アルバム「SMiLE」が崩壊して発売中止となり、
精神病も悪化したブライアン・ウィルソンは、
ますます引き籠り、音楽活動もせず
ベッドと冷蔵庫を往復するだけの日々。
ビーチボーイズ・メンバーは、
なんとかブライアンに活動を再開してほしく、
ブライアンの自宅にスタジオを作って、
そこでレコーディングを始めましたが、
ときおり彼はスタジオに現れて、
ちょこちょこっと作曲したり、
機材をいじったりするだけで、
すぐに部屋へ引き上げていきます。
しかたないのでメンバーたちは、
自分たちで曲作りを始めましたが、
それまでずっとブライアン一人に任せっきりだったので、
なかなかうまくいきません。
「SMiLE」以後の4枚のアルバムもまとまりに欠け、
退屈なものとなり、
セールスもどんどん落ちていきます。
ところが、1970年代に入ると、
メンバーたちが突然、
才能を発揮しだすから面白いのです。
良い曲を次々と生み出し始めます。
それは本当に、
メンバーの個性がよく表れたものばかりで、
それぞれのメンバーが、
ビーチボーイズというグループのなかで、
どういう役割を果たしていたのか、
そういうことが実によくわかって、
とても興味深いのですよね。
面白いですよ。
それで、一人ひとり紹介しようと思います。
まず今回は、
「ビーチボーイズの顔」とも言える、
マイク・ラブですね。
この人はとにかくポップな感覚に溢れた人で、
ややもすると軽くて能天気になりがちでありますが、
ノスタルジックでもあり、
古き良きアメリカン・ポップス的な曲を書きます。
この人の書く曲歌う曲は、
いかにもビーチボーイズ的であり、
シングルカットされるものも多く、
それなりにヒットする曲も多いですね。
先日発売された、
1970年代初頭の未発表曲などを集めた「Feel Flows」
というアルバムに入っている「Big Sur」。
1973年のアルバム「Holland」収録のものとは、
別バージョンですが、
これ、素晴らしいですね!
1970年の名盤「Suflower」に合っていると思いますが、
なぜこれを当時ボツにしたのか、
まったく分かりません。
1966年の Good Vibrations 以後、
ずっと地下へ潜り込んでしまったようなビーチボーイズが、
1970年代半ばに突然ヒットシーンに返り咲きます。
チャック・ベリーのカバー「Rock and Roll Music」が大ヒットして、
ブライアンも復帰、
1976年に結成15周年記念で作られたアルバム「15 Big Ones」
その中からの第2弾シングル曲「It's OK」は、
29位まで上がるヒットとなります。
1978年頃に作って、
お蔵入りとなっていた「Brian's Back」
1998年に出た、
未発表曲集「Endless Harmony」に収録。
♪ブライアンが帰ってきた…
Fun Fun Fun や Good Vibrations を、
ブライアンと一緒に作った想い出を歌った曲。
マイク・ラブってけっこうセンチメンタルなんですよね。
次の曲も、それを表しています。
1979年のアルバム「L.A.」
A面ラストの「Sumahama」
すべての日本のビーチボーイズファンが、
この曲をこき下ろしていますが、
日本人として聴くからダメなのであって、
アメリカ人になった気で聴けば悪くないし、
私は大好きです。
「スマハマ」とは、
砂浜の間違いだ、
いや、神戸の須磨浜のことだ、
という議論が日本で巻き起こり(?)、
確か「探偵ナイトスクープ」で、
マイク・ラブに会いに行って確かめたところ、
やはり「須磨浜」であったという…。
となるとこれは、
「源氏物語」を歌ったものであろう…。
マイクって、本当に意外と、
センチメンタルでロマンチストなんですよね。
1980年のアルバム
「Keepin' the Summer Alive」
♪サンサンサマー…
と聞こえるので、
「サンサン・サマー」という邦題で、
日本でのみシングルカットされ、
まったく売れませんでした。
でも、往年のビーチボーイズっぽいバンド・サウンドで、
悪くない。
70年代半ばにヒットしたものの、
その後はまた鳴かず飛ばずで、
80年代に入ると音沙汰もなくなったビーチボーイズ。
1983年にメンバーのデニス・ウィルソンが急死します。
これを機に活動を再開し、
1984年にLAオリンピック前夜祭に出演、
1985年には、ライブエイドに出演し、
復活のアルバム「Beach Boys」を発売します。
シングルカットされたこの曲「Getcha Back」が大ヒット。
この頃はもう私もリアルタイム・ファンでしたから、
嬉しかったですよー。
そして1988年にこの曲「Kokomo」が、
22年ぶりの全米1位となります。
Getcha Back も Kokomo も、
80年代を代表する名曲となりました。
しかし、
Gecha Back のMVにも、
1986年の、
Rock' n' Roll to the Rescue
California Dreamin'
2曲のシングルのMVにも、
ブライアン・ウィルソンがちゃんと参加しているのに、
この Kokomo には、
ブライアンの姿が無い…、
どうしたんだろう、と、
心配していました。
1992年のアルバム
「Summer in Paradise」
私は当時住んでいたドイツで購入し、
ビーチボーイズの新譜だ!と、
ワクワクしながら聴いていましたが、
ワクワク感はすぐに消え去りました。
ナニコレ?
最悪のアルバムです。
やはりセールス的にも、
ビーチボーイズ史上最悪で、
無かったことにしているアルバムですが、
このタイトル曲だけは、
まあまあ良い。
そして、このライブ・バージョンは、
素晴らしい…。
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