📩◾️『「相対性理論」を楽しむ本』(佐藤勝彦 監修/PHP文庫)
▪️統一場理論への挑戦
《アインシュタインは一般相対性理論の完成後、今度は「統一場理論」なるものの構築に取り組みました。これが彼のその後のライフワークとなったのです。
統一場理論は、重力と電磁力という2つの力を、統一的な方程式で説明しようとするものです。現在、自然界に働く力は、どんな力でも「電磁力」「重力」「強い力」「弱い力」という4つの力のどれかに分類することができます。 (中略)
アインシュタインは4つの力のうち、重力と電磁力を統一することに力を注ぎました。しかし、彼の頭脳をもってしても理論を完成することはできませんでした。現在までに、人類は電磁力と弱い力を統一することには成功しましたが、それに強い力を統一する「大統一理論」はまだ実験的に確かめられていません。さらに重力を加えた「超大統一理論」の完成は、アインシュタイン以来の物理学者の悲願ですが、完成はいつになるか、ひょっとすると100年先か、よく分からない状態です。》
▪️量子力学をめぐる論争
《同じ頃、アインシュタインを悩ませていたものは、量子力学への態度でした。
「光量子論」によってアインシュタイン自身もその基盤を築いた量子力学は、デンマークの物理学者ボーアを中心に、ドイツのハイゼンベルク、イギリスのディラック、スイスのパウリ、日本の仁科博士(ノーベル賞受賞の湯川博士、朝永博士などの先生にあたる)らの、まだ20〜30歳代の若く優秀な物理学者たちが、デンマークの首都コペンハーゲンに集まり、革新的な研究を次々と行っていました。
しかしアインシュタインは、量子力学の革新性の柱である「不確定性」という考え方が不満でした。
量子力学によると、電子や陽子などの小さな物質が、ある時間において、どの場所にいて、その時にどれだけの速度で動いているのかを、確定的には決められないとしました。位置が分かると、速度が分からず、逆に速度が分かると、位置が分からなくなるので、両方同時には決して確定できないというのです。これが「不確定性」というものです。
位置と速度を同時に確定できないために、量子力学は「この速度で、この場所にいる確率は何パーセントで、あちらにいる確率は何パーセント」という、確率的な表現で電子などの位置や速度を表現することにしたのですが、アインシュタインはこれに納得できませんでした。
「電子の位置や速度が、確率でしか表せないなんておかしい。私たちが探し出せるかどうかは別にして、ある条件下での電子の位置と速度を同時に特定できる法則や方程式は、必ず存在するはずだ。それを確率などという考え方でごまかすのは、間違っている。神様はサイコロを振って、電子の位置を決めたりはしないのだ」と主張し、ボーアら量子力学の推進者たちと対立しました。
(この項続く)
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