名もない林の中に
そのお店はあった。
都会の喧騒から
少し離れた林の中。
そこから車で30分ほどの場所に
教会の孤児院がある。
シェルドン・クーパーに連れられた
リチャード・ヘンダーソンは
場違いな雰囲気を感じながらも
大きな食堂で大勢の子供たちを前に
困惑していた。
「・・・
孤児院で何をするんだ?」
リチャードは
シェルドンに疑問を投げかける。
「黙っていろ。
すぐにわかる。」
修道女のひとりが
子供たちに声をかける。
「静かにみなさん!
今日はお菓子職人の方たちが
みなさんに美味しいお菓子を
作ってくださいますよ!!
礼儀よくするようにね!」
「・・・僕のことか!?」
「他に誰がいる。」
逃げ出そうとするリチャードの
首根っこを捕まえて厨房に
引きずっていくシェルドン。
「まずはフィナンシェだ。
それぐらいは作れるだろうな?」
「僕に作れないものはない!
やりたくないだけだ!!」
「いいから作るんだ。
話はそれからだ。」
数時間後、
子供たちの食卓には
焼きたてのフィナンシェが
振舞われた。
牛乳と焼き菓子を頬張る
子供たちの姿。
口々に美味しいを繰り返しながら
大量に焼いたフィナンシェは
あっという間に売り切れた。
ボランティアなど
初体験であったリチャードは
こんなにたくさんの子供たちの
笑顔を見たのは初めてのことだった。
シェルドンが
呆然としているリチャードに
囁きかける。
「この子達にとって、
お菓子を食べられるということは
何よりの幸福なんだ。」
「・・・・・・」
言葉を失っているリチャードに
古着を着た男の子が駆け寄ってくる。
「すごく美味しかった!」
リチャードは
生まれて初めて
何の打算もなく笑顔で答えた。
「ありがとう・・・」
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