※※ この本を読んで一言 ※※

登場人物、ストーリー、トリックの全てが高いレベルで、作中の登場人物たちの言葉や背景の描写を事件の解決に際して無駄にしていない、ミステリ小説の傑作だと思います。

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久しぶりに読むメフィスト賞受賞作品です。

表紙からして古代から中世の中国が舞台かなと想像しながら読み始めました。

 

舞台は春秋戦国が終わり、秦が中華統一を果たした3年後の現在の山東半島の南側の「琅邪」。

マンガ「キングダム」は読んでいても琅邪に関しては全く知りませんが、描写が簡潔でありながら説明がきちんとなされているので、町並みが頭の中で鮮やかに再現されます。

またキャラクターがとても生き生きとしており、主要人物は例外なく魅力的に描かれており、また悪役、チョイ役もとても個性的でいい味を出しています。

日本人好みになるように、マンガ的にキャラ付けされていると言えばそれまでなんですけどね(笑)。

 

そして終盤の戦闘シーンは短いながらも、それぞれのキャラクターが熱い戦いを繰り広げていてとても面白いです。

とくに狂生と桃のコンビは読んでいてすがすがしい気持ちになります。

 

何よりこの作品において一番すごいと思ったことは、事件の解決です。

序盤から様々な事件が起こり、それがなぜ起きたのか、どうやってその状態になったのか、私にはどの事件も見当がつきませんでした。

 

しかし名探偵役の無心の登場でひとつひとつの事件が全てつながり、一気に解決に導かれる様は圧巻でした。

序盤で希仁が”解決の糸口が見つかって、それを引っ張ればするすると事件が解決する”的な事を言っていましたが、まさに無心がそれをやってのけたのです。

 

本格ミステリ小説らしいセリフや描写を無駄にしない作品だったと思います。

全体的にマンガ的、もしくはラノベ的にも感じますが、それでもミステリ作品としてこれほど面白いとは・・さすがメフィスト賞受賞作です。

 

ちなみに表紙の絵はとてもラノベ的で内容とも不思議とマッチしています。

しかし表紙だけ見ると、読書のライト層からも本格ミステリ読みからも敬遠されそうで心配になります。

 

なお改めて表紙を見ると、描かれているキャラクターは時計回りで希仁、残虎先生、根姉さん、桃、徐福大人の順でしょうか・・もしそうだとすると作中の希仁とのギャップがヤバいです(笑)。

 

この続編の「琅邪の虎」や「咸陽の闇」「邯鄲の誓 始皇帝と戦った者たち」があるとのことで、これは全部読んでみようと思います。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆☆☆

登場人物 ☆☆☆☆☆

ミステリ ☆☆☆☆☆

世界観  ☆☆☆☆☆