真夏にコレッリの音楽をただ一人汗を流しながら聴いている。amazonでCDが800円代だったから衝動買いしたものなのだが、コレがなかなか良いのである。ヤフオクで昔のコープマンらのコレッリの録音を逃してしまい悔しかったので、ライブラリーから引っ張り出してきました。2012年頃の演奏で新しい、パトリック・コーエン・アクニーヌらによる演奏。ニケやクリスティの団体でリーダーをやっていた人でそれなりに有名人のハズだが、この録音を聴いた人って日本中にどれくらいいますかね…(汗)
コレッリというとひたすらイ・ムジチに代表される昔ながらの鈍重演奏か、コープマンやクイケンらに代表されるこれまた形式ばったスタイルのものが未だに定番とされている位で、近年の過激バロックブームの中にあってもひたすら低い地位に甘んじていた、と思う。シンプルで優美な魅力もあるのだが、現代人にとってはちょっと退屈、そう思っていた時期が僕にもありました。このCD、それほど録音が良いとは思わないし選曲もそれほど好みではないのだが、なんとソナタの数々がヴェネツィアン・ピッチ(A=441前後)で演奏されているのが特徴なのだ!!コレッリといえばガチガチのローマ教会直属の守旧派作曲家で、ピッチはA=415というのが常識中の常識ではなかったか?まるでモダン楽器のような甲高い響きで、神秘的で古色蒼然とした従来のイメージと違いすぎるのだが、ライナーにも何の記載もないのでどういう意図でこういう演奏を出してきたのか分からないのが残念なところ。コープマンやバンキーニといった人々への挑戦状だろうか?
以前某匿名掲示板でピッチについての議論を散々したことがあるのだが、結局どんな良い楽器を使ったとしても音楽の印象を決めるものはまずピッチだと思い知らされるものだ。20世紀はあまりに画一的な絶対音感などという虚妄が信じられていたが、アコースティック楽器を使った古い音楽こそそのような画一性とは無縁なのは、ニケやビオンディなど優秀な音楽家の演奏に親しんでいればすぐに分かること。我々はこだわりを求めているとか意識高い系とは無縁なわけです。ただただ面白いものを求めて古楽レーベルに辿り着いたという。
で、ヴィヴァルディみたいなピッチで演奏されたコレッリはどうだったかと言うと、中々面白いとは思うものの、ちょっと違うかなという印象。ソロのために作曲されたOp.5からの曲は違和感が無いのだが、トリオソナタで同じ事をやられると、ちょっとギスギスした印象になってしまう。
むしろフランスの演奏家陣だからかは知らないが、付録のクープラン「コレッリ讃」の方がはるかに安心して楽しめるというのが正直なところ。こちらは普通のA=415のローマピッチで演奏されている辺り、なんだか妙な気分になります。今の時期のような気分が乗らない時は、コレッリのような穏やか~な音楽が無性に聞きたくなるもんです。皆さんも是非。