【沙耶ちゃんシリーズ】11 謎解き | へたれの怖怖日記

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怖いのほんと苦手なのに、怖い話が大好きという
矛盾に苦しむへたれ男児のつらつら日記です。

それからさらに何時間経った頃だろう。
また台所から包丁でまな板を叩く音がした。何かを不器用に刻む音……
沙耶ちゃんだ。今度は間違いない。

俺はベッドの上に飛び起きたが……怖くて声をかけられなかった。


今度手にかけるのが沙耶ちゃんだったらと思うと、たとえ幻覚でも

それだけは嫌だ。ためらっていると、沙耶ちゃんが気づいて台所から

顔を覗かせた。

「起こしちゃいました?」
彼女の表情に異変がないところを見ると、惨劇の跡は視えないようだ。
……よかった。彼女が能力を失くしていてくれて。

 

バイトの前に時間があったから、わざわざ来てくれたのだと言う。
時計を見ると、午後4時に差しかかっていた。
……ほんとに、一日中寝てたんだな俺。

オムライスを作れるようになった沙耶ちゃんを心の底から誉めてやってww

一緒に食卓に着いた。不思議なもんだ。
こうやって沙耶ちゃんを間近に見ていると、不安やイライラといった負の

感情がなくなっていく。


逆か……ずっと沙耶ちゃんと一緒にいたおかげで、俺は自分が穏やかな

人間だと勘違いしてたんだ。さっきの由香さんの頚骨の感触を思い出して、

暗澹たる気分になる。俺の本性はたぶん、あっちのほうだ……
他愛のない話に夢中になっている沙耶ちゃんに相槌を打ちながら、

俺は彼女と別れることを考えていた。
自分をコントロールできない今は、彼女を俺から引き離したい。
俺にとっては必要な人だけどね。そう思うことはエゴだろ。

「沙耶ちゃん、少し距離を置こうか」


案外すんなり言葉にできた……本音はすっげえ悔しいんだけどねw
だってさあ、俺、こういう関係を何年も待ってたんだぜ。
沙耶ちゃんは困った顔をして、それから怒った顔をして、最後に泣きそうになった。
「なんでですか?」
あ、理由を考えるの忘れてたな……

機転を利かせる能力のなかった俺は、けっきょく沙耶ちゃんに正直に話した。
怖がらせるか軽蔑されるかだと思ったが、沙耶ちゃんは真剣な表情で

取り合ってくれた。


「まるで、人間のパズルを作ってるみたいですね」
そういう彼女に、「その言い方、軽すぎww」と訂正する。
俺にとっては、頭がおかしくなりそうなほどのショックなんだ。
沙耶ちゃんは申しわけなさそうに笑って、テレビの前に放置してあった

広告を拾い、裏にメモりはじめた。
『右腕』『上半身』『左腕』『左足』『右足』『下半身』『頭』。


「なあ……」
彼女が拾い集めた人体のパーツが断定的だったので、不思議に思って

聞いてみた。
「なんでその位置で切断なわけ?」
沙耶ちゃんは当たり前のように
「だって、バラバラにされた遺体だったら、普通はこういう切り方でしょう?」と答えた。

なんでそれに気づかなかったんだ。俺って際限のない馬鹿かもしれない。
パソコンを開いて、検索窓にカリノがいたトンネル名と、『バラバラ遺体』と打ち込む。
出た。一番目にヒットしたURLをクリックすると、2chのオカルトスレにつながった。
おいおいw全然信用できない情報じゃないか。

ページを繰って、やっと事件概要を探し当てる。
もう数十年前のことらしい。上半身と下半身も切断された白骨体。ビンゴって感じだ。
沙耶ちゃんに確認してみる。
「あのトンネル、カリノ以外にも霊が視えた?」
沙耶ちゃんはあいまいに頷きながら、
「数体が視えましたけど、どれも古くて消えかかってるって感じで……

どんな人なのかもわかりませんでした」
と返事をする。
なんだか妙だな。そんな弱い霊が、こんな激しい霊障を起こすもんなのか?
沙耶ちゃんが答えをくれた。


「ああ、それはまことさんのせいだと思います。カリノさんを浄化するときに、

的確なことをしてあげたでしょ。
それを見てた他の人が、自分もしてほしくなったんです。きっと」
……なんて他力本願なヤツなんだorz

「あと5つ残ってますけど……どうします?」と、沙耶ちゃんが残パーツ数を

数えながら言った。


「パスパスっ!あんな幻覚はもうゴメンだよ」
俺は激しく首を振った。
「それで済むでしょうか」
不吉なことを言う沙耶ちゃんの意見は、たぶん正しい。
俺が集め終わるまでは、この白骨体は俺から離れていかない気がする。
「……いっそ、気に入らないヤツを5人ピックアップして、八つ裂きにすると

いうのも手かな」
半分以上本気で言うと、沙耶ちゃんが引き攣りながら俺を見た。
「まことさんとケンカしたら殺されるかも」
俺は真面目に言った。
「そういうことを避けるために、今は俺のそばにはいないほうがいいよ」
沙耶ちゃんは軽く答えた。
「でもいます。別れるの、ヤダもん」
いい子だね、まったくw

たかが妄想だ。本当に人殺しするわけじゃない。気持ちさえしっかり持って

いれば問題ない。
 

俺は霊ってものを、まだまだ甘く見ていたんだ。