当時私がまだ十代だった時の事です。
私と友人マサキ、それと二つ上の先輩山口と工藤の
四人で深夜、地元で有名な心霊スポットに行くことになりました。
男四人で心霊スポット巡りと、なんともむさ苦しい感じですが、
マサキは心霊的なものが特に苦手らしく、先輩達はマサキを
からかうつもりで、今から行こうぜと提案しました。
その場所は山奥にある建物で、車で向かいました。
その建物の地下で、十人近い人間が火をつけて心中したとか、
建物の裏手の崖から落ち武者が昇ってくる、とかの噂がある所でした。
先輩達は「もちろん地下行くよな」などと、マサキを脅かすように
笑って言っていましたが、いざ現地につくと、「うお。マジで怖っ」といい、
車から外観を眺めているだけでした。
私が「降りひんのか?」と先輩に尋ねると、「じゃあお前降りろよ」と
言うので、車を降りようとしました。マサキは、現地についてずっと
私のTシャツの裾を握りしめていましたが、「降りるわ」と言い、
離してもらおうとすると、怯えた顔で、「やばい。ここはやばいて。
絶対やばい」と、私に訴えかけてきました。とりあえず先輩達が
急かすので、マサキの手を解かせて車を降りました。
そして、その建物の周りを歩いて、ぐるっと一周。
裏手の崖も覗いてみて、車の前に帰りました。
先輩達は興味深そうに「なんか出た?」と聞いてきましたが、
私は「いやなにも」と答えました。そして誰も一向に車から
出てこないので、前の座席の先輩達に、
「お前らが行こうって言うたんやろ。降りろって。
地下見るんやろ」と言いました。
先輩は「お前怖くないんか」と聞いてきたので、
「あんまり」と答えると、山口先輩が、
「じゃあ明日までここで泊まってみろ」と私に言いました。
私は「なんでこんなとこで寝にゃあかんのよ」と、
おそらく真っ当な意見を返しました。
すると山口先輩は、「怖くないんやろ?十万円やるって
言うたら泊まるか?」というので、
私は「前金で今払うんならやるわ」と答えました。
山口先輩は「ええで」と言い、財布の中から一万円札を
十枚出しました。
私が「なんでこんなに持ってんの?」と笑いながら
聞きましたが、そういえば山口先輩は、「パチンコやら
スロットやらで大勝ちした」みたいな事を、その日言っていました。
私は「後で返せゆうても返せへんで」と念を押して金を受け取り、
その提案に了承しました。先輩達は「アホやこいつ」と
笑っていましたが、私も「十万も出すほうもアホやろ」と返しました。
マサキは何も言わず、後部座席でうずくまっていました。
先輩達は私を置いて行く前に、「地下行って来い」と楽しそうに
言ってきました。十万円も貰った私は、さして気分も害せず
受け入れて、地下に向かいました。火事があったのは本当らしく、
まっ暗な中でもライトの光で、壁中焦げて真っ黒になっているのが
見えました。
地下はそんなに広くもなく、目に付く所と言えば、お風呂の浴槽の
ようなものだけでした。車の前に戻り、「壁が真っ黒だった。
火事でなんやらゆうてたやん」と報告すると、先輩達は「おー」と、
嬉しそうに聞いていました。
そして、「明日の朝九時に迎えに来る」と約束をして、私一人を
残して車で山を降りていきました。残された私は、「あいつホンマに
迎えくるんやろうな」と少し心配しながら、その廃墟の一番マシそうな
横になれる所をみつけて、埃を払い、座り込みました。
時刻は深夜一時くらいで、どうやって暇を潰そうかと、とりあえず
携帯をいじっていました。誰かに電話して時間を潰そうにも時間が
時間ですし、電波はギリギリアンテナが一本立つか立たないか
程度なので、あきらめました。しかし、こう山奥にもなると、怖いのは
幽霊より野犬とかじゃないのか、と考えました。
廃墟は地下以外は外に剥き出しですし、地下は汚れがひどい上に、
さすがに気味が悪い。これはうかつに寝ると危ないな、と考えていました。
あまりに暇なので、もし幽霊が出てきたら などと考えたりもしていました。
「まあびっくりはするかなあ……」などと思っていたら睡魔が押し寄せて、
私は簡単に眠りに落ちていました。
目を覚ますと、午前五時を過ぎたところでした。
夏場だったので結構明るくなっていたし、私は山を迷わない程度に
散歩することにしました。野うさぎがいて軽く感動したりして、
こういう自然もいいなあと思い、廃墟に帰り九時を待ちました。
九時になっても先輩は来ませんでした。
電波の良さそうな場所を探して電話をかけたのですが、マサキの家で
泊まった先輩二人は、『すまん寝てた』と寝起き声で言っていました。
大体予想通りだったので、私は「ええから、はよ来い」と強めに言って、
迎えを待ちました。
迎えが来たのは十一時半を過ぎたところで、先輩二人とマサキ、
あと山口先輩の彼女が車に乗っていました。先輩達は「なんかあったか?」と
しきりに聞いて来ましたが、私は「特に何も」とありのまま話しました。
つまらなさそうでしたが、「まあそんなもんだろう」という結論に落ち着き、
早速山を降りるため、私を乗せ車を発車させました。発車して間も無く、
私は自分の足元が、誰かに掴まれているのに気がつきました。
後部座席は端から私、マサキ、山口先輩の彼女となっており、二人とも
両手は見えていました。
私は総毛立ちましたが、ええ?このタイミング?とも考え、ちょっと
可笑しくなりました。私は、夏場なので膝までのパンツだったこともあり、
直に足を掴まれていました。掴まれているというより、その手は思い切り
爪を立てて食い込ませるように、痛みを与えてきました。
しかし、私が騒ぐことによって車中がパニックとなり、事故を起こすのが
狙いかな、とも考えました。私は、なんかありそうな聞いた事あるような
話しやな、と思いながら必死に平静を装いました。
また、一番見られてはいけない隣にいるマサキに気づかれないよう、
前のめりに座って影で隠していました。
山を降りる手前辺りで、その掴む手の感触がなくなり、ガソリンスタンドに
寄った後、山口先輩の彼女が「ミニストップでポテトが食べたい」と
言い出したので、寄る事にしました。
私は皆が車を降りた後、山口先輩だけこっそりと呼び、他の三人と
違う場所に移りました。山口先輩は「どないしたん?」と聞いてきて、
私は「危なかったでぇ~」と息をつきました。
よく分からないという表情の山口先輩に、正体不明の手の爪による
血のにじんだ足を見せ、「降りる時に足掴まれてた」と言うと、
山口先輩の顔は、まさに真っ青になっていました。
山口先輩は「マジか?自分でやったとかじゃないんか?」と
聞いてきましたが、私は綺麗に切った爪を見せ、「こんな爪でどうやって
こんな痕つけれんねん。まあどっちでもええけど焦ったわ~」と答えました。
「お前、なんで黙ってんのん。そん時言えよ!!」
「そんなもんお前、言うたらパニックになって事故るかもしれへんやないか」
「あ~……そうか」
「ナイス判断やろ」
「おお」
「マサキと彼女には言うなよ。トラウマなるで」
「分かってるけど俺にも言うなよ。怖いわ~……」
「いや、誰かに言いたいやんかやっぱり」
などと言うやりとりをした後、他の三人に黙ったまま買い物を済ませ、
マサキ宅に戻り、私はすぐ自宅に戻ることにして解散しました。
家に戻る事にした私は、ドアの鍵を開けて部屋に入りました。
当時私は、ワンルームマンションの部屋に住んでいたのですが
開けてすぐに、部屋に誰かがいるのが見えました。
坊主頭にかなりの猫背で、ジャージ姿の男でした。
私の部屋は四階だったこともあり、すぐに逃げられるのは
私を押しのけてドアから出るしかない、という考えもあり、
その場から動かず、「空き巣?」と声をかけました。
男は振り向きませんでした。
「じゃ幽霊?足あるけど」と声をかけても振り向きませんでした。
しばらく見ていましたが、彼はぴくりとも動きませんでした。
仕方なく私が、「どっちでもええけど、土足やめてや」と言いながら
近づくと、彼はベランダのほうに静かに歩いて、私と距離を取りました。
私は「なんだこいつ」と思いつつも、両手に刃物等は持ってなかったようなので、
「盗るもんなんかなんもないし、警察もよばへんから、とりあえず出て行ってよ」
と、ベッドに腰を下ろして男に言いました。
それからしばらく男をじっと見ていましたが、微動だにせず何も言いません。
「しゃあないから叩き出すよ」と声をかけても反応しませんでした。
しかし、ふと私が掛け時計に目を向けて彼に向き直ると、彼はこちらに
顔だけ向けて、私と初めて目を合わせました。
目は小さく斜視が入っている感じで、団子鼻、口は少しだけ開いている。
私はその顔つきに、何か普通の人とは違う違和感を覚えました。
彼は若干睨む様なそうでないような感じで、こちらをじいっと見て、
私も彼を真っ直ぐに目を逸らさず見ていました。
四階な上に鍵もかかっていたままだったので、この世のものではないという
考えもありました。
でも幽霊にしてははっきりしすぎているというか、生気がある感じがしたので、
私は八割『普通に家に入り込んだ人間』というふうに彼を捉えていました。
私は立ち上がって、彼を見た時の違和感をそのまま口に出して言いました。
「知的障害かなんかの子かな……?怒らんから、出て行こう。ほら」
そう言って彼の腕を掴むと、その感触は異様なでした。
どっしりと中身の詰まったダンボールのような感触で、気味が悪いものでした。
すると彼は少し振り払うように腕を動かし、私はその感触もあってか手を離すと、
とぼとぼと玄関の方へ歩いて行き、ドアを開けて出て行きました。
私もすこし待って、下のマンションの玄関あたりを観察しようと思いドアに向かうと、
部屋とドアの間にあるトイレのドアが、ドォン!!!と激しい音を立てました。
私は少し警戒しながらトイレのドアを開けましたが、誰もおらず、いつもと変わらぬ
光景でした。
すると次は、流しの上の観音開きの小さな戸棚から、ドォン!!と激しい音が
聞こえてきました。なんやねんと思いつつもその戸を開けてみると、そこには
三十代後半くらいの男性の顔があり、じっとこちらを見ていました。
私もその男も、じっと少し睨む様な感じで、お互いの目を見ていました。
そして私はなんとなく、「どうせなんか言うても黙ってんねやろ」と口を開き、
戸棚を閉じました。
その後、夕方まで特になにも起こらず、少し睡眠をとったりした後、
当時勤めていた職場であるお店に向かいました。そこでよく
「この店は出る」などとよく言っていた、自称『霊感がすごい』
大学生のアルバイトの女性珠美さんに、
昨晩泊まった心霊スポットについて尋ねました。
「珠美さん、あそこの心霊スポットって行った事あります?」
「あるよぉ。あるけどもう絶対行きたぁない!」
「やばいんですか?」
「やばいやばい、絶対やばい!あそこ行くん!?」
「行かないですけど、地下がやばいとかって聞いたんですけど」
「だって地下で死んでんやろ!?」
というふうなやり取りをした後、あそこはどういう場所か
知っているかと聞くと、更正施設のような所で、どうしようもない不良や、
知的障害の人等が収容されてたとかなんとかと、聞いた話で
確信はないが、というふうな感じで教えてもらいました。
これも有名な話らしかったです。
私は少しだけ自分の考えと繋がった気がして、坊主頭の
彼を思い出しました。仕事中、携帯電話は基本事務室に
置いていたのですが、アルバイトの従業員が「なんかずっと鳴ってますよ」と、
私に報告してきました。
私はなんだろうと思い、携帯の着信を確かめに事務室に向かうと、
確かに携帯は、まだ着信のバイブレーションで震えていました。
『あ、つながった』
それは山口先輩からの着信で、出てみると、『なんかマサキが
ずっとおかしいねん!!頼む、ちょっと来てくれ、頼む!!』と、
必死に懇願してきました。
その後ろから、叫び声がずうっと聞こえてきていました。
これはただ事ではないと思い、オーナーに電話をかけ許可を取り、
他の従業員に「少し頼みます」と事情を説明した後、マサキの家に
向かいました。マサキも一人暮らしで、先輩二人と山口先輩の
彼女の三人は、よくそこを溜まり場にしていました。
そしてその日も、四人でその部屋に居たようでした。
あまり離れていなかったこともあり、三十分弱でマサキ宅に着きました。
部屋に入ってみると、「あああああ!!」とひっきりなしに叫んでいる
マサキと、マサキを抱えた工藤先輩、泣きはらした顔の山口先輩の
彼女、飲ませようと思っているのか、水の入ったコップを握りしめた
山口先輩、知らないおばさん(後で聞くと大家さんでした)の五人が
そこにいました。
私は山口先輩に、「こいつ知らん所でクスリでもやってたんか」と、
攻めるような口調で尋ねました。
山口先輩は「そんな事するわけないやろ!とり憑かれたんちゃうんかこれ!?」と
半ばパニックになったような感じで、「なんとかなれへんのか!?」と
私に言いました。
そう言われてもどうしていいのか分からない私は、とりあえず
工藤先輩に代わってマサキの肩を掴み、「どないしたんや。落ち着け」と
声をかけました。しかし、マサキは私の声など聞こえていないようで、
叫び声を上げるだけでした。
以前、マサキの姉が狐にとり憑かれた、という話を聞いた事がありますが、
それもマサキが、心霊現象が苦手な要因になっている事もあるのだろうと、
「大丈夫や、こんなもん気の持ち様や。しっかりしろ」と、耳元で声をかけました。
しかし、マサキは叫び声を上げるだけでした。口の端が泡だって
きているほどでした。たまりかねた私は、「黙れ、落ち着け!!」と
大声を上げて怒鳴り、髪の毛を掴んで顎をしゃくりあげました。
すると、マサキは叫ぶのをやめたかと思うと、「ふぅぅううっ!!」と
甲高い声を上げたかと思うと、私の腕に顔をうずめるように
しがみついて来ました。
私はマサキに、「どうした、もう大丈夫なんか」と聞くと、マサキは
顔を埋めたまま首を横に振りました。
「とりあえず水飲もう」とマサキから離れようとすると、叫び声をあげ
私の名前を二度叫び、「離れんといてくれえ!!」と泣き声で言いました。
しかたなく私は、その状態で三十分くらいの間じっとしていました。
ある程度落ち着いたマサキが、子供のようにせがむのをなんとか
言い聞かせ、山口先輩の彼女に代わりに様子を見てもらい、
山口先輩、工藤先輩の二人と大家さんと部屋の外へ行き、
大家さんにひとしきりお詫びして、三人で話し合いました。
大家さんは、近所の苦情があったのと、隣に住んでいたため
来たようです。私は「やっぱり心霊スポット行ったせいかな」と、
工藤先輩にも足を掴まれた件を話し、部屋にいたジャージの男や、
戸棚の顔についても二人に話しました。
すると工藤先輩が、「お前が怒らせたからちゃうんか」などと
言う事を言い出しました。
「怒らせたって、泊まったから?」
「なんかしたんちゃうんか」
「寝ただけやがな」
「それで怒ってんのちゃうんか」
私は「幽霊を?」と少し笑いながら尋ねると、先輩は急に
「もういやや」と頭を抱え、タバコを吸いだしました。
私は少し呆れながら、山口先輩に「どうする?」と尋ねました。
「お祓いしてもらうしかないんちゃうんか」
「あんなもんアテになるんかいな」
「だってそれしかないやろうが」
「怒ってんねやったら、謝ったらええんちゃうん」
「誰によ」
「心霊スポット行って、幽霊に」
「おい、また行くんか!?」
「だって家かえって、ジャージとかがまた出てくるかどうか分からんし」
「絶対嫌や 行くんだったら一人で行けや」
「別に来いゆうてへんがな」
というやり取りをして、「またマサキが叫びだしたら電話して」と
山口先輩に頼み、私は自分の家に車を取りに戻り、廃墟へ
向かいました。夜中だった事もあり、自分で運転してみると、
廃墟へ向かう山道は中々際どいカーブなどがあって、
一層危険に感じました。
一度道を間違えましたが、なんとか昨日の廃墟に着いた私は、
そこでライト等を何も持ってきていないことに気付きました。
とりあえず外側から廃墟に向かって、「すいませんでしたー」と
少し大きめな声で一声かけました。が、何も反応はありませんでした。
「なんか反応してよ……」と独り言をつぶやいた反面、
「俺なにやってんねやろ」と、少し気恥ずかしい感じでもありました。
私は携帯電話の明かりをあてながら廃墟を歩き回り、
「一晩泊まったからって、そんな怒らいでもええやんかー」
「帰れーゆうてくれたら、歩いてでも帰ったのにー」
と、誰もいないのに、独りで言い聞かせるように話しました。
正直、ほとんど明かりもないのに行くのは嫌だったのですが、
「やっぱり地下なんかなあ……」と思った私は、地下に
向かうことにしました。地下に向かうと、前には感じなかった
人の気配を一気に感じました。
「おおっ、これは……おるなあ」と、気丈に振舞うためか
わざと口に出し、「いきなり後ろに立ってるとかは……やめてね」と言い、
地下の真ん中あたりまで歩きました。ほとんどなにも見えず
真っ暗でしたが、そこで立ち止まり、
「もう来えへんから。ごめんね」
と、誰かに言うように言い、少し待ちました。
しかし何も起きず、更に十分くらい待っていると、気配もなんとなく
無くなった感じがしました。なので、最後に「出てくるんはええけど、
俺のとこだけにしてね」と言い、地下をでました。
車に戻り、すこしだけ廃墟の外観を眺めた後、山を降りるため
車を走らせました。運転しているのに足を掴まれては適わないので、
できるだけスピードを落として走行していました。すると今度は、
後部座席から肩を掴まれました。最初は掴むだけで、どんどん
爪を立ててくるような感じでした。
私は「いったぁ……」と言いながらも、事故を起こさないよう、
できるだけ安全に、気にしないよう車を走らせました。
どんどん爪を食い込ませる力が強まり、痛みはどんどん
大きくなっていきました。そして、いつまでも爪を立ててくる
その手に腹が立ち、広めの道路の脇に車を止め、
「ちゃんと謝ったやんけ、調子のんなハゲェ!!」
と怒鳴り、後ろを振り向きました。
暗いながらも、もの凄く剣幕な顔をした女性が、私の肩に
手を伸ばしているのが見えました。心の中では、うわぁ……こっわぁ~~
……と思いながらも、その女性を真っ直ぐ見つめ、「なんやねん」と
機嫌が悪そうに言うと、爪を立てる力がかなり緩くなり、やがて
触れられている感触もなくなりました。
とりあえず私は、
「いや、ホントすみませんでした。もうあそこ行かないですから」と言い、
「じゃあ僕前向くんで、その間にどっか行ってね。お願い」といい、
前を向いて、車を走らせました。曲がり道が減ってかなり安全になってから、
後ろを振り返ると、その女性はいなくなっていて、ホッとしました。
二日後、また山口先輩から電話がかかってきて、マサキが叫びだしたと
言われ、マサキ宅へ向かいました。
私は横になり叫ぶマサキを見下ろしながら、「もうええってお前。落ち着け」と
声をかけても、一向に叫びやまないので、「お前ホンマ、静かにせえへんと
本気で殴るでー。はい 5、4、3……」とカウントすると、マサキは静かに
なりました。
「何やお前それ、くだらん演技すなよ」
と呆れたように言う私に、マサキは
「演技じゃない。急に意識が戻った」
と訴えかけてきましたが、私にはどちらでもよく、その後、マサキが
とり憑かれたかのように叫びだす事はなくなりました。
お話は以上です。
今でもたまにおかしなものが見えたりしますが、私は元気です。