名もない林の中に
そのお店はあった。
都会の喧騒から
少し離れた林の中。
7月の最終日。
晴れ渡った空の下で
レナード・ホフスタッターは
ぼんやりと
アリス・ペンドルトンを
待ち続けていた。
11時に、
駅前の大時計の下。
レナードは
約束の1時間前から待っている。
それというのも
早朝からシェルドンに叩き起こされ、
あれでもない、これでもないと
服を着せ替えられ、
挙句の果てに
外に放り出されて
鍵までかけられたからだ。
一方、近くの柱の影から
アリスはレナードの姿を
じっと見ていた。
せっかく早く来て
待ってようと思ったのに。
せっかく新しいサマードレスを
一番に見てもらおうと思ったのに。
せっかく待っている間に
ドキドキしたかったのに。
もうすぐ約束の時間だ。
アリスは、
最後にもう一度、手鏡で
前髪をチェックして
柱の影から飛び出していった。
石畳に、
高めのヒールが引っかかる。
つんのめって転びそうになるアリスを
レナードが受け止める。
「走ったら危ないよ、大丈夫?」
「う、うん・・・」
「手、つかまって」
アリスは
心臓の音をレナードに聞かれないか
ドキドキしながら手をつないだ。
手をつなぐ。
デートの滑り出しには
上々の成果だと
アリスは思った。
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