぬくもり飛騨路号,後者が乗り入れる関西線や伊勢鉄道線と紀勢線は臨時特急伊勢初夢号や伊勢初詣号,臨時急行いせ号,そして鈴鹿サーキットでのF1輸送を担った臨時特急鈴鹿F1号,そして後者は白浜まで乗り入れた事もあった。



南紀号で運用を担ったキハ85系。末期はグリーン車連結がなくなり,最短2両での運用となったがセパレートでの運用だった。


初期型はひだ号南紀号でも運用し,4列グリーン車はひだ号はもちろん多客期に南紀号にも連結したが,しばらくしてから南紀号にも本格的に連結し毎日運用するようになったが,末期になると感染拡大の影響で客足が減り連結をしなくなってしまった。
そして余った編成はひだ号の高山系統に着せ替え,ひだ号の名古屋発着便はすべてグリーン車連結での運用となったそうだ。


自販機は初期型と二次型にも配置されるなど,ひだ号と南紀号のサービスを支えた。
そして車内販売も乗り込むなどキハ85系はサービス満載ばかりだった。
ひだ号でしか手に入れられない高山のあんぱんや南紀号でしか手に入れられない松阪牛弁当や松阪牛の牛丼もキハ85系でしか手に入れられないまさにキハ85系の車内販売限定商品だった。


キハ85系はJR西日本管内の富山,大阪,そして紀伊勝浦にも乗り入れるなど北陸と関西地区の輸送にも担った。また高山線や紀勢線の区間輸送や東海道新幹線からのリレー接続,そしてホームライナーの運用も担った。
東海道線の名古屋から大阪までの区間と高山線や関西線,伊勢鉄道線,紀勢線のみならず東海道線の名古屋から岡崎までの区間や中央線,太多線にも乗り入れ通勤輸送にも担った。


これまでにも事故に遭遇したり,大雨や台風などの災害で高山線や紀勢線が寸断された時,キハ85系は区間内に取り残された時もあった。
ひだ号は下呂止まりや全便高山止まり,飛騨古川止まり,高山から富山までのシャトル運用,そしてひだ号すべてが止まったりした時もあった。
南紀号は紀伊長島止まりや尾鷲止まり,熊野市止まりと和歌山県まで乗り入れができなくなってしまった時期もあった。そして全便新宮止まりの時もあった。


特に高山線が大雨で孤立,寸断された時,キハ85系は普通列車として孤立区間を支えた時もあった。


たくさんの経験をこなしたキハ85系。
外国製のディーゼルエンジンを搭載し,東海道線の特別快速と新快速,快速,区間快速と同じ最高時速120キロを出し,東海道線と関西線区間は最高時速120キロを爆走し,高山線の岐阜から鵜沼までと古井駅から上麻生駅までの区間は110キロを爆走した。
自慢の展望車とワイドビューな車窓が見られる大きく広げた窓,そして一段高くしたハイデッカーの座席とワイドビューな景色が見られる観光を特化した車両でもあり,まさにワイドビュー特急の原点でもあった。


そしてキハ85系は新型のハイブリッド特急HC85系が導入されたのを機に置き換えが始まり,随時車両は廃車され西浜松の廃車置き場まで回送される事に。
まずはひだ号から少しずつ置き換えて行き,今年の3月の改正ですべてのひだ号はHC85系に置き換えられ,そして6月には南紀号もすべて置き換えられた。
引退前に高山線と紀勢線では両方向に展望グリーン車を連結した引退記念の臨時列車を走らせた。


そして7月。


キハ85系は30年以上に渡り走り続けた高山線で最後の臨時列車を走らせた。
高山行きは2日に渡り,片方の展望グリーン車を連結し,最終運用となった名古屋行きは両方向展望グリーン車を連結し,30年以上駆け抜けた高山線沿線区間を突っ走り,下呂温泉や中山七里,飛水峡,そして犬山城をバックに爆走する最後の姿を見せ,高山線の運用を終え,最後は東海道線を最高時速120キロを爆走し,名古屋駅に着き,キハ85系はついに最終運用を終えた。
そして車両基地に引き上げる瞬間,東海道線,高山線と関西線,伊勢鉄道線,紀勢線を四半世紀以上駆け抜けたキハ85系は30年以上に終止符を打った。



キハ85系での宴は高山へ行く時の主役だった。


その後キハ85系は随時次々と廃車が本格的に進み,西浜松の廃車置き場へ次々と回送して行き,保有する編成は次々と減ってしまった。


そして最後に残った6両が名古屋の車両基地に留まり,見学会の為に残したのである。


迎えた見学会には訪れたツアー客が最後の姿を見て,高山線と紀勢線の主力とワイドビュー特急の原点となった車両の活躍に功績を称えた。


そして残った6両はついに西浜松へ回送され,キハ85系は完全廃車の時を迎えた。


残された5両のうちの4両は京都丹後鉄道で新たな舞台に立つが,実質2両が京都丹後の地で第二の人生を送る事となる。
そして残りの1両はトップナンバーと言う事もあり,外国製のディーゼルエンジンの搭載,最高時速120キロの実現,自慢の展望車,ワイドビューな車窓などワイドビュー特急の原点と位置付け,これからも保存し残して行く事となった。今は美濃太田の車両基地に留置しているが,雨や台風などで錆びてしまう事から車両は今カバーに被され,錆びから守るよう厳重に保管されていると見られる。今後見学会などで必要に応じて公開されると見られ,ワイドビュー特急の原点と位置付けるトップナンバーの功績は大きく,今後リニア鉄道館へ行くのか,美濃太田の車両基地に留まるのか,他の場所へ展示するのか,今後の動きも気になるとこだ。


こうしてワイドビュー特急の原点と位置付けたキハ85系は30年以上に終止符を打ったが,これからはハイブリッド特急の時代に入り,高山線と紀勢線は新たな時代に突入し始めた。


キハ85系が守り抜いた精神は展望車自体は完全になくなったがHC85系にも受け継がれて行くに違いない。