「うそ?」
展望台に着いたエレベーターの扉が開くと私の目に映ったのはずっと会いたいと思っていた人だった。
慧くん、・・・。
手すりに肘を付き展望台のガラスの向こうを眺めてる慧くんの姿に向かってゆっくり歩き出す。
『しぃ、・・・。』
「・・・、慧くん、・・・。」
ガラスの向こうを眺めてる慧くんの声に私は返事をする。
すると振り返り私を見た慧くんが驚いた表情になる。
「・・・、慧くん、私、・・・。」
自分でもわかる。
今私の顔は真っ赤になってる。
恥ずかしさでいっぱいの私はゆっくり慧くんの元へ進んでいく。
そんな私へ駆け寄り、慧くんは私の腕を引き寄せた。
「慧くん、・・・。」
『しぃ。』
・・・、うっ、・・・。
慧くんの胸に抱かれた私はずっと我慢していたものが目から溢れ出てきた。
『どうして?どうしてここにいるの?』
「・・・・・・、」
『いつきたの?』
「・・・・・・、」
慧くんの言葉に答えたいけど、溢れ出す涙が止められなくて何も答えられない。
私がどうしてここにいるのか。
いつ来たのか。
慧くんの言葉に答えたくても今は無理。
それでもやっとこれだけ言う。
「ごめんなさい。」
『何を謝るんだよ?謝ることなんか全然ないのに。』
「ごめんなさい。」
『ふっ、・・・はは。何?しばらく見ないうちに何そんなにしおらしくなってんだよ?』
「・・・、グスッ、・・・、スッ、・・・、もぅ、・・・、」
『え?何?聞こえないけど?』
「・・・、スッ、・・・。」
『あのものの言い方はどうした?俺に食ってかかるあのしぃはどこに行った?』
慧くんの柔らかい声が私を包む。
『ほら、顔あげて。ちゃんと顔見せてよ。』
慧くんの柔らかい声に私はそっと顔をあげる。
え?
顔をあげた私の涙目に映ったのは同じように泣いてる慧くんだった。
『・・・、しぃ。』
「慧くん?」
『この前仕事でしぃが東京に来たときも言ったけど俺、待ってたんだ。卒業したあの日からずっとここでしぃを待ってたんだよ。』
泣きながらそう話す慧くんはやっぱりあの頃の慧くんのまま。
ナヨっとした見た目と、柔らかい声。
白くて長いきれいな指、とろんとした瞳。
運動神経ゼロなところも変わってない。
変わらない。
学生時代と同じ慧くんの姿に涙が止まらない。
慧くんの腕の中にどれくらいいただろう?
私を抱きしめていた慧くんの腕がゆるむ。
『ここで、・・・、この東京タワーでしぃに話したかったこと全部話すよ。そしてしぃに言ってなかった言葉を今日ちゃんと伝える。』
そう言って慧くんは泣き顔のまま笑った。
そして高校を卒業したあと、自分の周囲の人たちがアイドルって特殊な仕事に本格的に向かってく中、どうして大学に進学したのか話し始めた。