ヤフーの組織再編に係る税務否認 ~ 東京地裁判決を読む(補足) | Accounting, Tax and M&A

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会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


昨日のエントリーでちょっと書ききれなかった重要な部分を追記します。

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ヤフーは、組織再編の包括否認規定の発動の要件である「不当性」について、『私的経済取引として異常又は変則的で,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合に限られる』と主張しています。

この根拠の1つとして、同族会社の行為計算否認(法132条)と規定振りや文言が同じで、別異に解すべき理由がないことを挙げています。

これに対する裁判所の見解です。

『「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,(ⅰ)法132条と同様に,取引が経済的取引として不合理・不自然である場合(※一部省略)のほか,(ⅱ)組織再編成に係る行為の一部が,組織再編成に係る個別規定の要件を形式的には充足し,当該行為を含む一連の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を有するものの,当該効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものも含むと解することが相当である』

『法132条は,同族会社においては,所有と経営が分離している会社の場合とは異なり,少数の株主のお手盛りによる税負担を減少させるような行為や計算を行うことが可能であり,また実際にもその例が多いことから,税負担の公平を維持するため,同族会社の経済的合理性を欠いた行為又は計算について「不当に減少させる結果となると認められるもの」があるときは,これを否認することができるものであるとしたものであり,法132条の2とはその基本的な趣旨・目的を異にする』

要するに、同族会社と組織再編では、同じ「不当」という文言であっても、趣旨や目的が異なる、ということですね。

まあ、ここは妥当な判断でしょうけど、けっこう影響は大きいように思います。

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ちなみに、話が逸れますが。

グループ内適格合併でみなし共同事業要件を満たせない場合でも、時価純資産が簿価純資産を上回る部分については繰越欠損金の引継ぎを認めるという特例規定があります。

これは、合併せずに単独で存続した場合でも、時価純資産>簿価純資産の部分は、例えば含み益資産を売却することで、自分自身で利益を獲得して繰越欠損金を消化することができたはず、という趣旨です。

ヤフーはこれを狙うという選択肢もある気がしました。

おそらく、当初申告要件の緩和は適用されませんので形式的にはアウトなんでしょうけど、包括否認という事情もあり、議論の余地はあるんじゃないのかな、と。

時価純資産超過額として申告していれば引き継げた欠損金については、法人税が不当に減少したとはいえないのでは?みたいな。

ま、難しいんでしょうかね。

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ということで、補足でした。