ネット上に突然現れた新星「たぬきち」って?
 ここ最近、twitterのタイムラインで出版・広告関係をフォローしている人なら、すでに目にしたかもしれないブログ、それがたぬきちの「リストラなう」日記。これがなかなかの読み応え、コメントやtwitterのTL上での反応合わせて、非常に興味深い。簡単に内容を紹介するならば、K文社の現役(あくまで現時点)社員の方が、会社からの希望退職制度(リストラ)提案に応じるまで、さらには応じてからの心の揺れや考え、心境の変化を記したもので、かなりリアルな記述に、話題騒然となっているのである。

色々な要素があって、感じ方は人それぞれ
 ブログを一読した上で、大手出版社の給与に驚き、そこに嫉妬(むしろ怒り?)をぶつける人も居れば、出版不況を痛切に感じる人、電子書籍の大波を前に出版業界の体質が浮き彫りになった姿など、引っかかりドコロは人それぞれだろう。それほどまでに、色々な要素が見て取れ、興味深いのだ。大方の反響は、コメントやTBなどを見れば分かるので割愛するが、しかしながら私が気になったのは、ちょっと違うポイントだった。

出版社(編集)出身の人間は「ツブしがきかない」のか?
 氏のブログを時系列にちゃんと読んでみて欲しいのだが、再就職に関するそのくだりの中で、TBされた別ブログの記事が引用されている。これによると、編集者の市場価値というのは転職市場に於いて非常に低い、というのだ。(「編集者」であって「記者」ではない。じゃあ記者の市場価値は?という問題はさておき)これってどうなんだろう?たしかにPRの立場でメディアと接していても、能力は人それぞれ。たしかにぬるま湯(既得権益)どっぷりの人も居る。でも一方で、優秀な人も居る。

マネジメント、プロデューサーに必要なものこそ「編集力」
 常々「編集力」って普遍的な能力だと思っていたんですよね。新規ビジネスを創造するのにも、マネージャーとして全体を掴みビジネスを推進する能力としても。それが低く見積もられるのか、と。これってきっと、採用側の問題(適切に潜在力や応用力を算定出来ない)もあり、本人のプレゼン力(意外とプレゼンスキルがないのではと踏んでいる)の問題もあるのかなと。要するに「編集スキル」を否定するものではないはず、と思うのですよね。

私がその立場に立たされたとして、その私にどうアドバイスするか?
 「ネット業界逝け」って言いますね、私なら。何も今、流行りの「電子書籍」に未来があるとか、そこに職があるんじゃないか?って意図ではありません。電子書籍は所詮、ビジネススキームの問題ですから、人の問題はあまり関係ない。むしろ、私があやふやながら思うのは「ネット上には日々情報更新され、溢れるほどに情報過多なワケで(それが特徴だしね)、その情報を取捨選択したり、適切な形に加工したりすることが求められるワケで、それこそ編集の力が必要なんじゃないのか」というコトなのです。じゃあ、ネット系の会社に入ってそこで何するか?ってのは、自分で考えてよ、ってハナシなのですが。

ソーシャルメディアの破壊力
 いずれにせよ、たぬきち氏には敬意を表します。注目を日に日に集める中で情報を晒すのは、かなりの勇気が必要だったと思います。ただし、ご自身が一番それを実感しただろうと想像するのは、ソーシャルメディアの威力でしょう。「時代は、メディアは変わっているのだ」ということに気付けたのは、一歩踏み出す勇気だったということです。これって大きなアドバンテージですよね。Think Different. はみ出すことを恐れないように、自戒を込めて。