既存の医薬品や、開発段階で頓挫した化合物を、
当初の想定とは異なる疾患の治療薬として開発する“ドラッグ・リポジショニング”。
新たな新薬開発の手法として、ここ数年、脚光を浴びています..
一から新薬を創出するよりも効率的にリリースへとこぎ着ける確率が高く、
鈍化した創薬サイクルを活性化させることができます。
適応拡大との違いは…
「抗がん剤を別のがんに使う薬剤として開発するのが一般的な適応拡大だとすれば、
DRは既存薬の作用機序などを解明し、当初の開発意図とは別の疾患領域も対象とする、
よりダイナミックな開発手法だ」(日刊薬業2015年2月16日号より)
ドラッグリポジショニングの
メリットは、
- 開発が早い(安全性試験などの過程を短縮できる)
- 失敗リスクが低い
デメリットは、
- 薬価が低く設定される可能性がある(既存薬扱いになるため)
- 後発薬が適応外使用で市場を上塗りしてくる可能性がある
こうした動きの一方で、課題も少なくありません。
今回のブログの本題はトレリーフの事なのですが
1つは薬価。既存の医薬品が別の新しい新薬として承認された場合、
従来品とは異なる薬価が付くことになりますが、過去にはその価格差が問題視されたケースもあります。
過去には薬価が100倍以上開いたことも
きっかけとなったのは、2009年に発売された大日本住友製薬の
パーキンソン病治療薬「トレリーフ」(ゾニザミド)。
1989年に発売されたてんかん治療薬「エクセグラン」を転用したものですが、
別のパーキンソン病治療薬を基準に薬価を算定した結果、
1mgあたりで見ると111.3倍という高い薬価が付きました。
「トレリーフ」の薬価は一般のメディアでも取り上げられ、
10年度の薬価制度改革では、こうした医薬品の薬価が
高くなり過ぎないようにするためのルールの見直しが行われました。
いくら開発費用が抑えられるとはいえ、
それなりのコストをかけて開発を行う製薬企業側からすると、
既存の医薬品ということで薬価を低く抑えられてはたまりません。
一方、「トレリーフ」の薬価をめぐっては「効能拡大と言えるようなものが、
新薬として登録されると薬価が100倍になるという理屈が全く理解できない」といった意見も出ました。
同じ有効成分なのに大きな価格差が生じることに、患者や医師から納得感を得がたいのも現状です。
もう1つは、後発医薬品の適応外使用です。
ドラッグ・リポジショニングには、長く安全に使われている医薬品が適していると言えますが、
こうした医薬品にはすでに後発品が存在している可能性が高く、
医師が安い後発品を適応外使用することへの懸念は拭えません。
新薬開発のコストは高騰を続ける一方、化合物は出尽くしており、
なかなか新薬を生み出せなくなってきた製薬企業。
ドラッグ・リポジショニングは、こうした現状を打破する手法として期待を集めています。
開発コストが下がれば、これまで市場性の低さから製薬企業が手を出しにくかった
希少疾病用医薬品の開発も加速する可能性もあるだけに、
こうした課題にも早目に手を打っておくべきでしょう。

