へたれの怖怖日記 -31ページ目

へたれの怖怖日記

怖いのほんと苦手なのに、怖い話が大好きという
矛盾に苦しむへたれ男児のつらつら日記です。

藤原君の性格の悪さは救いようがないと思う

夏の今日この頃。藤原君が泊まりにくることになった。

藤原君の可哀相な部屋にはもちろんクーラーなど無く、

扇風機すらもない。毎日、氷にスリ胡麻をかけたものを

食べて暑さと空腹をしのいでると言う。雛〇沢大災害並に

悲惨だと思う。

 

同情した俺はうっかり奴を招待することにしてしまった。

後悔先に立たず。親父はもともと仕事でいないし、

母さんは気を利かせて友達と出掛け、家には俺と兄と

藤原君という激しく微妙なメンツが残された。藤原君は

こんなときだけ猫を被り(キツネみたいな顔してるくせに)

兄に好印象を与えていた。

 

そろそろくたばればいいと思うのだが中々そうはいかない。

俺達はレトルトのカレーを食べ、しばらくは談笑したりゲームを

したりして平和に遊んでいた。が、だんだんネタも尽き、

微妙にしらけた空気が漂っていた。そのとき、CKYな兄が唐突に

「なあ、○○小行かね?」

とキチガイなことを言い出した。

 

その小学校は俺と兄が卒業した学校で、生徒数の減少により

他校と統合し、俺の卒業した年には廃校となった学校だ。

そこには今どき珍しい七不思議が存在し、怪奇現象も目撃され、

宿直の先生が途中で逃げ出したこともある学校だった。

つまり兄は肝試しに行こうと言ってるわけだ。本当に空気が

読めない兄。もちろん俺は行きたくないことこの上ない。

しかし藤原君はノリノリで

「さすがお兄さん、話がわかりますね」

 

などとニタニタしながらお世辞を言っていた。今更だがキモい。

結局流された俺は○○小学校に行くことになった。

学校についた俺達は門によじ登り、堂々と不法侵入した。
セコムとか入ってないのだろうか。不用心だな。などと

つぶやきながら校舎に入ろうとした。

 

が、さすがに鍵や鎖がしてあって中には入れなかった。

「ちぇ、つまんね」

「そういえば、ここの七不思議って何ですか?」

藤原君が兄に聞いた。

「うん?俺も詳しくは覚えてないんだけどな。確か、理科室の蝶の標本がどうとか、何とか」

役に立たない情報を垂れ流す兄。

仕方ないので俺が説明した。

 

「二宮金次郎像と記念撮影すると、体の一部が消えた写真になる。
理科室の蝶の標本には、人間の皮膚で作られた蝶もどきがある。
階段脇の掃除用具入れに入ったら出てこれなくなる。
あとは覚えてないけど、この3つは有名だね」

「へえ、ナオお前どうでもいいことだけは覚えてんだな」

どうでもいいことすら覚えてない兄が言う。
気にしないことにして俺は続けた。

 

「でもさ、学校入れないから、理科室と掃除用具入れは

確かめようがないし、記念撮影しようにもカメラないじゃん」

だから帰ろう、と俺は言った。
しかし、予想外のことが起きた。

「サクランボ、僕の趣味を忘れたのか?」

 

非常に失礼な呼び方をして、藤原君はケツポケットから

インスタントキャメラを取り出した。残念ながら写真が趣味だなんて

知らないし知りたくもない。

「すっげえ藤原!準備いいなー」

「準備よくないとサクランボの相方はつとまらないんで」

誰がいつ相方になったのだろうか。
取りあえず俺たちは金次郎像と記念撮影をした。

「64ひく61はー?」

「サーン」

 

意味もなくナベアツふうに写真を撮り、良かった良かったと

俺たちは学校を出た。結局その夜は、何もなかった。

しかし、恐怖はその後に待っていた。

数日後、藤原君が俺に電話を掛けてきた。

あまり出たくなかったが仕方なく出ると、ものすごく愉快そうな声で

『今から行く』と言われた。そんなこと言われても、と言う間も無く、

電話は切れ。数十分後、インターホンが鳴った。

「こないだの写真ができたんだけどね」

 

藤原君は嬉しそうに封筒から写真を取り出した。

「なに?やっぱり体でも消えてた?」

軽口を叩きながら俺は藤原君から写真を受け取った。
そこには俺と藤原君と兄がちゃんと写っていた。

「消えてないじゃん。やっぱり嘘なん」

そこまで言って、俺は言葉を切った。気付いてしまった。

二宮金次郎像の前、ナベアツポーズの俺と微妙なピースサインをする

藤原君とその後ろにいる、黒いパーカを着た男。

フードをすっぽり被って、金次郎像の後ろにいた。

そして、その手に握られたハサミ。

「な、にこれ」

 

あのときこんな男はいなかった。いや、気付かなかっただけで

いたのかもしれないけど、もしあのとき気付いていたら俺たちは。

「ふ、藤原く」

「キモチワルイよね。意味がわからない」

藤原君が珍しく神妙な面持ちで言った。


やはりいくら藤原君でも、変質者は怖いんだなと思ったが、それは違った。

「なんで僕が写ってんだろ」

言われて気付いた。

そう、あのときシャッターを押したのは間違なく藤原君だ。3人で行って

二人が写って、ひとりがシャッターを押した。なら、なんで三人とも写ってんの?

『四人目』の誰かがいたのか。藤原君に見えるこの微妙なピースサインの

人間は、違う誰かなのか。答えは今もわからないが、俺は二度と藤原君と

写真は撮らないと決めた。