名もない林の中に
そのお店はあった。
都会の喧騒から
少し離れた林の中。
店の表にある
デッキチェアーでは
7月の夜空を
レナードとシェルドン、
そしてアリスがぼんやりと
眺めている。
「ここでは星が良く見えるのね♪」
アリスが見上げる夜空は、
満天の星々で、まるでお祭りのようだった。
都会のイルミネーションの中では
味わえない夜空だ。
「シェルドンも見ろよ、
ほら! 天の川だ」
レナードは、
星座の位置を把握するのに
一生懸命なシェルドンに指し示した。
「正確な星の場所がわからない・・・
古代人が適当な名前をつけるからだ。
せいぜい理解できるのは『ひしゃく星』までだな。」
星祭の夜。
シェルドンは、
アルタイルとベガの位置を
見つけようと提案し、三人で
夜空を眺めている。
「しかし、なんでまたその星なんだ?」
レナードが、
素朴な疑問を持つ。
「アジアの節句だよ。
『七夕』という風習でね。
一年に一度、ふたつの星が出会うんだ。」
「知ってる! ロマンチックよね♪」
屈託もなく、アリスが
喜んでいる。
シェルドンは、
とうとう、どの星かわからずに
厨房からケーキを持ってくる。
それに合わせて、
レナードは濃い目の珈琲を
淹れてきた。
「一息いれよう。」
「わ♪ 今日は何?」
「ミルフィーユだ。
フランス語で『千の葉っぱ』を意味する。
基本的にはパイ生地で
クリームをはさんだものだが、
このケーキは非常に食べ方が難しく・・・」
シェルドンの言葉を最後まで聞かずに
さっさと食べ始める、アリスとレナード。
「うーん、美味しい♪」
「このクリーム、濃厚だな」
ふたりはほっぺたに
クリームをくっつけながら
不器用に食べていく。
あきれ返るシェルドン。
「だから難しいと言ったろ?
ケーキを横に倒した方が
クリームがはみ出さず、
綺麗に食べれるのに。」
「気にしない、気にしない♪」
「シェルドン、珈琲はどうだ?」
「無論、いただこう。」
星祭の夜。
三人の頭上では
アルタイルとベガが
優しく輝いていた。
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