先日twitterで、ヤフーの組織再編の否認について、会計処理の観点から、本件が全てソフトバンクの連結グループ内で生じた事象であることが意外と論じられていない、という興味深い指摘を拝見しました。
もちろん、ヤフーはソフトバンクが約40%出資する子会社(実質基準により連結)なわけです。
ということで、早速、本件否認に係る各当事者の会計処理を見てみました。
拠り所は有報とプレスリリースと地裁判決ですが、けっこう詳細の確認できない部分も多く、推測を含みますのでご了承ください。
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では、否認当事者のヤフーから行きましょう。(こちらは連結/単体纏めていきます。)
11/3期のPL上、更正による追徴税額として開示されている金額は、連結274億円、単体265億円です。
これは、2010年6月のヤフーの繰欠引継に係る更正が単体分265億円で、連結で加算されている9億円はIDCFの分と思れます。(IDCFの更正は2011年3月で、第3四半期決算までは連結ベースでも265億円でした)
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まず、この追徴額のカラクリを分析します。
ソフトバンクの更正に係るプレスリリースによれば、265億円は国税/地方税の本税/延滞税等を含む数字で、実際には事業税部分が損金算入される効果17億円を控除した248億円がnetのインパクト(=ソフトバンクが株式譲渡対価の調整として負担する金額)とのことです。
ヤフーの引き継いだ繰越欠損金は543億円でしたので、これに法人税30%、住民税6.2%、事業税7.6%を乗じた本税で238億円、過少申告加算税が法人税の10%で16億円、延滞税/延滞金が法人税・住民税・事業税の本税の4.3%で10億円、合計で264億円になります。ちょうどそんな感じですね。
一方、この内、事業税の本税の損金算入効果は543億円×税率7.6%×実効税率40.7%=17億円なので、これを差し引いた247億円がPLインパクト、となります。
次にIDCFの更正です。
否認された資産調整勘定は100億円です。
ソフトバンクの負担額は、上記同様に法人税・住民税・事業税の本税及び過少申告加算税(IDCFの場合は15%)と延滞税を計算すると、合計で46億円です。
有報によればソフトバンクがヤフーに返還する総額は293億円で、その内ヤフー分247億円を差し引いても46億円になりますので、この計算でちょうど合ってそうです。
但し、2011年3月の更正時点では、資産調整勘定の内、23億円しか償却されておらず、また、償却後のIDCFは欠損だったこともあり、更正による所得の発生額は17億円、これに本税・附帯税等を乗じると9億円分が実際の追徴額になります。
ということで、追徴額ベースではヤフー265億円とIDCF9億円で合計274億円。ヤフーの連結決算の数値(PL上の法人税等の追徴額)と整合しましたね。
一方で、事業税の損金算入効果を考慮した実際のnet PLインパクトとしては、ヤフー分で247億円、IDC分で8億円の合計255億円と思われます。
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これを踏まえて、ヤフーの会計処理を見てみましょう。
まず、09/3期のIDCS/IDCF買収時です。
有報を見るに、この買収によるのれんの発生額は41億円です。また、買収時の時価純資産に含まれる税資産の内、繰越欠損金見合いが221億円、資産調整勘定見合いが41億円(但し、税効果の注記では46億円?)含まれていたものと思います。
買収価額は450億円(IDCFの115億円はIDCSとの入り繰りなので省略)でしたので、仕訳のイメージはこんな感じです。
(借)
諸資産148億円
税資産(繰欠見合い)221億円
税資産(資産調整勘定)41億円
のれん41億円
(貸)
現金450億円
この内、繰欠に係る税資産は全額09/3期に消化されて消滅(PL上は法人税等調整額にチャージ)、また資産調整勘定に係る税資産の一部は2011/3末までの償却で減少します。
2011/3末時点で残っている資産調整勘定見合いの税資産は24億円です(税効果の注記より推測)。
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そして11/3期に更正を受け、ソフトバンクから対価の返還を受けます。
返還の総額は293億円ですが、この内、11/3末時点の入金額は257億円、未収入金として計上されているのが長短合わせて36億円です。この36億円は、資産調整勘定の償却に応じて(=否認される都度)支払っていくイメージのようです。
そして、この返還に伴う会計処理について、ヤフーはこのように開示しています。
『子会社株式の取得価額の修正を行ったことに伴って負ののれんが発生していますが、当該負ののれんは今回の更正に伴いIDCの吸収合併時に計上した繰延税金資産の資産価値が否認されたことによって発生しているという実態を勘案し、当該実態をより適切に表すため、損益計算書上、「法人税等調整額」として計上しております。』
これはなかなか面白いです。
この対価の調整を買収時点の処理に反映させると、負ののれんが発生するものの、その意味合いは繰延税金資産の減少=時価純資産の減少なので、負ののれんより、法人税等調整額とすることが適切という判断ですね。
一方、のれんについては、ヤフーのBS上、10/3末の49億円から11/3末の13億円に不自然な減少を見せています(しかものれんの償却費はマイナス39百万円のみ)。おそらくIDCの正ののれんは、今回の否認に伴って取り崩したものと思われます。当初認識額が41億円でしたので、未償却残高で30億円程度でしょうか。
それから、これは完全に推測ですが、ソフトバンクから受領する293億円の内、資産調整勘定の償却否認より今後発生する追徴税額見合いの36億円(附帯税含む)は、今後の更正によって発生する負担を補填するものなので、PL計上せず、何らかの負債として計上しているのではないかと思います。(資産調整勘定見合いの税資産も取り崩されていませんし)
以上からすると、会計処理はこんなイメージでしょうか。
-更正による法人税負担
(借)
法人税等(追徴)274億円
(貸)
法人税等19億円
現金255億円
-ソフトバンクからの返還
(借)
現金257億円
未収入金36億円
(貸)
その他負債36億円
のれん30億円
法人税等調整額227億円
とすると、結局、ヤフーの連結上、法人税の更正に係るPLインパクトとしては、(正の)のれんの取り崩しに相当する30億円分が残っている感じでしょうかね。
合ってるかどうか、けっこうアヤシイですが。。
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次にソフトバンクです。
単体は極めてシンプルです。
11/3期は関係会社株式売却価格調整損という特別損失で293億円を計上しています。この金額の内訳は上述の通りです。
また税効果の注記では、この価格調整見合いの税資産が119億円計上さています。税率40.7%で割り返すとちょうど293億円になります。(この対価の返還は、税務上は株式売却益の減額ですが、実際に敗訴が確定するまでは一時差異扱い(有税)という整理なのでしょう。)
なので、税資産に対する評価性引当を無視すると、税前▲293億円、税後174億円のPLインパクトです。
仕訳はこんな感じですね。
(借)
特別損失293億円
繰延税金資産119億円
(貸)
現金257億円
未払金36億円
法人税等調整額119億円
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最後にソフトバンクの連結です。
ソフトバンクとヤフーは連結決算上は親子ですので、内部取引は消去されます。
まず未収入金/未払金は当然相殺消去されます。
またソフトバンク単体の特別損失293億円も消去され、その見合いでヤフーが計上したその他負債24億円、のれん30億円、法人税等調整額239億円も消去されるものと思います。(のれんの取り崩しについては、元々のIDCSの売却時点ののれんそのものが内部取引で消去されているはずです)
なので、ソフトバンク連結上残っているのはこの更正の仕訳だけと思われます。
(借)
法人税等(追徴)274億円
(貸)
法人税等17億円
現金257億円
連結PL上もヤフーの追徴税額274億円が残っていますね。
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尚、気になるのはソフトバンク単体で計上した価格調整見合いの税資産119億円の取扱いです。
これが連結上どうなっているのかは連結税効果の注記を見ても確認できません。
2013/3期の税効果の注記では、金額100億円のものが重要性が増したということで個別表示されているにも拘わらず、この価格調整の件は個別表示されていません(税率変更後でも金額は104億円なのですが)。
また、更正時点のプレスリリースでは、ソフトバンクの連結純利益への影響が247億円(ヤフー分のみ)と開示されていたことからすると、この税資産は計上されないことを前提としているようにも思います。
会計整理は難しいですが、ソフトバンクにとっては株式売却益の減額で、ヤフーにとっては株式取得価額の減額ですが、ヤフーはすでにIDCSと合併済みで、これは100%親子間の適格合併なので、株式取得価額が減額になっても、税務上は合併後ヤフーの資本金等の額が増加するだけで、課税インパクトも将来加算の一時差異も発生しないはずです。
とすれば、ソフトバンクでの税資産は連結上も残してもいい気もするんですけど、正直ここがどうなってるかはわかりません。
引き続き注目してみたいですね。
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ということで、今回は以上です。
とりあえず生煮えながら書きましたので、追加で何かわかれば追記します。
しかし、やっぱり仕訳とかも表にしないとわかりにくいっすねぇ。。