「台湾の都市ルネサンスはどこに向かうのか」
日本の建築家の揃い踏みは何を物語るのか
太平洋戦争後75年。経済的には世界に大きな影響力を発揮してきた台湾。
しかし、アメリカも日本も超大国にのし上がった中国の顔色を窺って、
台湾を独立国としての認知をしないまま今日に至っている。
そして世界の多くの小国は、尚更中国の経済力の前に逃げ腰であり、
国連も力と票に無力さをさらしている。
2013年鹿島出版会から出した樋口正一郎著「アジアの現代都市紀行」は
東アジアの爆発的な経済発展とそれに呼応した都市の動きを捉えようとした。
各国の代表的な9都市の中でも貧弱だったのが台湾/台北であった。
中国の吸収合併の政策に蛇に睨まれたカエルのように、身を竦めている感じがした。
台湾の政策転換は
中国が北京オリンピックを通して世界へ発信した圧倒的アピールだったろう。
かつてEU統合時、仕事や生活条件の良い国、都市への国境の往来が自由になった時、
国や都市の空洞化が起こった。
台湾も空洞化を起こさないためにもアクションが必要になったのは当然である。
そこには小国が多く集まるヨーロッパで
大国の圧力に屈しない組織づくりは台湾でも参考にしたに違いない。
台湾都市ルネサンスの中心高雄が
東南アジアに開かれた文化都市を目指したのは当然だった。
世界に知られるコンテナヤードの高雄は湾岸に沿って、
音楽や美術そして博覧会場、大型客船ターミナルなど
産業都市から文化都市に変革し、世界中から集客しようとする。
高雄市立図書館総館/設計:姚 仁喜(クリス ヤオ)、伊東豊雄、2014
高雄国家体育場/設計:姚 仁喜(クリス ヤオ)、伊東豊雄、2009。施工:竹中工務店
そういったときに上海・浦東やドバイといった
「力の誇示」、「権力の象徴」を表現した都市建築を拒否した
創造性溢れる伊東豊雄をはじめとする日本の建築家に行きついたのではないか。
そして高雄「衛武営国家芸術文化センター」の設計で世界の注目を浴びた
オランダのメカノーに対しても東インド会社を通して小国の生きる道を学習し、
その根本にある創造的なアクティビティには共感をもっていたのだろう。
フランシーヌ・フーベン(メカノー)/高雄市/衛武営国家芸術文化センター、2018
チベットや新彊ウィグル自治区、香港特別行政区を見るまでもなく、
中華思想の亡霊が息を吹き返している。
台湾は世界へまず中国との決別宣言をアピールすべき時である。
それには、隷属しない自由主義国家を目指し、
誰にも分る表現の都市づくりを踏み出したことは大きな一歩である。
台湾が明確な宣言に踏み出さず、
そして世界中から人を集め、都市や国全体を見てもらわないことには、
世界中の人も賛意と賛同とサポートは出来ない。