📩◾️『勉強の哲学-----来たるべきバカのために』(千葉雅也/文藝春秋)


  *気鋭の学者による「勉強論」。と言っても、勉強を効率よくするためのノウハウ本では全くない。むしろその対極にあると言ってよい。例えば、


  《真に勉強を深めるために、変な言い方ですが、勉強のマイナス面を説明することになるでしょう。勉強を「深めて」いくと、ロクなことにならない面がある。そういうリスクもあるし、いまの生き方で十分楽しくやれているなら、それ以上「深くは勉強しない」のは、それでいいと思うのです。

  生きていて楽しいのが一番だからです。

  それに、そもそもの話として、全然勉強していない人なんていません。

  生きていくのに必要なスキルは、誰でも勉強します。読み書き、計算が基本ですね。稼ぐには仕事のスキルを覚えなきゃならない。人づきあいが分かってくるのだって勉強です。転職したら、また別のスキルを勉強することになる。人は、「深くは」勉強しなくても生きていけます。》(「はじめに」)


  **さあ、こんなふうに言われたら、この本を読みたくなる、勉強についてどんなことが言われているか気になってくる。うまい導入である。


  《「深く」勉強することは、流れのなかで立ち止まることであり、それは言ってみれば、「ノリが悪くなる」ことなのです。(----------)

  これから説明するのは、いままでに比べてノリが悪くなってしまう段階を通って、「新しいノリ」に変身するという、時間がかかる「深い」勉強の方法です。》


  ***勉強とは、自己破壊である。それは「自由になる」ためにするものである。これまでの「ノリ」から自由になるのである、という。

  

  だが、著者の経験を具体的に示しながらも、その方法論は極めて基本的なもので、王道はなしです。つまり、


  《「まとも」な本を読むことが、勉強の基本である。》


  ***そして、何が「まとも」かは、続けて説明されている。


  この本の中で、文学(小説、詩)に対する著者の強い思いが随所に感じられる。言葉の芸術の中で高い重要な位置を占めているのが感じられる。

  芥川賞の候補に何度も挙がっているのも頷ける。


  《最後に言いたいのは、勉強はいつでも始められるし、いつ中断してもいい、ということ。

  勉強は、変身です。

  だから、変身はいつでも始められる。そして、いつ中断してもいいのです。(---------)


  本書を、父に捧げます。健康を祈りつつ。》(「あとがき」)


  *10代の若者がこの本を読めば、きっと勇気づけられ、気になっていることについて、その関連本を手に取ることになるだろうと思います。


🌴▪️Thanks for reading.🦜