「ジェジュン!」
どんなに人が多くたってジェジュンをすぐに見つけてしまう。
ポケットに手を突っ込んで柱に凭れていたジェジュンに走り寄っても、俺の気配に気付かずマフラーに顔を埋めてぼーっと足元を見つめている。
「…ジェジュン?」
少し顔を覗き込んで声を掛けると、ジェジュンははっと我に返って顔を上げた。
「あ…な、なんでもない。行こう」
「あぁ」
仕事で辛いことでもあったんだろうか。
まるで傷付いたような顔をしていた。
何かあった?って聞こうかと迷ったけどジェジュンは俺に話しかけさせないオーラを纏いながらそのままツカツカと歩いて行ってしまった。
ジェジュンに案内された店は少し洒落た店だった。
気取ってるわけではないけど洗練された店内はジェジュンらしくて、お気に入りの店に連れてきてくれたんだろうかと思うとまたそれだけで嬉しくなる。
通された個室は少し広めで、俺はジェジュンの前に腰掛けジェジュンの表情を伺った。
今日のジェジュンは明らかに様子がおかしい。
何ひとつするにも少し戸惑った様子で…。
今だって上着も脱がずに何か思いつめた様子でちょこんとソファに座ってるし。
この間のこともあるし、今日のジェジュンを見ていて心配せずにはいられない。
「ジェジュン…?なにかあっ…」
「こんにちはー。」
ジェジュンに声を掛けたその時、すぐ横の扉が開かれて数人の女性が入ってきた。
驚いて見ていると、ジェジュンは女性たちを手招きしてソファに座る様に促している。
何が起こっているのかわからなくて、ただ茫然と目の前にいるジェジュンを見てもジェジュンは一切俺の方を見ることはない。
それどころかついさっきまでのジェジュンの雰囲気は無くなり明るく振る舞っていた。
「…ジェジュン?」
「ほら、こっち座って。あ、ユノの隣にも」
女性たちは芸能人のような着飾った子ばかりだった。
今の俺の神経を逆なでするかのような甘い香水と愛嬌をまき散らしながら俺の隣に寄り添って座る。
無意識に身体を離してこの理解しがたい現状を問うかのようにもう一度ジェジュンを見た。
今日はジェジュンが誘ってくれたはず。
それを俺は喜んで…
「ジェジュン!」
俺を一切見ないジェジュンを力強く呼ぶと、ジェジュンはやっと俺の目を見た。
そしてこう言った。
「ユノに女の子紹介するよ。…みんな可愛いだろ?」
ジェジュンの言葉に俺は一体どんな顔をしていたんだろうか。
酷く傷付いた顔をしていたのかもしれない。
だって、俺にこんな仕打ちをしておきながら俺の目を見たジェジュンの瞳が揺れたから。
「悪い…」
そう言ってジャケットを掴んで俺はそのまま部屋を後にした。
胸が痛くて息が出来ない。
自分がしっかり歩けてるかさえもわからない程に。
吐き気を覚えるほどに腹の底から怒りが込み上げる。
だけど、何に対しての怒りなのかさえもわからずにただ混乱した。
ジェジュンにあんなことをされたから悲しいわけじゃない。
結局は叶わない恋なんだと思い知らされたから悲しいわけじゃない。
ただ、俺は空しいんだ。
店の外に出て冷たい外気が俺の身体を包んだ。
だけど寒さなんて感じないどころか、冷たくなった俺の胸もこの寒さのせいにできるような気がして有り難いとさえ感じる。
ついさっきまでジェジュンと歩いていた道を俺は一人で歩き出した。
冬をカラーで彩るクリスマスの灯りが今はただ残酷に輝くだけ。
「ユノ!!」
もう聞くこともないと思っていた人の声に呼び止められ、思わず足を止めてしまったが振り返ることはなんとか堪えた。
「ユノ!」
数メートル離れたところで俺を呼ぶジェジュン。
一体何のために?
今更俺に何を言う必要がある?
ポケットに突っ込んだ手をぎゅっと握りしめて、振り返らずに唇を噛み締めた。
二人の間には沈黙しかない。
怒りさえ溢れ出てくるこの俺の感情をもう弄ばないでくれ。
「…悪かったよ。俺が悪かった。だから、もう全部忘れてくれ、ジェジュン」
やっとの思いでそう伝えたのに、こともあろうかジェジュンは走り寄って俺の腕を掴んだ。
その行動に驚き、思わずジェジュンを見てしまった。
それはまるで縋るような手で、それを目にした途端に腹の底でドス黒いものが渦巻きだしたのを感じた。
俺は拳をぎゅっと更にかたく握りしめて、必死に感情を押し殺す。
「・・・離せよ。悪かったって言ってるんだ。離せ」
俯いて静かにそう言う俺を、まるで叱られた子供のような目で見る。
卑怯だよ・・・ジェジュンは卑怯だ。
震える手がゆっくりと離されジェジュンを置いて歩き出した。
一度も振り返ることもなく。
叶わない恋なんていくらでもある。
傷付くことなんていくらでもある。
運命の人なんていくらでもいる。
でも…ジェジュンはたった一人だけなんだ・・・。
一人だけだったんだ。
to be continue...