• 糖尿病治療薬(エキセナチド*2)によるパーキンソン病(PD)治療

 

「エキセナチドによるPD治療」に関しては、ミシガン大学医学部のRoger Albin教授が以下のようにコメントしています。

  • PDにおけるエクセナチドの第3相試験は、純粋に科学的な問題としても、あるいは、臨床医学的な問題としても、非常に魅力的である。
  • エクセナチドには、高齢の患者さんにはすでに広く使われている薬のリパーパシング*3であるという大きな利点があるので、もし、ポジティブな結果が得られれば、臨床の場での実用化が短期間で見込まれるだろう。
  • すでに、エクセナチドは前臨床試験や第2相試験において良好な結果を得ている。したがって、PDの良い動物モデルがないことを考慮すれば、今回の第3相試験で得られる結果から判断しても良いであろう。
  • PDのコミュニティーは、ポジティブであろうがネガティブであろうが明白な結果が得られることを期待している。ポジティブに越した事は無いが、明らかにネガティブな結果が得られたとしても実際には重要である。

 

エキセナチドによるPD第3相治験;多施設共同研究におけるランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験

プロトコール、スケジュールに関しての詳細はBMJ Open 2011, Vijiaratnam N et al.をご覧ください。

 

 

2.エキセナチド(Exenatide)
エキセナチドはアメリカドクトカゲの下顎から分泌される毒液に含まれるペプチド(Exendin-4)であり、医薬品として用いられる。ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストでありGLP-1と同様の作用を持つ。すなわち、膵臓のランゲルハンス島β細胞からの血糖依存的インスリン分泌促進、同α細胞からのグルカゴン分泌抑制、胃からの内容物排出速度の低下などである。
 
 
2017年8月17日付
 
GLP-1製剤、パーキンソン病の運動機能を改善/Lancet
提供元:ケアネット



  
 GLP-1受容体作動薬エキセナチドを中等度のパーキンソン病患者に投与すると、運動機能が改善する可能性があることが判明した。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDilan Athauda氏らが、62例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月3日号で発表した。

エキセナチド2mgを48週間投与、60週後の運動機能変化を比較
 Athauda氏らは2014年6月18日~2015年3月13日にかけて、25~75歳の中等度パーキンソン病の患者62例を無作為に2群に分け、通常服用している薬に加え、一方にはエキセナチド2mgを(32例)、もう一方にはプラセボを(30例)、それぞれ週1回48週にわたり皮下投与した。その後、試験薬を中止し12週間のウォッシュアウト後(60週時点)に最終評価を行った。

 被験者は、Queen Square Brain Bank基準で特発性パーキンソン病の診断を受け、ドーパミン療法によるウェアリング・オフ現象を伴い、治療下の症状はホーン・ヤール重症度分類で2.5以下だった。患者および研究者は、治療割り付けについてマスキングされていた。

 主要アウトカムは、実質的に非薬物治療下と定義される時点(60週)で評価したベースライン(0週)からの、国際運動障害学会が作成したパーキンソン病統一スケール「MDS-UPDRS」の運動機能サブスケール・パート3の変化値に関する両群間の補正後差だった。

エキセナチド群で運動機能サブスケールは1.0ポイント改善
 有効性解析には、無作為化後の追跡評価を完遂したエキセナチド群31例、プラセボ群29例が含まれた。

 0~60週時のMDS-UPDRS・パート3スコアの変化値は、エキセナチド群が-1.0点(95%信頼区間[CI]:-2.6~0.7)と改善を示したのに対し、プラセボ群は2.1点(同:-0.6~4.8)と悪化が示された。両群の補正後平均差は-3.5点(同:-6.7~-0.3、p=0.0318)で有意差が認められた。

 有害事象は、注射部位反応と消化器症状の発現が両群で最も頻度が高かった。重篤な有害事象は、エキセナチド群で6件、プラセボ群では2件報告されたが、いずれも試験による介入とは関連がないと判断された。

 なお結果について著者は、「エキセナチドの陽性効果は、投与期間を過ぎてからも示されたが、エキセナチドがパーキンソン病の病態生理に影響を及ぼすのか、それとも単に持続的な症候性の作用が引き起こされただけなのかは不明である」と述べ、長期の検討を行い、エキセナチドの日常的な症状への効果を調べる必要があるとしている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

専門家はこう見る

パーキンソン病におけるエキセナチド週1回投与の効果(解説:山本康正 氏)-736


コメンテーター : 山本 康正( やまもと やすまさ ) 氏

京都桂病院 脳神経内科 顧問

J-CLEAR評議員

原著論文はこちら

Athauda D, et al. Lancet. 2017 Aug 3. [Epub ahead of print]