冷たい水で
顔を洗う
ふと
鏡の中にいる男と
目があってしまう
指先で
頬をなぞる
鏡の中の男も
同じようにする
「久しぶりだな」
そんな言葉が
自然と口から出る
鏡の中の男は
少し照れながら
はにかむように笑う
いつからだ?
その背に
抱えきれないほどの
荷物を背負っているのは?
いつからだ?
痛みを
すべてその身体に
閉じ込めるように
なったのは?
鏡の中の男は言う
「なに、それだけではあるまいよ」
確かに多くを失ったが
残されたものも
わずかではない
哀しみは増えたが
喜びもまた
この背にはある
痛みはこの身にあるが
それはこの身が在る
確かな証
私が此処に在る
そんな
証なのだ
男は
そう言うと
前髪の白髪を
少し気にして
また 微笑んだ
2014/10/1
HHH