生きること、食べることは誰もがやっていると言っていい。でも、本を読む体験、読書ということが、現在では必ずしも生きることや食べることには結び付いていない状況なのかもしれない。

  私が主婦になった38年前、荒川区の図書館で料理の本やインテリア、風水、そうじ、アイロンかけ、そして編み物の本などを借りて、一から家事のことを学びました。

  21歳で長女を産んでからは、児童館や図書館に通うことがどれだけ、貧乏な暮らしを豊かにしてくれたことか、わからないほどです。生活の格差に関係なく、平等に知識を与えてくれる場所が、日本全国、ほぼ整っているというのは、本当に幸せなこと。

  先日は孫たちの運動会でした。長女が唐揚げ、おにぎり、卵焼きを持ってくるというので、ばあばは巻きずし、おいなりさん、筑前煮、浅漬けを持って行きました。朝、ぼんやりした意識の中でも自動操縦するようにお弁当を作れるのは、やはり、結婚当初お世話になった料理本のおかげだなぁと思いました。

  そして、いろいろな悩み事を請け負ってくれたのも本です。

  38歳、ちょうど20年前、社会復帰して7年目、私は行き詰まっていました。ろくに職歴もない三人の子持ち主婦を採用してくれたのはブラック企業や、保育園代にもならない低所得の仕事ばかり。

  そのときの悩みの深さを今も覚えています。涙が出そうになる程です。救ってくれた本との出会いも、思わず嗚咽が漏れてしまうほど、鮮明に覚えています。

  その出会いのおかげで、私は本読みになりました。38歳まで、絵本と家事本以外読んだことがなかったのに、今や、年間どれだけよむことやら。

  私にとって読書は生きること。より良く生きる活力の源は読書です。なんの本を読んでも、人生を生き抜く力になります。

 「一人で死ね」という言葉が一人歩きしている今日この頃、私は思います。
生きましょう。生きましょうよ。死なないでください。