📩◾️『「量子論」を楽しむ本-----ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』(佐藤勝彦 監修/PHP文庫)


  さて、「量子」とは何でしょう?


  《プランク(Max Karl Ernst Ludwig Planck 1858—1947)は、光のエネルギーを「hν(hはプランク定数、ν(ニュー)は振動数)を単位とする固まりとして考える」という仮説を示しました。このひと固まりの単位量が、すなわち量子です。

  日本語では小さいもの、小さい粒子という意味で名前に「子」をつけることがよくあります。原子、電子、素粒子などはすべてミクロの粒子です。しかし量子の場合は「量子」という名前の特定の小粒子が存在するわけではありません。ひと固まりとして考えられる小さな単位量が「量子」なのです。たとえば光のエネルギーの場合は「hv」が量子になります。

  さて、プランクの*⬇️エネルギー量子仮説に基づくと、振動数がvである光のエネルギーはhv、2hv、3hv-------という整数倍の値に必ずなります。整数倍以外の中途半端なエネルギー、たとえば0.5hvや1.2hvというエネルギーを光は持てないのです。これは従来の物理学にはない革命的な考え方でした。なぜならそれまでの物理学ではすべての量(物理量)は連続的に変化するものであると考えていて、自然現象の中のある量が不連続な変化をする、つまり「とびとび」の値を取ることはありえないとされていたからです。


*⬆️エネルギー量子仮説:「ある振動数の光(電磁波)が持つエネルギーの値は、振動数にある定数(プランクはこれを作用量子と呼び、のちにプランク定数と名付けられた)を掛けたものを最小単位として、必ずその整数倍になっている」というもの。


  なぜ従来の物理学では、物理量を連続的に変化するものだと考えていたのでしょうか?それは量子、つまり単位量であるh νという値を眺めると分かります。単位量の定数であるプランク定数hが非常に小さい値であるために、物理量の不連続性に気がつかなかったのです。

  プランク定数hは、6.626×10のマイナス34乗[ジュール・秒]という値です。(中略)問題は「10のマイナス34乗」という桁の値で、これは1兆分の1の、その1兆分の1のさらに100億分の1という非常に小さな値です。一方、可視光の振動数は10の15乗(単位はヘルツ)程度の桁であり、こちらは大きな値ですが、この両者を掛け算して得られる光のエネルギー単位量hvは、10のマイナス20乗程度のごくわずかな値になります。

  つまり、光のエネルギーは不連続に変化するものの、その「とびとび」具合は10のマイナス20乗ほどの微々たるものであることが分かります。したがって、それまでのどんな偉大な科学者も、その「段差」に気がつかず、光のエネルギーは連続的に変化できるものだと信じていたのです。これはちょうど、段差が1mmずつになっている階段を作っても、私たちにはなめらかで段差などないスロープに思えることと同じです。

  しかし、たとえわずかな段差であろうとも、段差は段差です。段差1mmの階段は、私たちにとってはなめらかなスロープでも、小さなアリにとっては段差が断崖にさえ思えることでしょう。そして、ミクロの世界の物理現象を考えるときには、この段差すなわち物理量の不連続性が無視できないものとして影響を及ぼしてくることは、十分予想できます。その際には、すべての物理量を連続的なものとしてとらえてきた従来の物理学では手に負えない現象が、次々と現れてくるであろうことを暗示しているのです。》



  

  *私が初めて物理学らしきものに興味を持ったのは、中学3年の時だったと思う。町からの転校生であった「モリヤ君」と親しくなった。彼が「光を追いかけていれば、歳を取らないぞ」というようなことを言った。「何を言っているのか、わけが分からん」と答えた私に彼が紹介してくれたものが、たしか、ごく初歩的な、イラストが多く付いたアインシュタインの相対論に関する本だったと記憶している。その後、なぜか、物理学に興味を抱くこともなく過ぎた。

  十数年前になるだろうか、敬愛する友人と呑んでいたとき、「相対論と量子論」の話になり、再び興味が再燃し、集中して関連本(もちろん入門書ばかり)を読んだ。その中にこの本もあったと思うが、処分してしまって手元になく、改めて手に入れた。初めて読む感じで、ワクワクしながら読んでいる。記憶力の弱さも時には大いに役に立つ。何度読み直しても初めての感動が薄れない、という点で。

  


(この項、続く)🍀

▪️【Thanks for reading.】🌲🎻