始まり始まり~!
別に携帯ゲーム機を盗もうと思っているわけではなかった。
ただ、ちょっとだけゲームで遊びたいだけ。
ちょっとだけ・・・・・・。
美緒は『始める』を選んで、決定ボタンを押した。
携帯ゲーム機の画面に、ウサギのキャラクターが現れた。
これが、美緒があやつることができるキャラクターのようだ。
美緒はそのキャラクターに『ミオ』というカタカナの名前をつけた。
ボタンを動かすと、ウサギのミオが画面を動き回る。
遊園地で聞こえてくるような音楽が、黒い携帯ゲーム機
から流れてきて、美緒は楽しくなってきた。
画面の中に表示された森の中をミオが歩き回っていると、
目立つ場所に真っ赤な木の実が落ちているのを見つけた。
その木の実にウサギのミオがふれると、画面にメッセージが表示
される。
『森を歩いてるミオ。すると、誰かのものと思われる木の実を発見した。
どうする?』
画面が切り替わって、選択肢が出てきた。
『自分のものにする』と『犬のおまわりさんに届ける』の二つの選択肢。
「うーん・・・・・・・これがイベントかな。どっちか選択すればいいんだよね」
美緒は『犬のおまわりさんに届ける』のほうを選んだ。
ウサギのミオが木の実を持って、勝手に歩き始める。
どうやら、犬のおまわりさんのいる交番に向かっているようだ。
「なんか、変なゲームだなあー。好きなところに移動できない時あるし・・・」
そうつぶやきながらゲームを続けていると、美緒の右足に何かがふれた。
「あれ・・・・・・サイフ?」
美緒はゲームを中断して、落ちていたサイフを拾い上げた。
こげ茶色のサイフはふくらんでいて、ずっしり重かった。
中を確認したら、お金とカードがいっぱい入っている。
さっきまで遊んでいたゲームと同じ展開に、美緒は思わず
口元がゆるんだ。
(このゲームと同じように、おまわりさんに届けないといけないよね。
お金入ってるし)
美緒は財布を握りしめて、交番に向かった。
交番に入ったとたん、美緒が手に持っていたサイフを見て、
スーツを着たおじさんが大声をあげた。
「ああー。ぼくのサイフだ。これです、おまわりさん。
ぼくが落としたサイフですよ。」
おじさんは興奮した、様子で、美緒の持っていたサイフを指さす。
どうやら、サイフの持ち主らしい。
きっと、サイフを落としたのに気づいて、相談に来ていたのだろう。
おまわりさんがにっこりと笑って、美緒の頭をなでた。
「届けてくれてありがとう。見つからないと思っていたよ」
「い、いえ。中にお金いっぱい入っていたから・・・・・・・・」
「そうなんだよー。給料入ったばっかりだったから」
おじさんが美緒からサイフを受け取りながら言った。
「本当にありがとう。君のおかげで助かったよ。」
おじさんは、サイフから一万円札を取り出して、美緒の手ににぎららせた。
「これはお礼の一割だよ。受け取っておくれ」
「えっ!一万円も?」
あわてる美緒に手を振りながら、おじさんは交番から出て行った。
「これ、もらってもいいのかな・・・・・・・」
「大丈夫だよ。拾った人にはお礼を受ける権利があるからね」
おまわりさんが言った。
「それより、気をつけて帰るんだよ。最近、この近くで不審者が出たらしい
から」
「不審者?」
「うん。コートを着たやせた男なんだけど・・・・・・」
おまわりさんは眉をひそめて、壁に貼られた不審者の情報
をちらりと見た。
そこには帽子を深くかぶった男の似顔絵が描かれたいた。
やせた頬にとがったアゴ、異常に大きな目が美緒をにらんでいる。
まだ、つづきあるからみてね!