名もない林の中に
そのお店はあった。
都会の喧騒から
少し離れた林の中。
突然、現れた客人、
アリスが苦い顔で珈琲を
見つめている。
なんとも気まずい雰囲気だ。
レナードは新聞を読みながら
自分用の珈琲を一口飲んだ。
「ねえ! ケーキはまだなの!?」
「いまシェルドンが作ってるよ・・・
ま、まあ外は雨だし、そんなに急がなくても・・・」
「あたしは今、食べたいの!
それなのにあの男…
菓子職人だかなんだか知らないけど偉そうにっ!!」
「あの・・・ アリスだっけ?
シェルドンのことは謝るよ・・・
あいつは接客には慣れてなくて。。。
でも、菓子職人としての腕は確かだよ。」
「味なんかどうでもいいわ・・・
甘くて、デブになれればね・・・」
「・・・そりゃグルメだね・・・」
窓の外の雨が
より強くなっていく。
「あたしは・・・」
アリスがポツリと呟く。
「彼と結婚まで考えてた・・・」
レナードは、
何も言わずに新聞に目を落としている。
「なのに、彼にとっては遊びだった!
ほんと、馬鹿みたい・・・」
レナードは、
何も言わず珈琲に口をつけた。
「ごめんなさい・・・
騒がせちゃったわね、もう帰るわ。」
アリスが席を立とうとした時、
レナードが立ち上がり、
お茶請けのシュガーパイを
差し出した。
「帰る前に、一口食べてごらん?」
アリスは
そっとシュガーパイを
口の中に入れた。
サクッという音とともに
口の中で溶けるような
パイ生地。
あっさりとした甘みと
優しい香りが広がる。
突然の食感に
アリスは驚いて目を丸くした。
「保証するよ・・・」
レナードは
ニヤリと笑って言った。
「アイツの焼きたてはもっと美味い。」
アリスは、
大人しく席に着いた。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚