赤い桜ンぼ

 十と七つ

がん 雁 ならんだ
とをと七つ

七つならんだ
十と七つ

十と七つで
飛んで渡る

雁 雁 この町
啼いて通つた

啼き啼きならんだ
十と七つ

今夜どこまで
飛んで渡る


 青い眼の人形

青い眼をした
お人形は
アメリカ生れの
セルロイド

日本の港へ
ついたとき
一杯涙を
うかべてた

「わたしは言葉が
わからない
迷ひ子になつたら
なんとせう」

やさしい日本の
嬢ちやんよ
仲よく遊んで
やつとくれ


 かなかな

遠いお山の
かなかな
ひとりぼつちで
なきました

母さん たづねに
出かけませう
父さん たづねに
出かけませう

遠いお山の
蜩は
ひとりぼつちで
なきました

日さへ暮るれば
かーな かな
眼さへさませば
かーな かな


 赤い桜ンぼ

赤い 赤い
桜ンぼよ
どこで生れたの

一軒家の
お背戸で
生れたの

ほんたうは
桜ンぼよ
どこで生れたの

ほんたうに
一軒家の
お背戸で 生れたの


 乙姫さん

竜宮の 竜宮の
乙姫さんは
トントンカラリン
トンカラリンと
はたを織りました

黄金こがねたすき
背中に結んで
トントンカラリン
トンカラリンと
機を織りました

浦島太郎も
トントンカラリン
黄金の襷で
トンカラリンと
機を織りました

千年織つても
トントンカラリン
万年織つても
トントンカラリンと
歌つて織りました


 西吹く風

山から
海から
秋が来た

河原のやなぎ
葉が
枯れた

渚の すすき
葉も
枯れた

山から
西吹く
風が吹く

海から
山吹く
風が吹く


 雀の子供

雀の 子供が
生れたよ

穀倉こくぐらの ひさし
生れたよ

昨日は 一羽
今日は 二羽

雀の 子供が
生れたよ

河原の お藪で
生れたよ

昨日は 一羽
今日は 二羽

河原で 生れた
藪雀

廂で 生れた
軒雀

チンチン 啼き啼き
生れたよ