映画「花よりもなほ」見ました。
岡田准一を語るなら、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞したというこの作品を見なければ語れない、と思ったからです。
この作品で岡田准一はブルーリボン賞の主演男優賞にもノミネートされ、「武士の一分」のキムタクもノミネートされていたこともあり、双方辞退したので受賞には至りませんでしたが、2006年この年は、二宮君の「硫黄島の手紙」出演もあり、ジャニーズの高い演技力も注目された年ではないでしょうか。

このころの岡田くんはまだ格闘技を始めたかどうかの頃かなと思います。
2008年にSPのドラマが放送されて、ドラマ出演決定の一年以上前から道場通いを始めたそうですから、微妙な時期ですよね。

この「花よりもなほ」で岡田君が演じるのは、教養はあるけど剣の腕は滅法弱い、江戸で父のかたきを探す若侍です。これ以上ないほどの貧乏長屋に住んでいます。
時代は綱吉の治世。忠臣蔵の頃です。
芸術的な映像のアプローチからこだわり抜いた演出で淡々と物語が進んでいきます。
カラーなんだけど、画面が暗いせいかな、白黒映画の時のような味が画面からにじみ出てるような気がします。監督は是枝監督です。

共演者が豪華。
貧乏長屋の面々には、
木更津キャッツアイでのオジーこと古田新太。
SP映画版で共演の香川照之。
真田丸出演の寺島進。
そして、岡田君の恋のお相手は宮沢りえです。
なんかこのころの岡田君の出演作見てると古田新太率高く感じちゃうんですけど、
今はすごくピエール滝率高い気がします。
軍師官兵衛でもエヴェレストでも、今度海賊とよばれた男でも共演しますからね。
長屋の面々はほかにも濃いキャストばっかで、それだけでも見ごたえあります。

また、このお話、ちょこちょこ忠臣蔵で有名な面々が出てきて、
キャンディクラッシュCMで共演の遠藤憲一、
軍師官兵衛で荒木村重を演じた田中哲司なんかがキャスティング。
極めつけは、岡田君のかたき役が浅野忠信。
なんか、今とのつながりを配役に感じたりしちゃいました。

劇中、岡田君はからきし弱いのに、強そうなメイク(←これがまた笑える。声もあんまり聴いたことないような声出しちゃって)で、町人に身をやつしてる忠臣蔵の侍たちとたたかう羽目になりそうになり、脱兎のごとく逃げ出すシーンがあるんですが、これがまた、早い早い(笑)。
追いかける遠藤憲一たちの倍くらいの速さで足動いてます。マジで。(笑)

同じ長屋に住んでる訳アリのやくざ者加瀬亮にボコボコにされてトイレにぶち込まれるシーンもあるんですが、このやられっぷりも見事。
永遠の0で殴られてるシーンを思い出しちゃいました。なんか、やられてるのにキレがあるという。(笑)
このころもう殺陣の心得とかあるんでしょうかね。
ケンカするときぼうっきれを構えてつっかかっていくとき、腰が据わっていて、かまえがすでにカッコいい。全然弱そうに見えませんでした。
でも、刀を振り下ろす動作が美しいのに、無理やり負けてる感を出してる感もなく、負けちゃう自然な感じ、不思議に感じました(^^)。

そういえば、キムタクと岡田君の共演は2001年の「忠臣蔵1/47」でした。
キムタク演じる堀部安兵衛に大石内蔵助の息子、大石主税として剣の教えを乞うてましたね。
このころから殺陣の稽古とかしてたのかもしれませんね。

劇中、碁を打つシーンが出てきます。
けっこうターニングポイントになるようなシーンが多いんですが、映る指先が美しくて。天地明察を思い出しました。
天地明察も、腰に刀もさせないほど弱い侍の役でしたけど、その時は、ほんとに弱そうに演じてました。逆にその頃は鍛えてて殺陣もうまくなってると思うのに、また不思議。

それから、子供との触れ合いのシーンが多い映画かもしれないですね。
寺子屋で、子供に手習いを教えていたり、濡れた着物を着換えさせたり、なんか、そういう時の手つきがとても優しくて。
なんか、子供好きなんだけど、子供と一緒に遊ぶのは得意でも面倒見れない男性もいるじゃないですか。
けど、なんかもう、岡田くんは手つきが保護者(笑)。
映画見ながら感情移入しちゃって、「早く宮沢りえと結婚しちゃいなよ~、子供が喜んで迎えるパターンだよ、コレ、いいパパになるよ~」とか思いながら見てました。

このころの岡田君は、強さより繊細さや儚さを求められてのキャスティングだと思います。
絵面は完璧です。
容姿は美しい。
けれども、それだけじゃなくて、いるだけで醸し出す味のある風情があって、それはやはり主演のものなんですよね。
他のキャストもすごい人ばかりなんだけど、そういう人が支えてこその主演なんでしょうが、やはりまとう空気がひとり美しいんです。
どんなに貧乏してても立ち居振る舞いや居住まいが美しい。
遠目に見ても、どの角度でも語るんです。
そのうえ、画面いっぱいのアップになってもどの表情もセリフになってます。
黙っていても、言葉にならない感情がしっかり見ている人に伝わってくる。
岡田くんのセリフは少ないですが、語る感情はものすごい量です。

その頃、番宣でしょうか、宮沢りえと「とんねるずの食わず嫌い決定戦」に出てるの見たことあるんですけど。
いわゆる美人期の岡田くんです。
相手が好きなもの食べてるか嫌いなもの食べてるか、表情をじっと見守るわけじゃないですか。
岡田くんに対して宮沢りえ、とんねるずが降ってる話題を一瞬無視してつくづく
「きれいな顔してますよねぇ…」って。
共演するとよけい感じるのかもなぁ、なんて思います。

軍師官兵衛の時、柴田恭兵が「岡田君はリアクションの心が本当に美しい」って言ってました。
共演する人も、一緒に演技してるときの岡田君の演技の受け方が、ほんとに美しいと思うんじゃないでしょうか。
なんかすごく邪心なく演技し返す人だと思うんですよね。
相手が心打たれるほど。

格闘技に目覚めてない、演技にスポットライトを当てて岡田准一を見ると、やはり心を打つ演技をする人だったんだなぁ、と再確認したような気がします。
今度はどうにか「ホールドアップダウン」を見てみたいですね。キリスト岡田准一(笑)。
「フライ・ダディ・フライ」はもう見ましたけど、「東京タワー」のころと撮影期間が重なっており、昼間はフライ、夜は東京タワーという撮影もあったみたいですね。
東京タワーとフライは全然違う人なんだけど。
美しさの両極端を見せられてる感じです。
東京タワーもじっくり見てみたい。おそらく岡田君唯一のベッドシーンがある映画じゃないでしょうか?不倫ものにもかかわらず、東洋のジェームスディーンを見るつもりで年配の男性も見たという映画です。
旦那と一緒に見れるかな~(^^;)。

とにもかくにも。
「花よりもなほ」
武士として、桜のように潔く散る生き方もあるが。
花よりもなお大切なもののあるこの世ではないか、という是枝監督の語り掛けが、岡田君の最後の笑顔で胸にしみわたる映画でした。