名もない林の中に
そのお店はあった。
都会の喧騒から
少し離れた林の中。
その都会のど真ん中に
『フライング・ダッチマン』という
バーがあり、その夜
アリス・ペンドルトンは
常連客である
リチャード・ヘンダーソンに
デートの誘いを受けていた。
リチャード・ヘンダーソン。
若くしてこの町にあるお菓子屋、
『マキシム』のオーナーパティシエになった男。
才能があり、人脈があり、
オーダーメイドのスーツを着ているイケメンだ。
そして何より、情熱的な男だった。
「ああ、アリス・・・
君と僕とで情熱的なタンゴを踊らないか?」
そう跪いて懇願するリチャード。
その光景を見て
目を泳がせるレナード。
「な、なにアイツ・・・!
なにやってんの、あのイケメン!!」
「落ち着け。
アリスは客商売だ。
こういう店ではああいう輩の相手も
仕事のうちなんだろう。」
シェルドンが
冷静にレナードをなだめる。
「で、でも、すごくイケメンだよ?
おまけにすごくお金持ちそうだよ?」
おろおろしているレナード。
そこへアリスが
後ろからまとわりついてくる
リチャードを引き連れて
通りすがる。
「レナード! シェルドンも!!
遊びに来てくれたの!?」
無邪気に喜ぶ
アリスにげっそりとした顔で
レナードが微笑む。
「こちらリチャード・ヘンダーソンさん。
この人もお菓子職人だから
ふたりときっと話しが合うわよ♪」
そう言って
リチャードを
レナードたちに押し付けたアリスは
やっと仕事に戻れるという顔で
カウンターに戻っていった。
後に残されたのは
3人の男の
気まずい沈黙だった。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚