今夜は仕事を終わらせて日付が変わる前にジェジュンの家に行く約束……だった。
だったっていうのも正しく今、それが不可能になってしまったから…。
明日は俺の誕生日。
毎年時間の合間を縫ってでもジェジュンは俺の誕生日を盛大に祝ってくれる。
『ユノが生まれてきてくれたこと、俺も一緒に感謝したいから』
ジェジュンはいつもこう言って微笑む。
『だから自分の誕生日より大切なんだ』って幸せそうに微笑みながら俺に抱きついていたのが昨年の誕生日。
すごく幸せだった。
そんなジェジュンがすごく愛おしくて愛おしくて仕方がなかった。
だから毎年こうして過ごせますように…って二人だけで誓い合ったんだ。
もちろん例外に無く今日の日をすごく楽しみにしていたジェジュンからついさっきまで『今日は何時に終わりそう?』『準備は着々とできてるよ♡』『いっぱい作り過ぎちゃったー♡』というメールがどんどん届いていたのだ。
なのに……
「ヨボセヨ?ジェジュン…」
「ユッノー!ちょうど今ね、ケーキ焼いてたんだー!ユッノの大好きないちごのタルトなんだよー!」
電話に出るや否や嬉しそうなジェジュンの声に更に胃が沈み込む思いだった。
「ふふっ、でもね、実は買い物の途中に可愛いケーキがあってついつい買っちゃった!だからケーキが2個になっちゃっ…」
「ジェジュン、その…」
嬉しそうなジェジュンの声を聞いているのが辛くて、話の途中でジェジュンの名を呼んだ。
「…?どうしたの?」
少しだけ曇った声。
俺は一度眉間を指で抑えてから、ゆっくりと口を開いた。
「仕事が…長引きそうで今夜は行けそうにないんだ……」
ゴトッ――――――
「…………」
何かが落ちた音が聞こえたけどジェジュンの返事はない。
「ジェジュン…?」
そりゃそうだろう。
怒られたって仕方がない。
1週間前から何度も『約束の日、大丈夫だよね?』って嬉しそうに俺に聞いていてくれたのに。
もちろん俺だって楽しみで楽しみで仕方がなかった。
俺だって会いたかった。
「ジェジュン…ご…」
「だ、大丈夫だよ!そっか、仕方ないよね!仕事頑張って!それじゃぁ!」
プープープープー………―――――――
無理に元気に取り繕った声で言い切った後、そのまま一方的に切れてしまった。
「はぁ…」
無機質な音が響く携帯を耳から外してそのまま溜息を吐いて項垂れていると後ろから声を掛けられる。
「誕生日なのに悪かったな。用事、大丈夫か?」
マネージャーが項垂れる俺を見て心配そうに声を掛けてくれたが俺はプロだ。
いくら用事があったって、たとえ、それがジェジュンだって…、俺は仕事を優先しなければならない。
だけどごめん。
ごめんジェジュン。
あんなに嬉しそうな声をしてたのに。
次に会った時、めいいっぱい抱きしめてやるから…。
マネージャーに微笑みかけた後、ジェジュンとの揃いのリングにこっそりとキスをした。
そして楽屋を出るマネージャーの背中に声を掛けた。
「あ、マネージャー一つだけお願いが…」
***************
そりゃひどいもんだった。
ユノヒョンといるはずの時間に電話が掛かってきたこと自体驚きだったけど、電話を取るや否やぐすぐすと泣き声だけが聞こえて困惑した。
何度名前を呼びかけても嗚咽交じりの声しか聞こえなくてとりあえず急いでジェジュンヒョンの家に車を走らせた。
インターホンを押すと、伸ばしたニットの袖を目に当てながらドアを開けてくれた。
「ヒョン…どうしたの?ユノヒョンは?」
「っ、ぅっぅう…、ふぇ、えぇぇん…ユチョンー…」
あーあーあー、金髪刈り上げアラサーがぐずぐず泣いちゃって。
俺はジェジュンヒョンの肩を抱きながらリビングへ連れていきソファに座らせた。
「どうしたの…」
って聞いたところで、テーブルの上に所せましと並べられた料理やケーキを見てなるほどと一人頷いた。
「よしよし」
まだ俯いてしくしくと泣いているヒョンの頭を撫でてやってから、俺はコーヒーを淹れようとキッチンへ向かった。
食器棚の中央にあるお揃いのマグカップ…は、使わずに違うマグカップを手に取った。
「はい、飲んで」
「…。」
俯いたままコクリと頷きそっとマグを受け取るヒョン。
一度ズズっとコーヒーを啜ったあと、手の中のコーヒーを見つめたかと思いきや更に酷くうわぁぁぁんと泣き出した。
「うわぁぁぁん!こ、これ…ユノが買ってきてくれたマグ…」
「…あ、ごめ」
どーりでこのマグだけセンスが悪いと思った。
明らか食器棚の中で浮いてたからね。
ヒョンの向かい側のソファに座って泣き止むまで待った。
俺に出来ることはこうして何も言わず一緒に居てやることぐらいだし、むしろヒョンもそれを望んでると思ったから。
ま、泣き止むまで2時間かかったんだけどね。
途中、俺寝てたからね。
「ユチョン…」
「…ふぁっ!?あ、ぁ、何?」
「ごめんね、ユチョン、撮影で疲れてるのに…」
「いいよ、いつものことじゃん。慣れてるよ」
「うん」
すっかり目が赤くなったヒョンに冗談ぽく言うと、少しだけ笑ったことに安心した。
「まー、俺が言えることなんて何もないけどさ、悲しまなくても大丈夫だよ」
「…うん」
たぶん、っていうか、ジェジュンヒョンもほんとはわかってるんだよね。
泣いたって仕方がないこと。
だけどこうしていつもいつも泣いちゃうのは、彼の弱い部分でもあり可愛い部分でもあるんだよね。
「はは、俺には見えるよ。今、必死に仕事してるユノヒョンの画が」
大きなジェスチャーをつけておどけてみせて言うと、ジェジュンヒョンはいつものあの口を隠しながら笑う仕草をした。
「そうだ、ジェジュンヒョンが眠るの見届けてから帰るよ」
俺の提案にヒョンは驚いていたけど、まぁまぁと言いながらヒョンをソファに横たわらせた。
「ユチョン、俺もう一人でも…」
「いーからいーから」
いつも面倒見のいい母親みたいなヒョンもたまには甘えたっていいんだよ。
ま、ユノヒョンの前では存分に甘えてるだろうけどね。
ぽつりぽつりと他愛のない話しをしていると、しばしの沈黙ができふと見てみるとヒョンはすっかり眠っていた。
「おやすみ。いい夢を」
カシャ―――――
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「お疲れ様でした!」
やっと仕事が終わった。
終わるや否や急いで楽屋に向かう俺に、すれ違うスタッフたちが誕生日おめでとう!と掛けてくれた声に笑顔を返しながら上着も着ずに鞄を掴んでビルを出た。
地下に停めてある車に乗り込みエンジンを掛ける。
深夜の冷え込みで霜のはったフロントガラスが溶け出す間、ランプが点灯した携帯を手に取ると数々のおめでとうのメールの中にひとつ、ユチョンからのメール。
『ユノヒョンおめでとう~。お姫様が待ちぼうけだよ~』
そして添付されていたのはジェジュンの寝顔の写真。
目尻が赤くなって少し疲れた顔をしている。
そしてジェジュンの手には俺が前にプレゼントした揃いの指輪。
きっと泣きはらしたんだろう。
俺と会えないことをこんなに残念に思って一人で泣いてしまう可愛い俺のジェジュン。
ひどく心が締め付けられる思いと共に、今すぐにでも会って抱きしめてやりたい衝動に駆られる。
はやる気持ちを抑えながらディスプレイにキスをして俺はハンドルを切った。
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あったかい…。
一人で眠るときはいつも寒くて寂しいのに、今日はなんでこんなにあったかくて落ち着くんだろう…。
ユノの匂いがする…
髪…いつもユノが優しく髪を梳いてくれる感触…
感触…?
「ん…」
「ジェジュンア…」
「ユ、ユノ!?」
気付けば俺はベッドでユノに抱きしめられるようにして横たわっていた。
見上げるとそこには優しいユノの顔。
「遅れてごめん。もう夜明けだよ…」
「ユノぉ!!」
まるで子供みたいにユノにしがみついて胸に頬ずりをすると、ユノははっと笑って更にぎゅっときつく抱きしめてくれた。
「ほんとごめんなジェジュン…」
抱きしめた俺の髪を梳いて何度も謝るユノ。
そんなに謝らないで。
俺こそごめんね。
「ジェジュン」
ユノに抱き着いたままの俺をそっと優しく離してベッドに座らせると、ベッドの下に手を伸ばして何かを取ろうとしている。
「はい、これ」
ばさっと渡されたのは真っ赤なバラの花束。
驚いたまま固まっていると、ユノがポリポリと頭を掻いた。
「こんなので埋め合わせしたつもりじゃないけどさ…、俺からの気持ち。あと…」
もう一つ渡されたのは小さな箱。
「開けてみて」
ユノに言われるがままその小さな箱を開けた。
「ユノ…!!」
中には2つのリング。
「な、なんで!?」
少しだけサイズが違うその2つのリングは、もちろん俺とユノのものだ。
「なんとなくだよ。ただ、ジェジュンと繋がってるって思えるものが沢山あってもいいかなって…わわっ!」
テレビや雑誌で見るユノとは違う、男らしくてかわいいユノ。
抱き着かずにはいられなくて俺はぎゅっとユノを抱きしめた。
「もう…なんで?ユノの誕生日だよ?これじゃ俺の誕生日みたいじゃん」
「はは、でももちろんお返しはもらうつもり」
「お返し?」
「うん。お返し」
そう言ってユノはゆっくりと優しく俺を組み敷いた。
俺はユノの首に腕を回したままユノの男らしい顔に惚れ惚れしながら見上げた。
「いっぱい、お返しもらうから」
もう、俺だったら無条件であげるのに。
ユノのキスが降ってくると同時に目を閉じた。
「あ、ユノ…でも待って」
キスが深くなる前にそう言うと、ユノは不思議そうに俺の瞳をのぞき込んだ。
「リング…嵌めてよ」
「あぁ」
もうすでにしわくちゃになったシーツの上で、二人向かい合って座って互いにリングを嵌めあった。
ユノから俺に。
そのあと俺からユノに。
二人だけの儀式のあと、なんだか照れくさくなって額を寄せ合って二人で微笑んだ。
「んっ、ぁっ…ユノッ…あ、ぁっ」
深く深くにユノを感じる。
ぴったり合わさった肌はしっとりと濡れていて、その度に生きてるんだって実感する。
今日のユノは優しいだけじゃなかった。
なんだか余裕がない。
だけど少し乱暴にも感じるその素振りが俺を高揚感に浸らせる。
「ぁっ、ゆ、のっ、あぁッ!んっっぁ、ぁっっ!やっ、ぁっ」
乱れたユノの髪。
毛先から滴る汗でさえも愛おしくて、俺の顔に落ちたその水滴を指でなぞった。
厚い胸に手を沿わせてそのまま背中に腕を回す。
一瞬でも離れていたくないから脚はユノの腰に絡めて。
ユノが穿つ度に何度もナカに出されたユノの液体が溢れ出ていく。
その感覚ですら寂しくてきゅっと力を込めるとユノが少し微笑んだ。
「大丈夫、これからもずっと一緒だから」
その一言で涙が溢れた。
そのたった一言で。
両手で顔を覆ってしまった俺の額にユノが優しくキスをしてくれる。
「ジェジュンア、泣かないで…大丈夫だよ」
「ッ…、うん、うんっ」
ユノが『大丈夫』って言うならきっと『大丈夫』なんだと思う。
俺はいつだってユノの『大丈夫』を信じてここまで来たから。
ユノが笑ってそう言ってくれるから、俺はここまでこれたんだから。
「ジェジュンア、愛してるよ」
こんなに優しい声で、こんなに優しい瞳で、こんなに優しい手で、こんなに優しい言葉で俺に笑いかけてくれるユノ。
神様、ありがとう。
こんなに大切な人とめぐり合わせてくれて。
ユノを愛してると同時に、この世界のすべてに感謝しなきゃいけないね。
だって、奇跡だから。
ユノと出会えたコト。
「ユノ、ありがとう。愛してるんだよ。俺もずっとずっと愛してるよ」
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二人は無事に会えたみたいだね。
ユノヒョンからのお礼のメールを見てほっとしたよ。
『ユチョン。メールありがとう。ユチョンも身体に気を付けて。
P.S. 俺の方がうまく撮れてるだろ?』
その下には幸せそうに微笑んでいるジェジュンヒョンの寝顔の写真。
俺への当て付けのようなその写真に思わず笑ってしまった。
「張り合わなくたってユノヒョンには勝てないっつの」
ユンホさんhappy birthday!!!!!!!!!!!!
世界中見渡してもあなたのような男はいません!!!!
ジェジュンと幸せになってください!!!(←え?)